タルク釉
 石灰釉は、還元焼成で焼くと少し青味を帯びる。洋食器を焼く場合、この青色が好ましくないために、青味のない純白の釉薬を求めて、タルク釉が発明された。また、電気特性もいいので、碍子用釉としても用いられる。高温で焼成するために、磁器以外ではあまり使用されない釉である。タルクの分相効果のために乳濁釉やマット釉としても使用出来る。焼成はSK10~11、RFである。
 
タルクマット釉
 タルクの分相効果を利用したマット釉である。この釉も高火度で使用される釉薬である。焼成はsk10~11、通常はRFである。ただし、タルクの一部をリチウム、亜鉛等に置き換えればSK9当たりで使用できる釉薬になる。
 
チタン結晶釉
アベンチュリン釉のこと。金結晶釉とも言う。(アベンチュリン釉参照

チタン乳濁釉
 チタンの分相効果を利用した乳濁釉で、比較的新しい釉薬である。骨灰乳濁釉、亜鉛乳濁釉と同様にアルミナ分と珪酸分の少ない領域で乳濁する。大変濃い乳濁釉を作るが、少量の鉄分により鮮やかな青色が現れる事があるので、なまこ釉にとして民窯でよく使用されている。しかし、逆に乳濁釉としては使用が制限されることになる。
 この釉は藁灰系統の乳濁釉に比べて、光沢があり、均一な釉調になるが、逆に平淡でもある。また、この釉は、純白の白にするのは難しく、柔らかいアイボリー系統から青みを帯びた色合になる。
 釉成分のアルミナを増加させると、乳濁度が弱くなり、さらに青みを増してコバルトで着色したような乳濁釉になることがある。酸化チタンの添加量は3%~7%である。焼成はSK9、OFが基本である。RFでは黄色みがかった色あいになる。
 
チタンマット釉
 チタンの分相効果を利用して、更に酸化錫を加えることにより、マット釉を作る事ができる。この釉は乳濁しさらにマット調になったもので、チタン乳濁釉と同じく、柔らかいアイボリー系統のマット釉に仕上がる。また、素地土に鉄分が含まれている場合は、青色になる場合もある。焼成はSK9、OFが基本である。
 
長石釉(ちょうせきゆう)
 長石を主成分とした釉薬で、長石単味のものから、長石に媒熔材を混ぜるものまである。志野釉は、典型的な長石釉である。釉の色は長石の泡のために白く、素地が粗い場合や厚掛けすると「かいらぎ」条になり、気泡が出来やすい。しかし、高温で完全に長石を融かした場合は透明釉になる。長石自体は、ソーダ長石の方が溶けやすいが、長石によってもかなり雰囲気が違うので、各種の長石を混ぜる場合もある。長石単味の釉薬としては、平津長石、インド長石等がある。その他の長石では、あまり単味では用いない。溶けやすくするために、木灰、石灰、藁灰、カオリン等を混ぜて使用する。(志野釉参照

艶消し釉(つやけしゆう)
マット釉のこと。(マット釉参照
 
低火度釉(ていかどゆう)
 通常の釉薬は、ほとんどが中火度釉、高火度釉に属する。中火度釉とは、亜鉛釉、バリウム釉などのSK6aあたりで熔融する釉薬を言い、高火度釉とはSK7~10程度で熔融する通常の釉薬を言う。
 これに対し、低火度釉とは600℃付近から1000℃あたりまでで熔融する釉薬であり、鉛を使用するか、硼酸を使用するか、アルカリ物質を使用するしかない。日本の楽焼用釉薬、上絵付用の釉薬、中国の三彩釉などがこれに当たる。
 有害物質である鉛を使用する場合は、多量に使用するのは危険であるために、水に溶けにくい唐の土(鉛白)、二珪酸鉛を使用する場合が望ましい。
 通常楽焼用の釉薬は、唐の土を基礎釉として、これに白玉、日岡珪石を合わせて艶、焼成温度を調整して使用する。上絵付用の釉薬もほぼ同じである。
 
