初心者のための釉がけ講座(応用編)

 釉薬の掛け方の基本が大体分かったと思いますので、今度は基本に基づいて釉薬の掛け方の応用について書いていきます。
 ここで書いていることは、応用例のほんの一部だけですし、他人に迷惑をかけなければ、釉掛けにはこれをやってはいけないということはありませんので、みなさんどんどんと新しい掛け方にチャレンジしてみて下さい。しかし、新しいこころみというのは失敗と紙一重というか、背中合わせの部分がありますので、ご了承ください。もし失敗したら、そこで辞めるか、更に追求するかは、自分の判断で行ってください。

  1. 釉薬の重ね掛けを行う
    1. 重ね掛けの際の注意事項

       同じ釉薬、もしくは2種類以上の釉薬を重ね掛けするというのは、非常に危険を伴う作業です。何故かというと、下にかかった釉薬が皮膜の働きをして、上に掛ける釉薬の水分を素地が吸い取る前に吸い取って、水分を吹くんだ状態に戻ってしまうからです。本来、素地土に吸い取られるべき水分が、釉薬に吸い取られてしまうために、下に掛けた釉薬が柔らかくなって、逆に上の釉薬に吸着されてしまうために、剥がれ落ちてしまう訳です。
       また、天然藁灰等の比重の軽い材料を使っている釉薬は、乾燥すると手で触っただけで釉薬が取れてしまうように、非常にめくれやすくなっていますので、そのまま上に釉薬をかけるというのは危険です。
       これを防ぐには、主に次の方法があります。
      1.ドブ掛けで行う場合は、上に掛ける釉薬の施釉時間を極端に短くして、水が廻らないようにする。
      2.上掛けの釉薬はスプレー掛けして水分を分散させる。
      3.上掛けの釉薬は、筆で塗り重ねる。
      4.上掛けの釉薬は、柄杓掛けにする。
      5.釉薬にCMCやにかわ、フノリ、市販の釉薬強固剤等を入れて、釉薬の付着力を増して剥がれにくくする。または、下に掛けた釉薬の上からフノリ液や市販の釉薬固定液を塗ってからドブ掛けする。
      6.上掛けの釉薬は、粉末状にして振りかける。

      1. ドブ掛けで行う方法

         ドブ掛けを行うのは非常に危険性を伴う方法です。なるべく上にかける釉薬に浸ける時間を短くする必要があります。本来は、素焼した素地土に吸い取られる筈の水分が、下に掛かっている釉薬に取られるために、下の釉薬が水分を含んで張力を失うために剥がれたりめくれたりする訳です。特に下にかけた釉薬が、石灰釉や長石釉のように、比較的比重の重い、乾燥した釉薬を手で触っても手に釉薬がくっつかないようなものは割と安全に上掛けすることが出来ますが、天然藁灰や天然木灰等の比重の軽い材料を使っていて、乾燥した釉薬を手で触ると手に釉薬がくっつくようなものは極力止めた方がいいと思います。これは、4の方法も同じことが言えます
         ドブ掛けを安全に行おうとする場合は、5の釉薬強化剤を入れて釉薬を固める方法と、一度釉掛けした上にCMC、フノリ等の糊剤を塗って釉薬を固める方法があります。詳しくは、以下に記述します。

      2. スプレー掛けで行う方法

         この方法は非常に安全な方法です。釉薬をかける時にドブ掛けのように一気に掛けないため、水が廻るという状態が起きないからです。この方法だと部分掛けも可能ですし、マスキング等も使えます。ただし、一面をムラなくかけることは不向きです。どうしても釉薬に濃淡が出来やすくなりますのでかなりの練習が必要となります。
         また、一度に同じ場所に厚掛けしようとすると、逆に直ぐ水が廻ってしまい、釉薬が流れ落ちたりしますので、均等に薄く何度も掛ける必要があります。
         均一にかけられるようになると、この方法が一番安全で確実な方法と言えます。青磁釉や鈞窯のように2重掛けが絶対条件の釉薬などの場合も、この方法が一番安全だと思います。

      3. 筆で塗り重ねる方法

         この方法は、方法次第ではスプレー掛けの次に安全な方法です。釉薬を薄めに作って、しっかりとフノリ、CMC等の糊剤を入れて重ね塗りを行います。というよりも、この方法の場合は、糊剤と入れるということが絶対条件になります。そうしないと、筆で塗る際に、下地の釉薬を剥がす危険性があるからです。下の釉薬がしっかりと固定されている場合には、上の釉薬を塗り重ねても安全な訳です。
         この方法も、下の釉薬をしっかりと乾燥させた上に塗り重ねるということが必要となります。塗り重ねていくに従って、乾燥の時間もかかっていきますので、注意が必要です。また、均一に厚掛けしようとすると、薄い釉薬を何度も塗るということが必要となります。
         この方法は、塗り方次第では志野釉のように濃い釉薬を塗ってムラに出す方法と、青磁釉や黒楽釉等のように薄い釉薬を何回も塗り重ねて厚みを出す方法とがあります。両方とも、厚みを出すには、一度で厚く掛けると必ずメクレたり剥げたりします。それを防ぐために、釉薬の層を作っていくわけです。

