カオリンマット釉
アルミナマット釉のこと。(アルミナマット釉参照)
柿釉(かきゆう)
柿天目とも言い、中国では北宋時代に磁州窯系の窯で焼かれていたものであり、柿の色をしているところから名付けられたものである。朝鮮の開城の古墳から見つかったことで有名になった。この釉は、焼成中に釉薬の中で鉄分が飽和状態になって、冷却の時にこれが吹き出て結晶質になったものである。
黒天目釉とか来待釉、益子赤釉をRFで焼成すれば柿釉になる場合もあるが、現在ではチタンを少量加えてRFで焼成する。焼成とか冷却の具合で結晶の大きさが変わり、鉄砂釉になる場合もある。
焼成は、SK8、RFが基本であるが、OFでも柿釉になる場合もある。釉は、やや厚がけにするが、厚くかけても流れることは少ない。しかし、厚すぎると釉がめくれたり縮れたりすることがある。この場合は、来待石や赤粉を素焼きしたものを釉に混ぜ合わせるとよい。素地土は、粘土質のものが安定しているので良いが、別にこだわらない。ただし、素地土によって釉薬の色合も変わってくるので素地土の選択も吟味が必要である。特に赤土を使用する場合は、注意が必要である。
唐津釉(からつゆう)
約1700年前に唐津の地で陶器を作り神功皇后に献上したのが唐津焼きの起りとされている。唐津焼は、佐賀県西部から長崎県一帯兎にかけて焼かれたもので、桃山前期の天正年間(1573~92)には焼かれていたことが分かっているが、本格的に発展したのは、豊臣秀吉による朝鮮出兵に際して李朝の陶工が連れて来られてからのことである。桃山時代の作品に優品が多いとされている。唐津焼きには、彫唐津、奥高麗、瀬戸唐津、朝鮮唐津、絵唐津、三島唐津、斑唐津、黒唐津、青唐津、黄唐津、蛇蝎唐津など多彩であるが、通常の唐津釉は、絵唐津等に使われる釉薬を指する。
透明釉と乳濁釉の中間的な釉薬で、基本的には、白萩釉、藁灰釉と同系統の藁灰を使った乳濁釉であるが、あまり乳濁しないのが特徴である。
焼成は、SK7~8通常の釉薬よりも若干低めで使用する。OFでもRFでもどちらでも可能であるが、絵唐津の場合はOFで焼成される。これは、鉄絵がOFだと黒の発色だが、RFだと茶色発色するためである。
貫入釉(かんにゅうゆう)
欧米では、貫入を釉の欠点として、なるべく出さない様に工夫している。逆に中国では、貫入のことを開片と称し、昔から鑑賞上重要な位置を占め、その形状等から、魚紋子紋、牛毛紋、柳葉紋、蟹爪紋、梅花片紋、氷裂紋、断線紋等の呼び名がついている。日本でも釉のヒビを装飾とみなし、薩摩焼、粟田焼、萩焼、卸深井釉などの、日本独特の貫入釉がある。しかし分類としては、中国ほど細かくなくて、亀甲貫入釉、氷裂貫入釉くらいの別け方しかしていない。(亀甲貫入釉、氷裂貫入釉参照)
また、日本では貫入を目立たせるために、窯出し直後に墨汁、紅柄汁中に浸すか、擦り込む等の手段を用いる場合がある。この方法は、窯出し直後の貫入の隙間が大きく空いている時しか出来なくて、窯出し後時間が経過すると貫入の隙間が閉塞されて、一度入った色は落ちなくなるし、後から追加で入れることも出来なくなる。
貫入の名前の語源は、中国宋官窯の器には裂分があり、ここから官窯のことを「くわんによう」と呼んだものが転じて貫入になったという説が有力である。貫入には、貫乳、款入、罅入の字も当てられる。
貫入を出す方法としては、焼き締らない土に伸縮の大きい釉薬をやや厚掛けに掛けると簡単に出すことができる。通常の釉薬でも石灰分が多いと出やすくなるし、亜鉛、バリウム、ストロンチウム等の媒熔材が入った釉薬でも出やすくなる。
いずれにしても、陶器質の焼き締らない土の上に石灰系の釉薬をかけた場合は、大小の差はあるが貫入がかならず入るものである。
黄伊羅保釉(きいらぼゆう)
