砂金石釉(さきんせきゆう)
アベンチュリン釉とも言い、鉄釉の中にチタンが金色の結晶となり、キラキラと輝いている釉で、主にタイルに使用されている。紅柄の変りに黒浜を入れる場合もある。この釉は、結晶釉の一種であるから、徐冷により結晶が大きくなる。結晶の大きいものも面白い効果がある。
焼成は、OFでSK8程度であるが、結晶釉なので、一旦SK9~10まで温度を上げて核を減らして置いてから150度くらい温度を下げて長時間引っ張ると、結晶が大きくなる。素地土は粘土質の方が良い。
塩釉(しおゆう)
食塩釉のこと。(食塩釉参照)
志野釉(しのゆう)
志野釉は、織部、瀬戸黒と同様に桃山期に美濃地方で焼かれたものでり、その当時の織部釉の一種である。当初は白織部または志野織部と呼ばれていた。また、志野の釉薬は長石釉と呼ばれ、風化長石単味で使っていた。しかし、現在では志野釉に適した長石はほとんど取り尽くされてしまい、桃山期の長石に近づけるために、カオリン、木灰等を加える場合もある。これは、桃山期の長石には、カオリン質が含まれていたためである。
なお、志野釉は「もぐさ土」と呼ばれる独特の焼き締らない素地土で作るのが最良とされ、この土は1%程度の鉄分を含んでいるために、極端な徐冷によって緋色を出すことが出来る。現在では良質のもぐさ土はなくなってしまったので、代用として五斗蒔土を使う。
志野の絵付は、鬼板を使うが、これを薄く化粧掛けしておいて志野釉をかけ、緋色を出す場合もある。鬼板を使わずに、直接釉薬に紅柄0.3%と食塩2%を加え、紅志野釉にする場合もある。
焼成方法は、950度付近から還元にして、1200度までゆっくりと温度を上げて、1250度まであっさりと焼くと緋色が出やすい。いずれにしても、長石単味の場合は、なかなか釉が溶けてくれないので、ゆっくりと温度を上げる必要がある。また、極端な徐冷にする必要がある。壁厚の薄い窯では、火を焚きながら温度を下げる方法がとられる(長石釉参照)
条痕釉(じょうこんゆう)
焼成中に釉が流れて条がまだらになった色釉を条痕(じょうこん)釉という。古信楽のビードロ釉や民窯に多く使われる。媒熔剤として、炭酸バリウムを使うと、熔融温度を下げるので、流れ易くなる。ただし、この場合は艶釉にはならずに、艶消風の釉調になる。また、バリウムを使うと貫入が入りやすくなる。なお、呈色剤を混ぜることにより、いろいろな色釉が出来る。土灰を使用したもので、呈色剤を入れなければビードロ釉に近い色合になる。(ビードロ釉参照)
この釉は、非常に流れやすい釉薬で注意が必要である。上の方を厚がけにして、下にいくほど、薄がけにした方が効果が大きい。
焼成は、SK8~9、OFでもRFでも良いが、呈色材を使用する場合はOFでなければ色が変化してしまう。素地は、粘土質か半磁器質の粒子が細かくて表面が滑りやすいものの方が効果が大きい。しかし、粗い素地土でも厚掛けにすれば同じような効果になる。ただし、厚掛けにすれば流れやすいので注意が必要である。
食塩釉(しょくえんゆう)
塩釉とも言う。揮発釉の一種で、無釉で焼成して、途中1200℃を越えた時点で食塩を窯の中に数回に分けて投入し、塩の中のソーダ(ナトリウム)分と素地土の中の珪酸分とが化学反応でガラス質になるのを利用した方法である。
白マット釉
古来より伝わる伝統的な釉薬ではなくて、新しい釉薬のひとつである。乳濁釉とマット釉の合わさったような釉調の釉薬で、白く艶の少ない上品な釉薬である。普通に使用すれば平淡な色調になるが、薄がけによる2重掛け、重ねがけを行えば、はっきりと濃淡に差が出来る。焼成はOFでもRFでも良いが、RFだと素地土の影響を受ける。SK8~10であるが、かなりの範囲で白く焼けるので、非常に扱いやすい釉薬である。
白萩釉(しらはぎゆう)
藁灰釉、卯の斑釉と同じく、珪酸質乳濁釉である。釉の起源は、秀吉朝鮮出兵の際に毛利公の道案内をした、帰化朝鮮人李敬の創始と伝えられている。斑唐津も全く同じ手法である。白萩釉は、一般に卯の斑釉よりも珪酸分が少なく、そのために、薄掛けした部分に淡黄色、淡紅色の箇所が表われる。これは、酸化焼成のために、素地の中の酸化鉄が揮発して釉に熔け込んだものと思われる。(モミ灰は100%近く珪酸分だが、藁灰は70%程度の珪酸分なので、差が出て来る)焼成はSK8~9、OFである。