      4. 柄杓掛けで掛ける方法

         この方法も、わりと安全に掛けられる方法です。ただし、素早くかけることを要求されますし、綺麗に均等にかけるのはなかなか難しいようです。逆に、ムラに掛かった面白さを出す場合や部分的に模様にように掛ける場合、あるいは勢いを出す時などには面白い方法です。
         大皿や大坪のように大物の釉掛けなどにはよく用いられる方法で、益子焼きなどに多く見られます。

      5. 釉薬強固剤を入れる方法

         この方法も、比較的安全に行える方法です。ただし、釉薬にフノリやにかわ、釉薬強固剤を入れると、釉薬に粘りが出て比重が変わってくるので変更になった比重のまま新しい釉薬を作らなければいけません。
         この方法を、上記の4パターンと併用しますと、安全にかけることが出来ます。ただし、ドブ掛けの場合は、やはり水の廻る可能性は発生しますので、注意が必要です。スプレー掛けの場合には、釉薬に粘性が出るために、スプレーが詰まりやすくなる危険性もあります。

      6. 粉末の釉薬を振りかける方法

         この方法は、陶板や皿などに有効です。この方法は、単純に灰を振りかける方法から、釉薬を振りかける。型紙を置いて粉末状の釉薬を振りかける。等の応用が出来ます。

    2. 同じ釉薬を重ね掛けの際の注意事項

       青磁釉や志野釉のように、厚掛けが絶対条件の釉薬は、長時間浸けておくよりも2重掛けにした方がメクレにくくなります。また、部分的に同じ釉薬を重ね掛けする場合もあります。
       同じ釉薬を重ね掛けする場合は、違った釉薬を重ね掛けするほどの危険性はありません。しかし、めくれやすいとか剥がれやすくなるということは全く一緒ですので、重ね掛けする際には、注意が必要です。特に白マットや藁灰のようにめくれやすい釉薬の場合は、特に注意が必要となります。厚掛けしとうとする場合には、重ね塗りをした方が安全です。
       同じ釉薬を上掛けするものとしては、青磁釉とか亀甲貫入釉、志野釉のように厚掛けしないと効果のないものがこれに属します。単純に透明釉とか土灰釉を厚掛けしても青磁釉のように青色呈色を帯びてきます。原理は海の色と同じで光の屈折によるものです。

    3. 違う種類の釉薬を重ね掛けする際の注意事項

       上記で説明したように、釉薬を重ね掛けする場合は天然藁灰等を使用した軽い釉薬はなるべく最後にかけるようにします。藁灰のように比重の軽い釉薬の上から重たい釉薬を重ねた場合は藁灰が簡単にはじけて上の釉薬がめくれ落ちますので、非常に危険です。どうしても掛けたい場合には、釉薬に市販の釉薬強固剤を入れて釉薬が剥がれにくくするか、釉薬を掛けた上にCMCやフノリ液、市販の釉薬固定液などを塗って釉薬を固めてから上掛けの釉薬を使用するか、藁灰釉に釉薬強化剤等の粘性材料をしっかりと混ぜて強固にしてから使用します。
       流れやすい釉薬と流れにくい釉薬の場合は、流れやすい釉薬を上にかけると効果が大きくなります。しかし、流れにくい釉薬を流れやすい釉薬の上からかけても全く違った効果があります。
       熔ける温度の違う釉薬を使う場合も危険です。下釉が先に熔けると、上の釉薬が滑り落ちますし、逆に上の釉薬が先に熔けると、下の釉薬を引っ張って、メクレの原因になります。ただし、極端に熔ける温度が違わない限り、このような失敗はあまり起こらないので、それほど神経質になる必要もありません。
       違う釉薬を上掛けするものとしては、鈞窯釉、辰砂釉や違う調合の青磁釉を重ね掛けするものがあります。青磁釉の場合には、下釉に濃い色の釉薬をかけて、上に透明釉を掛ける場合もあります。その他、どんな釉薬でも何かしら違った色合になるので、手持ちの釉薬で試してみても面白いと思います。

       ただし、違う釉薬を掛ける場合は、釉薬の相性によっては、釉薬が飛び散って周りの作品に迷惑をかける危険性をはらんでいますので、いきなり大きい作品でやるのではなくて、小さい作品をサヤに入れて試験焼きをしてから、安全性を確認した上で大きな作品を作ってください。特に、他人の作品と一緒に焼く場合には、試験焼きで絶対に大丈夫だと分かってから行わないと、自分の作品をダメにするだけでなく、他人の作品までも一緒にダメにしてしまいます。

    4. 重ね掛けの例

       2種類の釉薬をかけても下釉に使う釉薬によって、全く違った雰囲気になります。たとえば、白マット釉の上から黒マット釉を掛けると、黒マット釉の色になりますが、逆に黒マット釉の上から白マット釉をかけると、白マット釉の中から黒マット釉が浮き出てきて、さざ波のようになります。
       重ね掛けの応用としては、下釉を掛けた後で、一部を撥水剤や型紙でマスキングして上釉を掛けると、模様を作る事が出来ます。梅花天目とかの手法と同じ方法です。その他、掛け方を変えていくと、2種類の釉薬でもかなりのパターンで掛けることが出来ます。
      重ね掛けの例

  2. 部分的な重ね掛けを行う

     全面に重ね掛けをするのに対して、部分的な重ね掛けを行うのはよくある手法です。比較的安全に出来ることと、釉薬の種類や重ね掛けの方法によって様々な応用があることが理由だと思います。次に、何点か実例を挙げて説明します。