黄伊羅保釉は、伊羅保釉が特に黄色に発色したものをいう。黄色の発色も伊羅保釉同様に鉄によるものだが、通常の伊羅保釉の半分くらいの鉄分で黄伊羅保釉になる。素地土に鉄分が含まれている場合は、釉の鉄分を少なくする必要がある。
素地土は、伊羅保釉同様に粒子が粗く、焼き締りの少ないものが良い。焼成は、OF、RFどちらでも良いが、RFの方が発色に変化が出るが、表面がざらつく場合がある。OFだとぼやけた感じに仕上がるが、色の変化は少なくてすむ。また、OFの場合は肌が比較的滑らかになる。RFの場合はSK8だがOFの場合はSK9くらいの方が良い。(伊羅保釉参照)
黄瀬戸釉(きぜとゆう)
黄瀬戸釉という名前がいつ頃付けられたのかは不明だが、瀬戸窯で釉が出来た頃から造られていて、桃山時代に完成された。その頃は、鉄分の多い土灰と比較的鉄分の多い長石とで作られていた様である。一説には、青磁を焼きたかったのだが、そのころの窯では還元焼成が出来なかったのと、灰類を多く使い、長石分が少なかったので青磁にはならずに黄瀬戸になったと言われている。また、この頃は還元焼成が上手く出来なかったために黄瀬戸釉になったとも言われている。
黄瀬戸には、ぐいのみ手、あやめ手、菊皿手の三種類がある。ぐいのみ手は比較的釉に光沢があり、いわゆるビードロ肌である。あやめ手は、ツヤが少なく、表面がざらついており、いわゆるあぶらげ肌である。菊皿手は、すこぶる光沢が強く、貫入は微細で黄色が鮮明である。
黄瀬戸釉は、桃山時代になって釘先で引っ掻いたような刻文の部分に胆礬(天然の硫酸第二銅)と呼ばれる銅釉がぼかされて配置しているものが出て来る。最初は銅は貴重品だったため、斑点に過ぎなかったが、銅の産出の増加に伴い、多く使用する様になった。
黄瀬戸釉は、通常の長石分の少ない灰釉に鉄分を2~4%入れてSK8~9で酸化焼成すればできる。素地は、鉄分の少ない粘土質陶器素地を用いて始めて得られる。通常は土灰を混ぜて作るが、石灰でも同様にできる。灰類が多く、長石分が少ないのが特徴である。なお、マット状のあぶらげ手は、藁灰、酸化チタン、骨灰またはジルコン等を入れて、乳濁させることにより出来る。しかし、少し温度が上がると透明釉になり、非常に温度範囲の狭い釉である。
施釉は、薄めにすると艶消の状態になりやすく、また施釉の釉だれの濃い部分に光沢が出て、趣のある釉調になる。しかし、薄すぎると茶色く焦げてしまう。安定した艶消を出すには、最初伊羅保釉を薄がけして、更に黄瀬戸釉を薄がけする2重がけにする方法もある。
焼成は、上昇をゆっくりと行い、冷却は早くした方が良い。
亀甲貫入釉(きっこうかんにゅうゆう)
亀甲貫入釉は貫入釉の一種で、粘土質の熱膨張の小さい素地土を使い、石灰石、あるいはストロンチウムを若干加えた、いわゆる長石釉をうんと厚めに施釉すれば出来やすい。また、単純にガラス粉を入れて長石を溶かす方法もある。この場合のガラスとは、普通の窓ガラスとかビンの類を砕いて使う。しかしクリスタルガラスは鉛が入っているので使えない。この釉は、素地土の性質で貫入の入り方が変わって来る。(貫入釉、氷裂貫入釉参照)
焼成はSK9程度である。OFでもRFでも出来るが、色の出方が違ってくる。ガラスの多い釉では、鉄分の影響でRFで緑色、OFでは黄色になる。釉薬は、特に厚掛けにする必要があり、厚く掛けた方が亀甲の効果が大きくなる。しかし、流れやすい釉薬なので、施釉、焼成には注意が必要である。また、温を上げすぎるとガラスが泡を吹く場合もある。
揮発釉(きはつゆう)
素地の表面と科学反応してガラスになる物質を直接窯の中に入れて蒸着させた釉薬である。食塩釉は、この代表的なものである。他には、ソーダ灰とかを投入することもある。ただし、この方法は有毒ガスが発生するので、使用には細心の注意が必要である。(食塩釉参照)
来待釉(きまちゆう)
含鉄金属である来待石をそのまま釉薬にしたもので、陶器瓦とか瓶等の釉に用いる。民窯の釉薬に使用されている釉である。色は褐色から黒色である。(柿釉参照)