鉄赤釉(てつあかゆう)
 通常、酸化鉄は高温になると褐色ないし黒色になるので、赤色釉としては不向きであるい。しかし、石灰とマグネシアの多い長石釉に燐酸と酸化鉄を大量に入れると、化合して美しい朱赤色釉になる。
 この釉は新しい釉薬で、名古屋工業試験所で1965年に作られたが、現在では四日市、信楽、瀬戸、笠間等において多く使われている釉薬になった。しかし、骨灰と鉄を大量に使うので、一般的な釉薬調合には入らない。焼成は、OFだが、RFも可能である。RFの場合は斑紋が大きくなる。温度はSK8~9である。釉薬は厚掛けにする必要があり、薄いと茶色になる。かなり広範囲で有効で、比較的安定して発色する釉薬である。ただし、厚掛けで高温にすると流れやすくなるので温度には注意が必要である。
 
鉄釉(てつゆう)
 鉄による色釉を全て鉄釉と呼ぶのであれば、その種類は大変多い。鉄分の少ない順に、黄瀬戸釉、飴釉、古瀬戸釉、鉄赤釉、黒天目釉、瀬戸黒釉、蕎麦釉、柿釉等があり、乳濁釉として伊羅保釉、鉄砂釉、海鼠釉等がある。また、青磁釉も鉄を使用した釉なので、広い意味での鉄釉に属する。要するに、伝統的な釉薬に関していえば、銅を主体とした織部釉、辰砂釉等と白釉を除けば、ほとんどの釉薬が鉄釉に属することになる。
 この釉は、釉薬の中で最も古い釉薬である。鉄分は、素地土、釉薬の中に入り込もうとする性質があるので、普通に使用すれば大抵のものは鉄釉の系統になることになる。また、透明釉をかけても、素地に鉄分が多く含まれる場合には、焼成中に釉の中に鉄分が入り込んで鉄釉になる場合もある。
 釉中の鉄分が同じでも、アルミナの多い釉と珪酸の多い釉とでは全く異なる色合になる。アルミナ分も珪酸分も少ない釉では飴釉となり、アルミナ分が多いとアルミナマット釉の性質から黒マット釉となる。また、アルミナ分も珪酸分も多い領域で天目釉が出来る。 また、石灰と長石との比率でも全く違った釉となる。一般的に石灰分が多いと飴釉となり、長石分が多いと天目釉となる。石灰分が多いと、釉は流れやすくなる。
 
鉄砂釉(てっさゆう、てっしゃゆう)
 石灰釉(磁器釉)に多量の紅柄(20%前後)を添加すると小豆色の細かい結晶をぎっしり敷き詰めたような、点々と小さな結晶面による金属光沢の現れる釉ができる。これが鉄砂釉と呼ばれ、還元焼成の磁器用色釉として古くから使われている。黒色の鉄砂釉もできる。焼成はSK9~10でRFで釉はやや厚掛けにする。類似の釉薬で酸化焼成で得られる釉薬もある。
 
天目釉(てんもくゆう)
 中国の、宋代建窯等で作られた鉄質黒釉で、この茶碗の多くは天目山の仏寺の常什であったものを我が国の僧侶が持ち帰ったと同時に、喫茶法をも天目山の霊場から得て来たために、この碗を天目と呼ぶ様になって、後に釉薬自体を天目釉と呼ぶ様になった。なお、天目と呼ぶのは我が国だけである。一言で天目釉といっても、建盞天目、曜変天目、油滴天目、玳玻盞天目、禾目天目等多種多様の種類がある。
 山陰地方の来待石、京都の加茂川石、瀬戸の鬼板、関東地方の芦沼石や益子赤粉等である。益子赤粉は単独で使うと柿釉になる。
 現在の黒色顔料を使った黒釉と違い、縁先が飴色又は柿色になるし、釉の薄いところも同様に変化が出来る。また、温度によって、釉中の鉄分が結晶として熔けだし、油滴、玳玻盞、禾目などの天目釉に変化する。天然の含鉄土石には鉄の他にマンガン、チタン等を含んでいるため、紅柄単味で使うよりも複雑な色合になる。焼成は、SK8~9でOFで釉をやや厚がけにすると通常の天目釉となり、釉薬を薄く掛けてRF焼成すると褐色釉となる。天目釉には褐黒色と紺黒色とがあるが、使用する釉にマグネシア分が多いと紺黒になる。
 通常の石灰釉に鉄分を入れただけでは飴釉にしかならないが、これにマグネシアと長石、カオリンを入れていくと黒釉に変化する。なお、天目釉にアルミナ分を入れると柿釉になり、柿釉に珪酸分を入れると鉄砂釉になる。(油滴天目釉禾目天目釉参照)
 