    1. 釉掛けした上に、筆で模様を描く

       これは、よく用いられている手法です。黄瀬戸釉の上から、織部釉を筆で塗る方法は、定番中の定番といった感じです。
      本来は、タンパン(天然の硫酸銅)を塗るのですが、タンパンの場合は、色が出たり出なかったりして安定しないのと、土の種類によって出かたに差があるため、最近では、安易に織部釉がよく用いられています。
       この写真の左側が釉薬(織部釉)を使ったもの、右側がタンパンを使ったものです。ちょっと見ただけでは分かりにくいですが、タンパンとの見分け方は、タンパンは抜けタンパンといって、素地の裏側にも緑色が抜けるのと、素地に染み込むために描いた線や絵がぼやけるのが特徴です。タンパンは、試薬品の硫酸銅を水に溶かすと出来ますので、一度試してもいいのではないでしょうか。塩化コバルト等に比べると比較的安価であるので、買っても損はないと思います。
       筆で描く時の注意点は、筆の穂先を使って釉薬を置いていくという気持ちで線を引くことです。根本で描こうとすると、どうしても下に掛けている釉薬を剥がしとることになりかねません。筆の穂先が作品に触れるか触れないかというところで描くことです。

       その他、筆を使った方法としては、筆にたっぷりと釉薬をつけて、作品の上から垂らしていく方法もありますし、筆の先を振って釉薬を振り落とす方法もあります。垂らす方法は、描くのとは違って、線の太さを不均一にすることが出来ます。場合によっては、線にならずに固まりで落ちる場合もありますが、意図しない面白さがあります。筆を振って落とす方法は、釉薬が何処に落ちるか分からないので、偶然の面白さを出すことが出来ます。

      1. 同じ釉薬を筆で塗る場合

         赤土に木灰釉をかけて、更に木灰釉を筆で落として還元焼成したものが、左写真です。この場合は、鉄分の多い赤土に木灰釉を薄めにかけているために、下に掛けた部分が鉄釉や柿釉のように見えて、その上に模様のように木灰釉がかかっています。一見すると、違う釉薬を掛けたように見えますが、実は同じ釉薬なのです。
         この他にも、白マット釉や白萩釉、藁灰釉等の乳濁系の釉薬は、下掛けの釉薬を薄くすることにより釉薬の濃さが違ってくるために、同じ釉薬の2度掛けでも違う釉薬をかけたように見せることが出来ます。
         実は、同じ釉薬を筆で塗る方法は、それほど応用のある技法ではありません。透明系の釉薬ではほとんど差が出ないのと、色釉の場合でも濃い色の場合には差が出ないためです。

      2. 違う釉薬を筆で塗る場合

         この他の方法としては、白い釉薬の上から鉄釉系で描くとか、逆に鉄釉系に白い釉薬で描くとかしても良いです。鉄釉系に藁灰釉系を塗ると、朝鮮唐津の雰囲気になります。また、同系色でワラ白に藁灰や白釉にワラ白とか白マット釉といった組み合わせも面白いです。ただし、藁灰の上からワラ白という組み合わせの場合は、藁灰が乾燥すると粉末状になるので、そのままだと釉薬がめくれてしまいます。逆に、メクレを面白いと見なすことも出来ますが・・・。この場合は、藁灰を掛けた上からフノリやにかわ、CMC等の糊剤を塗るか、市販の釉薬固定剤を塗ると比較的安全になります。

         釉掛けした上から別の釉薬で線を引くというのも、よくある方法です。この方法は、柄杓で垂らす方法でもありますが、綺麗な線を引くには筆で描く方が有利です。筆の代わりにイッチンを使った方法もあります。イッチンを使うと、線の太さが単純になりますが、綺麗な線が簡単に出せるという意味では一番だと思います。

         左写真は、伊羅保釉をうす掛けた上からワラ白釉を筆で落としながら描いたものです。ワラ白釉が薄い部分は茶色になって、濃い部分は白色に変化します。この場合も、伊羅保釉が濃い場合だと全く違った感じに仕上がります。また、線を引くように描いても全く違う感じに仕上がります。
         白色系の釉薬の上から鉄釉系で線を引くと、鉄絵風になりますし、逆だと朝鮮唐津風になります。藁灰系を上釉にする場合は、描いた線がぼやけるので、面白い効果があります。線をぼやかしたくない場合には、白マットのように比較的流れにくい釉薬の方が有利です。
         この方法では、同じ釉薬を使っても土の種類や釉薬の厚さ等によって全く違った感じに仕上がるので、パターンは無限にあると思っても良いと思います。その中から自分のお気に入りが発見できれば、非常にラッキーです。