金色ラスター釉
この釉は、高火度ラスター釉の一種で、光沢のある金色に輝く釉である。なかなか安定して出にくいために、あまり一般的ではない釉である。焼成はSK8~9、OFであある。素地土は、磁器質のものが良好である。(ラスター釉参照)
鈞窯釉(きんようゆう)
元々は中国宋代の窯の一つで、北宋代の鈞州窯が転じて鈞窯となった。これは、青磁石という陶石に似た石を粉砕したものと羊歯(シダ)灰、釉灰という石灰を混ぜて、更に藁灰を加えて焼いたものである。このために藁灰に含まれる珪酸質により乳濁した青磁になったものである。通常の乳濁した青磁釉を、月白釉と呼び澱青釉と呼ぶこともある。紫の紅班が全面に出た物を紅紫釉(こうしゆう)、部分的に現れたものを月白紅班と呼んでいる。また、藁灰の結晶が表面に白く流れた様子がウサギの毛筋に似ていることから、兎の斑(うのふ)と呼ばれることもある。南宋から元になると作風が荒れて来て、この時代の物を元均窯として区別している。今では、紅紫釉のみを均窯釉と呼ぶようである。(卯の斑釉、月白釉参照)
釉の作り方としては、1重がけと2重がけとがあるが、2重がけの方が効果が大きい。2重がけの場合は、下釉は銅を入れずに上釉だけに銅を入れる場合と、下釉に銅を入れて上釉は乳濁釉にする場合とがある。上釉に銅を入れる場合は、下釉は割りと厚くかけて、上釉は厚くかけない。理想的な溶けかたとしては、下釉が先に熔けて、上釉がその上から熔け込んだ状態がよい。
素地土は、鉄分の多い粗い土を使用する方が面白い。焼き締る白土の場合は、釉が平坦になってしまう。素地に鉄分が少ない場合は、釉薬に鉄分を1%程度入れる。釉薬はかなり厚がけにしなければ効果が出ない。ただし、釉の流下には注意が必要である。焼成はRFだが、酸化第一銅の融点が1064℃なので、余裕をみて950℃付近から還元にする必要がある。還元後は、ゆっくりと温度上昇した方が銅のコロイド化がムラなく行われるので良い。また、還元状態は弱めの方が発色が良くなる。なお、焼成後は徐冷の方が赤の発色が良くなる。SKは8~10である。
バリウム、錫は、銅に対する着色補助剤として入れる。
錫、チタン、骨灰、藁灰は乳濁剤として入れる。どちらにしても酸化錫は絶対に必要な添加物である。
亜鉛は、赤色を濁った色にする。
青色を出す為に、0.2~0.4%の支那呉州を入れることもある。
クロム緑釉
酸化クロムを使えば、非常に安定した緑色の釉薬が出来る。ただし、酸化クロムを単独で使った緑釉は失透釉で均一な釉調になり、織部釉みたいにツヤのある濃淡の出た釉にはならない。また、亜鉛華とマグネシアが含まれた釉ではレモン黄の色合になる。透明釉に酸化クロムを微量入れてOFで焼けば、クロム青磁釉になる。
焼成は、OFでも良好であるが、RFにした方が発色が濃くなり、色も鮮やかになる。
黒マット釉
通常黒釉として使われる酸化鉄を主体とした天目釉では艶消釉になりにくいために、黒色顔料を使った黒釉が作られるようになった。また、鉄、マンガン、コバルトなどを混ぜ合わせると黒色釉になることを利用して黒色マット釉が作られる。しかし、これらの釉は平淡であり、深みのない釉になる。逆に、変化を求めないタイル等には釉色が安定して得られるので、多く使われている。
焼成は、SK7~8、OFでもRFでも良いが、顔料を使う場合には、RFだと黒く発色しない顔料もあるので、注意が必要である。大抵の場合は大正黒か黒呉須を用いる。これらについてはRFでも黒く発色することが出来る。
黒釉
一般に鉄分だけを使った釉薬では、釉の厚さ、焼成条件等により安定した黒色は出にくいが、コバルト、マンガン、クロム等の黒色顔料の配合により、比較的安定した黒釉を作ることが出来る。