透明釉(とうめいゆう)
 一般には光沢のよい無色透明な釉のことであり、色釉を作る基礎となる釉薬なので基礎釉と言ったりもする。また、透明な色釉と区分して透明白釉、または単に白釉と言う場合もある。歴史的には、青磁釉、黄瀬戸釉などの鉄分を含んだ釉薬が最初に出来て、その後鉄分を取り除いた透明釉に発展していく。
 日本では、灰釉のいわゆる「並白(なみじろ)」が現れ、「卸深井(おふけ)」という言葉も発達段階における無色透明釉を指したと思われる。次に、粟田焼、仁清の陶器、鉄絵や染付釉の磁器釉に発達し、また上絵磁器用白釉になり、今日では色釉と作る場合でも、無色透明な釉を基礎釉として、これに酸化金属を加える方法がとられるようになった。
 日本の透明釉の特徴としては、マグネシア分による乳濁作用がある。これは、土灰を使用することによって、必然的にマグネシア分が混入されることと、日本人の好みとして光った釉薬よりも半ツヤの釉薬を好む傾向があるためである。

銅青磁釉(どうせいじゆう)
 銅を使った青磁色の釉薬である。通常は、銅は緑色に発色するが、乳濁釉の場合には青色になる場合が多いことを利用した釉薬である。似たような色あいで水色釉も出来る。
 焼成はSK9、OFである。
 
土灰釉(どばいゆう)
 日本で、通常に使われる高火度釉である。長石と土灰(以前はかまどで燃やした灰を使っていたが、かまどの衰退で、現在では雑木の木灰を使っている)を混ぜ合わせた単純な釉薬で、長石釉が長石が多いのに対して、土灰釉は長石分が少ない。最近は、天然土灰がなかなか採れなくなって高価なので、人工土灰を使った土灰釉もある。この場合、人工土灰を使ったものを土灰釉、天然土灰を使ったものを木灰釉として分けて売っている場合もある。人工土灰釉が白っぽいのに対し、天然土灰釉は黒っぽい色をしている。石灰釉を石だてというのに対して、灰だてと呼ぶ場合もある。
 土灰の中には大量の石灰分と若干のマグネシア分、微量の燐酸分と鉄分が含まれている。だから、土灰釉の分類としては石灰マグネシア釉に分類される。その上で燐酸分が入っているために、少し乳濁する。また、鉄分が入っているために酸化で焼くと黄色っぽくなり、還元で焼くと緑っぽくなるのが特徴である。石灰釉と違い、透明にはならないし、光沢も押さえ気味になる。
 天然土灰釉は、石灰釉と違い、沈澱しにくい特徴がある。しかし、各地の土灰の成分はすべて違っているし、天然の素材であるので安定した釉にはならない。よって、複雑な釉色を出したり、安定した釉として使用するには不向きである。しかし、安定しないところが趣として出て来るので、陶芸作家などは自分で灰を作って使用する場合もある。また、各種の木灰によって色合とか雰囲気も違ってくるので、各種名前の付いた木灰がある。(椿灰釉、柞灰釉、栗皮灰釉等)
 
トルコ青釉
 エジプトやトルコの陶器に使用されている、アルカリ釉に銅を入れて青く発色させたものである。アルカリは水に熔け易いために、通常はフリット釉にして1000℃前後で焼くが、焼成温度が低いために、釉自体が弱く、貫入が入りやすいので、一般的な食器としては不向きである。
 これとは別に、リチウム、炭酸バリウムを使用することにより、フリットなしの高火度釉として使用できる。この釉は、焼成温度が高いために、貫入等の問題はない。ただし、高火度釉であるために、ツヤがあり、釉が硬いので、本来のトルコ青釉とは趣が違う。
 素地土は、焼き締らない白土が良い。白化粧をした土で焼けば、発色が鮮やかになる。これは、白化粧土のアルミナ分が釉薬と反応しやすいためである。焼成はSK8、OFである。
 
ドロマイト釉
 美濃焼業界では、石灰釉ではなく、ドロマイトを用いる釉薬を洋食器に用いている。ドロマイトの一部をタルクに置き換えることもある。白色度が高くなる分、透明度は石灰釉に劣る。また、ほとんどのスピネル顔料にも問題なく反応してくれる。焼成は、SK10、RFである。