      3. 三彩釉

         釉掛けした上から別の釉薬を筆で描く方法のひとつとして、三彩釉があります。これは、透明釉を掛けた上から2種類、もしくは3種類の流れやすい釉薬を筆で塗って、この釉薬が流れて交りあった雰囲気を出す方法です。
         この方法は、通常の釉薬ではなかなか出来ません。亜鉛釉や鉛釉等の熔化度の低い釉薬を使って通常の温度で焼成することが必要となります。下に掛ける透明釉を厚掛けにしておくと、比較的流れやすくなります。しかし、流れることを目的としますので、ちょっとでも温度が上がりすぎたり時間が長すぎると、流れてしまって棚板にくっついてしまう危険性のある手法でもあります。通常は、ヨリ土でかさ上げしたりせんべいを置いて焼成します。
         この方法では、唐三彩が有名ですが、唐三彩の場合は、特殊な焼成方法をとっています。それは通常の高火度釉のように、素焼を800度前後、本焼は1250度前後という焼成方法をとらずに、素焼を1200度以上で焼成して、素地を焼結させておいて、本焼は1000度程度の低い温度で焼いて、釉薬が熔けて流れたら終了するという方法です。 素地が焼結すると、水分を吸わなくなるので、釉掛けは糊剤のたっぷり入った筆で塗ります。また乾燥しないので、釉掛けには非常に時間がかかります。大変手間のかかる方法です。

    2. 釉掛けした上に、柄杓で釉薬をかける

       筆で模様と描くと、模様が自由に描けるのと好きな位置に模様が描けるのですが、自然な模様にしたい場合とか、偶然の雰囲気を出したい場合には、柄杓で適当に釉薬を流すのが面白いです。使う柄杓の形によっても、様々な変化にすることも出来ます。注ぎ口の小さい柄杓の場合には、比較的細かい模様になり、大きい柄杓の場合には、全体に掛かったり、太くなったりこぼれたりと、いろいろな変化を作ることが出来ます。ただし、自分の思い通りには、なかなかなりません。
       柄杓で部分掛けする場合も、釉薬の組み合わせは自由です。白系の釉薬に鉄釉を掛けてもいいですし、白系の上から白系の釉薬でも面白い模様が出来ます。もちろん、同じ釉薬でも出来ます。この場合は、濃淡の差で見せることになります。同じ釉薬でも、薄くかけた時と濃くかけた時とでは色が違う釉薬の場合には、結構面白い模様になります。乳濁系の釉薬がこれに相当します。

       また、釉薬のかわりに下絵で鉄を掛けたり、鉄絵のかわりに鉄釉をかけたりすることも可能です。鉄釉を掛けた上から志野釉を掛けたりすることもできます。これを焼くと、ひと味違った志野釉になります。
       左写真は、ワラ白釉を下掛けした上に、瑠璃釉とトルコ青マット釉を上掛けしたものです。瑠璃釉は、ワラ白釉の影響で青っぽくなっていますし、トルコ青釉は本来は空色になるのですが、ここではうす緑色に呈色しています。
       柄杓で部分掛けする場合には、速度が優先されます。もたついていると、釉薬が濃くなってしまい、釉飛びや釉ハゲ、メクレ等の原因になります。綺麗に掛けようとせずに、出来るだけ素早く掛けることです。したがって、全面に柄杓で掛ける以外は綺麗にかける場合には不向きな方法とも言えます。

    3. 釉掛けした上に、口の部分だけ違う釉薬に浸ける。

       釉薬を掛けた上から、口の部分だけに別の釉薬をかける方法です。これは、口の部分が流れやすい釉薬の時に、流れにくい釉薬をかけて口の部分の釉薬が流れ落ちるのを防ぐ目的で始まった方法ですが、面白いので、手法として確立するようになりました。今では、熔ける釉薬とか熔けない釉薬とかいうことはあまり意識しないで、上釉に熔けて流れる釉薬を使ったりして釉薬を流す場合が多いようです。
       鉄釉に、藁灰釉をかけて上釉が垂れれば朝鮮唐津のような感じになります。また、定番の黄瀬戸釉をかけた上に織部釉をかけるという方法もあります。その他の方法としては、口の部分だけ鉄釉がかかった皮鯨風のものもよく見かけます。口の部分だけカラフルな釉薬を使っても面白くなります。

       垂れたような感じにするのは、口の部分に釉薬を厚掛けして重力の力で流す方法、上釉を流れやすい釉薬を使って自然に流れるようにする方法、筆で垂れたように描く方法、口の部分に釉薬を付けて、乾かないうちに直ぐに上下に振って強制的に釉薬を垂らす方法とがあります。

       口の部分が流れた感じの代表は、朝鮮唐津だと思います。これは、鉄釉の上から藁灰釉を口の部分だけに流し掛けたものですが、藁灰釉は比較的流れにくい釉薬ですので、しっかりと厚めにかけて、釉薬の重みで流れるようにするのがコツです。下釉の鉄釉を厚掛けにしておくと、より流れやすくなります。藁灰釉を掛けた上から、更に筆等で藁灰釉に厚みを持たせても良いです。しかし、極端に厚くすると、釉薬がめくれたり、剥がれ落ちたりする危険性もありますので、注意が必要です。

       流れやすい釉薬を掛ける代表といえば織部釉を掛ける場合でしょう。勝手に流れてくれます。ビードロ釉も比較的流れる釉薬ですし、条痕釉も流れます。しかし、流れやすい釉薬を上から掛ける方法は、下の釉薬も一緒に流れてしまうために、どうしても口縁部分の釉薬が薄くなって、場合によっては剥げたりする危険性があります。もし、この方法で行う場合には、口縁部分の肉厚をある程度厚めに作って、釉薬が流れにくくするとともに、流れてもそれほど使い勝手が悪くならないように作品を作ることが必要となります。