ジルコン乳白釉
以前は酸化錫による結晶質乳濁釉が、安定した釉としてよく用いられていたが、現在では安価で乳濁作用が顕著であるジルコンが多く使われている。これは、衛生陶器、タイル等の工業分野では広く用いられている。元々は、戦時中に錫が不足したアメリカで開発された釉薬であるが、現在では世界中で使用されている。この釉は、均一に白くなり、光沢があり、傷が付きにくく、貫入が出来にくく、釉の表面が硬く、窯変が出来にくいのが特徴である。
高火度ジルコン釉は、石灰亜鉛釉が最適であり、アルミナ分も珪酸分も多く入っていることで好ましい結果が出ている。この釉は、また、焼成に幅があるので、かなりの温度範囲で使用出来る。SK7~10、0FでもRFでも良い。素地土は、粘土質のものが良好であるが、通常の陶器として使用する場合は別段種類は選ばない。粘土質の土を使用すると、一見磁器のような雰囲気を持つ。
辰砂釉(しんしゃゆう)
銅を還元焼成すると、第一銅に変化し、赤色の呈色になる。これを辰砂釉と呼んでいる。中国では、明代に完成され、斎紅釉、郎釉、積紅釉、櫨均窯釉、均窯等と呼ばれている。色によっても区分され、桃花片、牛血紅、火炎青等の種類がある。日本では全てをひっくるめて辰砂釉と呼んでいる。特に、ツヤのあるものを辰砂釉、乳濁したものを鈞窯釉と分ける場合もある。(鈞窯釉参照)
辰砂釉は、2%程度の酸化銅と一緒に酸化錫を4%程度入れる。これは、錫が揮発した銅を吸収するとともに、還元作用を補足するためである。銅が3%を越えると赤く発色しなくなる。
焼成は、鈞窯釉と同じで950℃付近から還元に入るが、最初は還元を強めにして、1050℃くらいからは弱還元か中性焔くらいが良い。1200℃を越えると、中性焔にする。SKは8~10までである。素地土は、焼き締る粘土質の白土か磁器土が辰砂が均一に出やすいので良い。粗い土だと、釉が途中で止まるために、奇麗に発色しない場合がある。また、赤土を使用した場合は、鉄分の影響で奇麗な赤色にはならず、紫っぽい色から、くすんだ色まで変化する。
サヤの内側に布海苔で溶いた辰砂釉を塗って、その中に作品を入れ、銅の揮発性を利用してサヤの中をまんべんなく銅のガスで充満させて、鮮やかに発色させる方法もある。
辰砂が赤く発色しなかった場合は、もう一度焼き直す場合もある。900℃に温度を保持し、酸化焼成で3時間ほど焼成すると、発色が良くなることがある。
鉄分を微量入れるか、土灰釉を使用すると、鉄分の関系で、色合が青紫色になる。
バリウムを微量入れると、紫色を帯びる
鉄分をほとんど含まない原料で、なおかつ顔料を仮焼して使用すると、鮮やかな濃紅色になる。
二度がけして、下釉には銅を含まない釉、上釉に銅を含む釉をかけると、鮮やかな色合になる。
還元剤として、炭化珪素(カーボランダム)を使用する事がある。炭化珪素は、SK9付近で分解して炭素と珪素になる。この時に、炭素が燃えて酸素を取るので釉の中の銅分は還元作用を受ける。素地に炭化珪素でを2%程度加えた化粧土で模様を描き、1100℃程度で焼き付け、その上に辰砂釉を掛けてSK9~10で酸化又は中性焔で焼成すると、炭化珪素の所だけが還元されて赤色となり、その他の部分は青藍色になる。辰砂釉に炭化珪素を混ぜたり、釉に振り掛けたりしても同様の効果がある。この場合、炭化珪素1、酸化錫1、炭酸銅0.3の混合物を用いると更に効果的である。ただし、炭化珪素は微粉末を用いらなければいけない。炭化珪素を入れすぎたり、温度が低かったり、焼成時間が短いと、泡が出て、色も褐色になる。長すぎると赤色が消えることがある。
錫乳濁釉(すずにゅうだくゆう)
酸化錫を使った乳濁釉である。ヨーロッパでは昔からよく使用しており、マジョリカ、ファイアンス、デルフト等の名前で使用されてきた。最近は工業的には安価なジルコンを使用した乳濁釉が主流になってきたが、錫を使った乳濁釉は上品で柔らかい色あいになるのが特徴である。