しかも、この釉は焼成温度に幅があり、安定した色あいになる。また、これらの割合を変えることにより、茶色がかった黒釉から、青みがかった黒釉まで変化にとんだ色合が出来る。鉄分が多いと茶色がかり、コバルトが多くなると青みがかった黒になる。また、透明、艶消など釉調を自由に変えることも出来る。ただし、釉色に変化が出にくい分平たんな色あいになり、窯変等の変化も出ない。
焼成は、SK7~9、OFでもRFでも良い。ただし、RFの場合は結晶が出来る場合もあるので、注意が必要である。素地土も自由であり、ほとんどの土が使用できる。
結晶釉(けっしょうゆう)
マット釉のなかで、比較的結晶が大きく成長して、その結晶物質の特殊な呈色と、結晶の独特の発育の仕方や形態がある美的効果をもつものを結晶釉と呼んでいる。昔から知られているものに、亜鉛結晶釉、蕎麦釉、朱金地、チタン結晶釉、マンガン結晶釉等があり、金属光沢の顕著な結晶の一面に現れるアベンチュリン釉や鉄砂釉も結晶釉の部類に入る。最近ではジオプサイド結晶釉、骨灰鉄結晶釉とかも分かってきている。(亜鉛結晶釉、砂金石釉、蕎麦釉、マンガン結晶釉参照)
月白釉(げっぱくゆう)
月白釉は、宋代の鈞窯において造られた釉薬の1種で、澱青釉ともいい、一種の青磁釉である。通常の鈞窯釉が赤色から紫色をしているのに対して、きわめて淡い青色をしているのが特徴である。しかし汝窯青磁ほど青くはならない。海鼠釉と非常に似ており、海鼠釉と一緒にすることもある。いずれにしても、藁灰による乳濁釉の一種であり、青色は釉の中の鉄分を還元焼成するために起こるものである。釉中に赤い斑紋があるものを月白紅班という。この紅班は銅分の作用である。月白釉は本来鉄分を還元して青色にしただけだが、バリウム、ネオジムの作用で青さが増す。また、錫、骨灰、亜鉛は乳濁作用のために入れる。
焼成は、RFでSK8~10の範囲である。素地土は、赤土の方が発色がよく、素地土の中の鉄分と釉薬が反応して、深みのある色合になり窯変も出やすい。白土だと、奇麗でおとなしい色合になる。釉薬は、厚掛けの方が効果が大きいし、青色も濃くなる。ただし、厚掛けにすると流れやすい。特に、口の部分は釉が流れ落ちてしまう場合もあるので、温度、時間には注意が必要である。(鈞窯釉参照)
古瀬戸釉(こせとゆう)
古瀬戸釉とは、初代藤四郎が始めて中国より伝えたとされる天目釉の一種で鉄質黒釉である。自然釉を除いては、最も古くからある釉のひとつである。本来は(ふるせと)と言うが近来は「こせと」の方が通用するようになった。しかし、「ふるせと」は茶入れの「小瀬戸」との区分で用いるという説もある。どちらにしても、古い瀬戸茶入れに多く用いられた釉で、流れ易いマット調の釉調から、ツヤのある釉調まで幅が広い。起源は黄瀬戸釉よりも古く、自然釉から灰釉に移行する過程のものと推測される。釉薬自体は、灰釉に含鉄土類のアルミナ分が入っただけの単純なアルミナマット釉の一種である。鉄分をとるのには通常は酸化鉄を使うが、黄土、赫土、鬼板等の含鉄岩石から取った方が鉄分が安定しないので、面白い発色になる。
焼成はSK9、RFである。素地土は、粘土質陶器素地が良く、釉薬は流れるように厚がけにする。ただし、流れやすいので注意が必要である。
骨灰鉄結晶釉(こっぱいてつけっしょうゆう)
最近分かってきた結晶釉のひとつで、骨灰と鉄分を大量に含んだ鉄赤釉に近いところで、出来る結晶釉である。黒茶色の地肌に赤い斑点の結晶が出来る。
骨灰乳濁釉(こっぱいにゅうだくゆう)
骨灰を使った分相による乳濁釉である。藁灰釉とかの乳濁釉は、木灰の中に含まれる燐酸カルシウムによって乳濁するので、これに頼らずに燐酸カルシウムを多く含んだ骨灰を用い、乳濁釉を作ることが出来る。
この釉は、アルミナ分が少なく珪酸分が多い組成で乳濁しやすく、亜鉛やマグネシアを含むと乳濁しやすくなる。反対にバリウムが入ると乳濁しなくなる。焼成はSK8~9、OFでもRFでもよい。