       筆で描く方法は、筆にたっぷりの釉薬を含ませて、自然に流れるように描くのがコツです。釉薬を置いた時に、流れてくれれば自然な流れ型を作ることが出来ます。次の釉薬を掛けた後で上下に振る方法を併用することも出来ます。筆で釉薬を置いた直後に作品を上下に振れば良いわけです。しかし、この方法はかなりのスピードを要求されます。上から掛けた釉薬は、下の釉薬に吸い込んでしまうために、直ぐに乾燥するからです。  また、この方法はかなり自分の思い通りの模様に出来ますが、失敗すると筆の跡が残ることがあったり、わざとらしい垂れ方になったりします。ある程度の練習を必要とします

       上下に振る方法は、釉薬が乾かない間に振らなければ効果がありません。かなりのスピードを要求されますので、ある程度の練習を必要とします。また、自分の思った垂れ方にするのは難しいですが、筆で描くよりも自然な垂れ方にすることが出来ます。左写真は、同じ釉薬を垂らしたものですが、同じ釉薬の場合には、よく行われる手法です。

       もちろん、全く垂れない釉薬で口の部分だけ違った色にする場合にも利用できます。白釉と黒釉の組み合わせ以外にも、最近はカラフルな色釉がありますので、これを利用すると面白いものになると思います。左写真は、飴釉の上からワラ白釉をかけた場合です。ワラ白釉は、ほとんど垂れませんので、このようなコントラストのつよい作品に仕上がります。

    4. 釉掛けした上に、違う釉薬を霧吹きで掛ける。

        この方法は、釉薬がメクレにくいので、釉薬の重ね掛けには非常に有効な手段です。通常、白マットや藁灰系の釉薬は釉掛けした後、乾燥すると粉末状になって上掛けの釉薬がメクレやすいのですが、霧吹きを使うと比較的安全に掛けることが出来ます。
       その他、どの釉薬に対しても安全に重ね掛けすることが出来ます。また、複数の釉薬を掛けることやグラデーションにすることも出来ますし、型紙やマスキングテープ、あるいは油性撥水剤等を使って部分的に釉掛けすることも出来ます。やり方を考えれば、いくらでも応用がある方法です。

       霧吹きは、薄く掛けると、マダラになったりぼかしになったりします。濃く掛けると、通常の釉薬のようになります。ただし、濃く掛ける場合には、水が廻らないように、数回に分けて掛ける必要があります。一度に掛けると、ドブ掛けの場合と同じように、水が廻って釉薬がめくれたり剥がれたりする危険があります。

       使用する霧吹きも、ポンプ式のものを使えば均一にかけることが出来ますし、L字型のものを使えば、大きさの違いが出せます。細かい場所に掛ける場合には、霧吹きの方が有利ですが、全体にかける場合には、ポンプ式の方が便利です。用途によって使い分けた方が楽だと思います。

       白マット釉や黒マット釉のように、掛けた状態でそのまま焼き上がる釉薬の場合は、霧吹きで釉掛けするだけでもブツブツした表面になって、十分に面白い効果があります。少ない量だけ掛けると、砂をまぶしたように見えますし、しっかりと掛けると大きめの粒になります。表面がブツブツした感じがイヤな場合は、霧吹きで吹きかけた後で、乾燥後に手で表面を平らにならします。熔けやすい釉薬の場合には、この必要はありません。
       この写真は、白マット釉をかけた上に、黄瀬戸釉と織部釉を霧吹きで掛けた例です。 白マットの上から色釉を重ね掛けした場合、このように下の釉薬である白マットの影響を受けて、色釉がぼんやりと出るのが特徴です。これで、もう少し黄瀬戸釉なり織部釉なりを多く吹きかけると、下の白マットと色が混じり合って、織部釉だとうす緑色の色になり、黄瀬戸釉だと黄色っぽい色になります。更に多く吹きかけると、下の白マットの影響をうけなくなり、本来の織部や黄瀬戸の色合になります。
      重ね掛けの例も参考にしてください。画像が載っています。

    5. 釉掛けした上に、手で釉薬をなすり付ける。

       釉掛けした上や、そのまま素焼の上に手で釉薬をなすり付けると柄杓や筆で塗ったものとは全く違う、独特の雰囲気が出せます。ただし、釉薬はムラに釉薬を掛ける技法なので当然非常にムラになります。面白いと思うか、汚いと思うかは、それぞれの人の判断によるところですが・・・。
       この方法も比較的釉薬がメクレにくい方法のひとつです。手で押さえつけながら釉薬をかけるので、剥がれにくくなるようです。また、複数の釉薬を使えますし、何度も塗り重ねることも出来ます。全く意図しない出来上がりになりますので、その辺が醍醐味といえるかもしれません。
       指先についた釉薬を振り落とすと、筆で振り落としたような感じになりますし、綺麗になでつけていくと、濃淡の出た仕上がりになります。手で釉薬を置いていく方法は、流れやすい釉薬よりも流れにくい厚掛けしてもめくれにくい釉薬の方が面白みがあります。