焼成は、SK7~9、OFでもRFでもよい。
青磁釉(せいじゆう)
青磁釉は、中国では殷代に灰釉陶器として現れるが、この時代のものは焼成が完全に還元に出来なかったために、鈍い草色になっていて、まだ青磁釉の名前もない。唐代になって浙江省を中心とした越州窯で大量に焼かれるようになった。越州で作られたものは、釉色も整い、色も淡い緑色に近づいており、この青磁釉を越州釉、または古越磁と呼んでいる。中国では、これを青瓷と呼んでいる。ここから宋代にかけて青磁釉も発達していき、北宋代に至って官窯、汝窯、耀州窯、龍泉窯等で完璧な青磁が生産されるようになった。中国では、元来ヒスイの青色を目指して青磁釉を作ったとされているが、宋代の青磁が一応の頂点になった訳である。その後、元代になると材料の枯渇と治安の乱れから完全な青磁釉はだんだんと少なくなっていく。青磁は、その後近隣諸国に伝わっていき、朝鮮、安南、タイでも個性的な青磁釉が出来ていった。
一口に青磁釉と言っても、多種多様であって、中国でも、竜泉窯、汝窯、耀州窯、均窯等の青磁は全て微妙に色合が違う。また、同じ竜泉窯でも、時代によって色が変わっており、南宋時代は汝窯に近い色合で藍味の強い感じの砧青磁、その中でも、乳濁した青味の粉青があるが、時代が元代から明代に移るとオリーブ色に近い、天竜寺青磁になる。
また、青磁でも貫入のあるもの、ないものとがあり、汝窯、郊壇窯などの官窯には貫入が入ったものが多く、この官窯が後の貫入の語源とされている。また、砧、天竜寺、耀州窯、などには貫入はあまり入らない。
青磁釉は、基本的には酸化鉄が微量入った釉薬を還元焼成する事により、第一鉄に変わって青い色を出す。青色を濃く出す場合は、何度も重ね塗りをして釉を厚掛けにする必要がある。これは、釉中の泡や熔けきらずに残った結晶分が光線の屈折、乱反射を多くするためである。また、鉄が第一鉄になるのであるから、最初から珪酸鉄を使った方が釉の安定が良い。
色に深みを出すために、塗り重ねる釉薬の鉄分の量を変えたり、釉薬の配合を変えたり、あるいは乳濁の具合を変えたりすることもある。
珪酸鉄は市販品を使えば良いが、色合は安っぽくなる。もし、自分で作るのであれば、紅柄47、珪石53の配合物をよく細磨して、一度1300℃で還元焼成し、更によく細磨して作る。配合は自分なりに工夫すれば良い。
砧青磁(青っぽい青磁)は、アルカリ分が多いと出やすいので長石を多く入れる。また、バリウムやストロンチウムを加えると、より一層青色が鮮やかになる。しかし、入れすぎると「ブク」が出やすくなる。また、酸化錫を1~2%加えても青みが増す。これに対し、天竜寺青磁(緑っぽい青磁)は、石灰分を多くし、酸化クロム、酸化マンガンを0.05%程度加える。
焼成は、RFが絶対であり、OFでは色が青くならないで、米色青磁(淡いクリーム色)になる。温度は、磁器土の場合はRF10くらいまでだが、鉄分の入った土とか炻器質の土の場合は、温度が高いと素地土が持たないので、低めの温度で焼成するのが望ましい。
貫入を出すには、石灰分を多くして、磁器釉から陶器釉に近づけていけばよい。また、素地を炻器質のものにすると貫入が入る。素地土に鉄分を入れると素地が焼き締らなくなるので、貫入が出易くなる。貫入に褐色の色がついている物は、釉に燐酸鉄を少量入れると出ることがある。また、焼成後すぐに紅柄汁に浸けて出す場合もある。
青銅マット釉
銅を使ったマット釉で、青銅がさびたような色合になることから、この名前が付いている。分類としては、アルミナマット釉の1種であり、着色材として、酸化銅を使っている。銅を使う場合は、通常の石灰系のマット釉では、灰黒色になることが多いが、バリウムストロンチウム釉にチタン、骨灰を加えることにより、良好な青銅マット釉になる。炭酸リチウム、酸化錫を入れると青みがかった色合になる。
焼成は、SK8~9、OFである。素地土は、比較的粘土質のものが好ましいが、磁器土だと青みが強くなる。温度が上がりすぎたり釉が薄がけだと、銅分が飛んでしまい白くなる場合がある。。また、徐冷すると結晶質になって、黒い斑点とか白い斑点が出来る場合がある。
石灰釉(せっかいゆう)
石灰釉は、長石に石灰石を混ぜただけの単純な釉薬で、透明で艶がある釉薬なので、全ての釉薬の基礎となる釉薬でもある。広い意味から言えば、木灰を使った釉薬も石灰釉の中に含まれる。しかし、最近では原料としての名前として使われる。この釉をベースに色釉を作ったり、乳濁釉を作ったりする。たとえば、鉄を2%程度入れてOFだと黄瀬戸釉、RFだと青磁釉になる。8%程度で飴釉になり、10%以上で天目釉になる。
石灰釉が日本で使われだしたのは比較的新しく、明治になってからのことである。その頃は、長石と石灰石を杓あわせで作っていたので、未だに1号石灰釉(長石5に対して、石灰を1入れた釉薬)、3号石灰釉(同じく石灰を3杯入れた釉薬)とかの名称で売っている。安価で出来るし、無色透明で艶があり、また貫入が入りにくく、流れにくく、釉の安定性が良いので、広く一般的に使われている。焼き締らない土の場合は比較的石灰を多めに入れ、焼き締る場合は長石を多めにする。したがって、1号石灰釉は磁器用に用いられ、3号石灰釉は陶器用に用いられる。
また、土灰釉が灰だてと呼ぶのに対し、石灰釉は石だてと呼ぶ場合もある。なお、長石も石灰も沈澱しやすく、一度沈澱して固まったらなかなか元に戻らないので、沈澱防止剤を入れた方が安心である。
石灰釉の配合に長石や陶石を必要とするのは色々と意味はあるが、アルミナ分を取ることも一つの目的である。そして石灰釉の基準的配合成分は長石、石灰石、カオリン、珪石の四つである。
瀬戸黒釉(せとぐろゆう)
引き出し黒とも言う。元々は織部焼の1種であるが、焼かれた期間はきわめて短く、約60年の間だけである。この時期が天正年間(1573~1592年)なので、天正黒ともいう。またこの釉は、黒織部と同一とする場合と、引き出ししたものを瀬戸黒、引き出さない場合を黒織部という場合とがある。
元々は、色味として取り出していたものが発色が良い黒釉になることから、引き出す方法を発見したとされているが、高温の窯から引き出すために大物は出来ない。主に茶碗だけが主体である。
引き出し黒の場合は、あらかじめ窯内の戸際に接近して置いておき、釉薬が熔けた頃合を見計らって窯から出す焼き方である。焼き方、釉色共に黒楽釉に似ているが、黒楽が含鉄岩石である加茂川石を基準として鉛等を入れて温度調節するのに対し、瀬戸黒の方は、長石釉に鬼板等を入れている。温度も、瀬戸黒の方が高い温度で焼成する。ただし、釉薬が熔けきる寸前を見計らって窯出しし、急冷する方法は黒楽と同じ手法である。
瀬戸黒は、長石分の多い灰釉に鬼板を入れて黒くしているために、粘りが強く、釉を厚くかけると表面が縮れて「かいらぎ」が出来る場合がある。しかし、焼きすぎると釉薬が完全に熔けて、この「かいらぎ」も消えてしまう。
大正黒等の顔料を使った釉薬は、引出しをしなくても黒い釉になる。ただし、この場合はツヤのある釉になる。焼成はSK9、OFである。素地土は比較的粗めの方が引き出した場合に割れにくいのでよく使用される。粘土質のものは、引き出した途端に割れてしまうので、あまり用いられない。
蕎麦釉(そばゆう)
蕎麦釉は、釉薬の地肌や色合が蕎麦に似ていることから名付けられた釉薬で、朝鮮や、民窯で多く焼かれる釉薬である。基本的には、結晶釉の一種で、釉中の鉄分が結晶化して黄緑色や黄褐色の細かい結晶が析出した釉である。
結晶釉であるので、石灰分を相当量含むと同時に、マグネシア分が適量入っている釉がよい。しかし、マグネシア分が多いと暗色になり、更に多くなると結晶が微細になる。焼成はSK8~9RF、OFどちらでも良いが、違った色合になる。RFでは緑色系の色合になり、OFでは黄、茶色系の色合になる。
タルク釉
石灰釉は、還元焼成で焼くと少し青味を帯びる。洋食器を焼く場合、この青色が好ましくないために、青味のない純白の釉薬を求めて、タルク釉が発明された。また、電気特性もいいので、碍子用釉としても用いられる。高温で焼成するために、磁器以外ではあまり使用されない釉である。タルクの分相効果のために乳濁釉やマット釉としても使用出来る。焼成はSK10~11、RFである。