    6. 釉掛けした上に、スポンジで釉薬を置いていく。

       釉掛けした上から、スポンジに釉薬を付けて置いていく方法です。この方法は、海外では割と行われている方法のひとつです。組み合わせによっては、結構面白い雰囲気を作り出すことが出来ます。
       大抵の場合は、色相の対照的な釉薬を使った場合の法が高価が大きいようです。ただし、写真のように白マットと黒マットの組み合わせの場合には、黒色の法が白色よりも発色が強いので、黒釉の上から白釉を置く場合には、厚めにかける必要があります。写真の場合は、白マットと使っているので、釉薬が流れずにそのままの状態で残っていますが、流れやすい釉薬を使用した場合には、もう少しぼんやりとした出方になります。

  3. 釉薬の掛け分けを行う

     釉薬の掛け分けを行う方法でもっとも簡単な方法は、釉薬に部分的に沈めて、もう半分を別の釉薬に沈める方法です。ただし、この方法は釉薬が重なったところの処理に問題が発生することがあります。例えば、灰の多い釉薬を先に掛けると、後から掛けた釉薬を弾く可能性が出てきます。また、この方法は、単純な線での掛け分けにしか出来ないという欠点もあります。

  4. 蝋抜きや撥水剤を使った方法

     単一の釉薬を掛け分けるにはいわゆるロウ抜き技法という方法を使います。昔は本当の蝋(パラフィン)を使って行っていましたが、パラフィンを溶かすのに湯煎をする必要があるために、最近では同等の手法でも撥水剤を使う方法、マスキングテープを使う方法、陶画糊(ラテックス)を使う方法等で簡単に行えます。使い分けは、複雑な模様とか線画の場合は撥水剤や陶画糊を使用して、単純な直線とか形の場合にはマスキングテープを使用した方がシャープな線を出すことが出来ます。

     たとえば、トンボさんの作品やikkoさんの作品で素晴らしいものが作られています。左側のとんぼさんの作品は、黒天目の上に撥水剤で絵を描いて、黄イラボ流し掛けの作品です。撥水剤の基本的な使い方の例です。右側のikkoさんの作品は、黄瀬戸釉をかけた上に陶画糊でぽぷらの絵を描き、その上に織部釉を流し掛けたものです。これは、撥水剤でも応用出来るものです。

  5. 陶画糊と撥水剤の使い分け

     陶画糊と撥水剤の使い分けは、撥水剤は一度塗ると、その上にはもう釉薬をかける事が出来なくなりますが、陶画糊の場合は、陶画糊を剥がすことにより、上に釉薬をかけることが出来ます。したがって、釉薬を掛けた上に撥水剤で絵を描いて、更に違う釉薬をかけるという使い方は撥水剤が便利です。また、陶画糊で絵を描いておいて、釉薬をかけて、陶画糊の部分を剥がして違う釉薬をかけるという使い方は陶画糊で行います。
     これは、一見同じように見えますが、実は全く違った発色になります。例えば、白マットと黒マットの組み合わせで、黒マットで絵を描く場合には撥水剤で行うことが出来ますが、白マットで絵を描こうと思うと、先に白マットを掛けると後から掛ける黒マットに全て置き換えられてしまうために効果が出ません。そこで、陶画糊を使って絵を描き、黒マット釉をかけて、陶画糊を剥がして白マット釉を掛けるという手順が必要になります。  これは、織部釉を一部分にかける方法にも使われています。陶画糊で織部釉を掛ける部分を塗っておいて、灰志野釉を掛けます。その後陶画糊を剥がして織部釉を刷毛塗りします。志野釉の上から織部釉がかかると、色が薄くなってしまうために使われる方法です。

  6. 複雑な方法

     複雑な模様を2種類以上の釉薬を使って掛け分ける方法もあります。最初に2回めに釉掛けする部分を陶画糊でマスキングします。面倒であればガムテープ、マスキングテープ等を使用しても出来ます。終ったら釉掛けします。次に陶画糊等を剥がして、一回目に釉掛けした部分の上から撥水剤を塗ります。油性の撥水剤を使えば、釉薬は剥がれません。最後に2回目の釉掛けを行います。これで、綺麗に釉薬が掛け分けられています。
     この写真の技法は更に複雑で、最初にマスキングテープを貼って黒マット釉を掛け、マスキングテープを剥がして、今度は斜めにマスキングテープを貼ります。この時、当然黒マットの上にもマスキングテープを貼るようになります。  そして、白マット釉をかけて、マスキングテープを剥がし、黒マットと白マットの掛かっている部分に撥水剤を塗ります。最後にトルコ青釉を掛けています。

     施釉後に撥水剤を塗る方法は、応用がききます。織部釉の部分施釉とか半分の掛け分けとか2重掛けの時に模様を残す、等様々な方法が考えられます。


  7. 釉薬用の撥水剤を使う方法

    黒マットに、撥水剤を混ぜて描いた上に白マットをかける  もう少し簡単に行う方法もあります。それは、CP-Hという水性の撥水剤を釉薬に1割程度混ぜて、筆で塗ったり、部分的な釉掛けを行う方法です。その後、別の釉薬を掛ければ、撥水剤入りの釉薬の部分に撥水効果が表れて掛け分けることが出来ます。
     この方法も、マスキングテープや陶画糊を使って複雑な模様を作ることが出来ます。最初にマスキングして、撥水剤入りの釉薬を掛けて、その後マスキングした部分を剥がしてから違う釉薬を掛けます。
     この写真では、黒マット釉にCP-H撥水剤を混ぜてイッチンで描き、上から白マット釉を掛けています。ちなみに、ぼんやりと出ている青は、塩化コバルトで描いた部分です。


  8. 内側と外側を掛け分ける方法

    内側と外側を違う釉薬をかける場合があります。この方法は、最初に内側に柄杓等で釉薬をかけておきます。この時、外側に釉薬が垂れるのを防ぐには、マスキングテープを貼ったり、陶画糊を塗ったり、新聞紙等で外側を囲います。簡単なのはマスキングテープの方法だと思います。もし、釉薬が垂れたら、剥がし刷毛やスポンジで外側の釉薬を取り除きます。
     次に、口の部分を持って外側を釉薬の中に静かに沈めていきます。中に釉薬が入るとダメなので、ぎりぎりまでで止めます。または、下に向けて柄杓等で流し掛けを行います。流し掛けの場合は、角度が悪いと釉薬が内側に入り込む恐れがあります。
     外側の釉薬を口の部分にまで掛けたい場合には、口を下にして空気を中に溜めた状態で静かに釉薬の中に沈めます。この場合、内側の釉薬の上から撥水剤を塗っておくと安全に釉掛けすることが出来ます。

  9. スプレーで掛け分ける方法

    マスキングしておいて、スプレーで釉掛けする方法もあります。細かい場所には不向きですが、大きい掛け分けの場合には、比較的簡単にすることが出来ます。

  10. 釉薬を薄く掛ける

     釉薬を掛けるときは、釉薬の中に沈めて1、2秒おいてから出しますこれが標準的な釉掛けのタイミングです。そうすると、釉薬の厚さが0.5~1ミリ程度になります。
    薄掛け  しかし、釉薬の種類や土の種類、あるいは意匠的に薄掛けにすることもあります。例えば、左写真のものは、黒御影土にワラ白釉を掛けて酸化焼成したものですが、釉薬の厚さによって、全く違った釉薬のように見えます。もちろん左側が薄掛けしたもので、右側が厚掛けしたものです。
     ワラ白釉を薄掛けすると、素地土の中の鉄分が釉薬のチタンの影響を受けて青っぽく発色することがあります。これは、酸化焼成の場合にはよく起きる現象です。しかし、釉薬の厚さが厚くなるにしたがって青さは押さえられていきます。


    薄掛け  また、色釉や白釉の場合には、顕著に釉薬の厚さの違いが表れます。左写真は赤土に伊羅保釉を掛けた場合ですが、薄掛けの場合はどちらかと言えば焼締め風の色合になりますが、厚掛けすると伊羅保釉本来の黄色っぽい色合になってしまいます。これと同様に、白マットや乳濁釉などの場合も薄掛けにすると釉薬に透明性を帯びてきます。赤土の場合は、更に差が大きくなって、別の釉薬をかけているように見えます。
     このように、釉薬の厚さを変えることによって、全く別の雰囲気を出すことが出来ますので、同じ釉薬と土の場合でも掛けようによっては全く違う色合にすることが出来ます

     通常釉掛けは、釉薬の中に沈めて1、2秒おいてから出しますが、浸ける時間を短くすると、釉薬の厚さが薄くなります。入れたと同時くらいに瞬時に出すと、かなり薄くかけることが出来ます。ただし、速度優先なので熟練を必要とします。
     簡単に薄掛けにする方法は、釉薬に水を入れて濃度を薄くすることです。この方法だと、確実に薄く掛けることが出来ます。ただし、釉掛けの後釉薬が沈殿してから、上澄み水を捨てて通常の濃度に戻す必要があります。薄掛けの釉薬を頻繁に使う場合は、濃度の濃い釉薬と薄い釉薬を別々に作っておくのもひとつの手です。しかし、当然置き場所も2倍になります。

     よく、薄掛けだから釉薬の上澄みを掛ければいいと思っている人がいますが、これは全く間違いです。通常、釉薬は比重の軽い材料が上の方になっていますので、上澄みを掛けると比重の軽い材料だけを掛けることになるからです。全く熔けないことになる場合もありますので、釉掛けをするときは、全部の釉薬を撹拌してから使うことです。

     急須の茶こしの部分とか透かしの部分で、釉薬を濃くかけると穴が詰まってしまう場合には、その部分に筆等で水を含ませておきます。その後すぐに釉掛けすると、水を含んだ部分は釉薬を薄くかけることが出来ます。
     これを応用して、作品を全体に水に浸けてから釉掛けすると、薄く掛けることが出来ます。ただし、水に浸ける時間が長すぎると、水が廻って釉が剥がれる原因になりますので、水に浸けるのは瞬時にしておくことが大切です。また、薄作りのものはすぐに水が廻ってしまい、釉ハゲの原因になりますので不向きです。

  11. 釉薬を厚く掛ける

    薄掛け  釉薬を薄くかける反対に、厚く掛ける技法もあります。これは、青磁釉などのように同じ釉薬を厚掛けする方法、一部分だけを厚掛けする方法、違う釉薬を重ね掛ける方法などがあります。同じ釉薬を厚掛けする方法は、重ね掛けの項目に載っていますので、そちらを参照してください。
     部分的に釉薬を厚く掛けたい場合には、その部分だけ筆で重ね塗りをするのが簡単な方法です。ただし、釉薬がめくれやすくなりますので、釉薬にCMC等の糊剤を入れて粘りを出したりして剥がれにくくする注意が必要です。



  12. 釉薬に濃淡をつけたり、ムラに掛ける方法

     釉薬に濃淡をつけるには、偶然性が必要な場合が多いですが、場合によっては面白い模様になったり窯変のように変化したりする場合があります。

    1. 釉薬を手やスポンジでこすり落とす方法
      釉薬を混ぜずに掛ける

       簡単にムラを出すには、釉薬を掛けた後で、完全に乾いてから手やスポンジ等で釉薬を拭き取っていくと、拭き取った部分が薄くなって濃淡をつけることが出来ます。ただし、拭き取りすぎて素地土が出てしまったり、拭き取るつもりでも釉薬が剥がれ落ちたりする危険性をともないます。
       また、どうしても人工的になりますので、不自然なムラになったりわざとらしい濃淡になる危険性があります。

       左写真は、赤土にワラ白釉を掛けて、手でグラデーションになるように釉薬を落としていったものです。下の方になるにしたがって多めに落としています。焼成は還元焼成です。
       釉薬が濃い部分は、白色になっていますが、薄くなるにしたがって、だんだんと素地の色が出てきて茶色になっています。ただし、手でこすり落としているので、どうしても均一にはなりません。このムラになった部分を味わいとしています。<


    2. 釉薬をあまり混ぜないで濃淡を出す方法 釉薬を混ぜずに掛ける

       作品に濃淡を出すには、釉薬をかける際に上澄みと沈殿とに濃度の差がある時に作品を静かに浅く沈めて、同じ方向に静かにひき上げます。そうすると最初に釉薬に入った部分は濃くなって後から入れた部分が薄くかかります。釉掛けするときには、極力釉薬を撹拌させないようにするのがコツです。
       ただし、この方法は焼成してみないと結果が分かりませんので、ほとんど偶然性に期待するしかない方法です。

    3. 霧吹きを使う方法

       これはよくある方法ですが、霧吹きで濃い部分と薄い部分とを作ります。型紙やマスキングテープなどでマスクして行うと、より一層効果が大きくなりますが、あまり極端につけると、かえって嫌みになります。
       スプレー掛けした後で、手やスポンジ等で表面をこすってならすと、霧吹き独特のブツブツした表面を押さえることができます。しかし、あまりやりすぎると釉薬を剥がすことになります。
       この方法は、釉薬をあまり混ぜない方法に比べると、かなり必然性をもって出来る方法です。

    4. 2度掛けにする方法

      釉薬を混ぜずに掛ける  これは二度掛けの方法ですが、一度釉掛けした後で、部分的にもう一度同じ釉薬を掛けます。すると、掛けた部分が濃くなるということです。もちろん、釉薬の濃さを変えても面白い効果が出ます。
       2度掛けするタイミングは、まだ濡れている内に掛ける方法と完全に乾いてからかける方法とがあります。まだ濡れている内に掛けると、それほどはっきりと差が出ないのが特徴です。この方法については、上記の「釉掛けした上に、口の部分だけ違う釉薬に浸ける方法」を参考にしてください。

    5. 薄くする部分を水で濡らす方法

      水に濡らしてから釉掛けする  これは、茶こしの部分に釉掛けする場合の応用です。薄くしたい部分を刷毛で水を塗るかまたは直接水に浸けてから、水に濡れている状態で釉薬を掛けます。そうすると、水を含んでいる部分の釉薬が薄くかかるという方法です。水に浸ける時間によって、かなりの濃淡を出すことが出来ますし、境目はかなり自然な仕上がりになります。ただし、極端な濃淡の差は出ません。もちろん、ほぼ狙いどおりに仕上がるという点も重要です。
       左写真は、赤土に端だけを水に浸けてから白マット釉をかけて還元焼成したものです。

    6. 釉薬をスポンジで置いていく方法

      スポンジで釉掛けする  釉薬をスポンジにつけて、作品の上を叩きながら釉掛けする方法もあります。これは、簡単に濃淡を出すことが出来ますし、グラデーションに掛けることも数種類の釉薬をぼかして出すことや釉薬の上から違う釉薬をスポンジでおくことも出来ます。工夫次第では面白い手法のひとつです。ただし、釉薬は直ぐに乾燥していくので、かなり難しい技法でもあります。また、スポンジに染み込んだ釉薬は使えなくなるので、かなり無駄の多い方法でもあります。
       左写真は、黒マットをスポンジで釉掛けした上に白マットをスポンジで釉掛けして還元焼成したものです。

  13. その他の手法

     ムラに掛けるというのとは少し違いますが、灰を振りかけて自然釉っぽく見せる方法があります。皿のように平らはものは、単純に灰を茶こしに入れて振りかければ出来ます。壺や鉢のようにそのまま振りかけると灰が滑り落ちそうなものについては、CMC溶液を霧吹きで吹きかけたり筆で塗って乾かない内に灰を振りかけるか、あるいは灰を水に溶いて、霧吹きで吹きかけます。霧吹きで吹きかける場合は、どうしても厚さが足りなくなりますがその分品よく均一に掛けることが出来ます。
    釉薬の上から灰を振りかける  釉薬をかけた上から振りかけた場合と直接素焼した素地土にふりか多々場合では、全く違った感じに仕上がります。釉薬の上から振りかけた場合は、下の釉薬と調和して流れやすく、しかも灰の鉄分が混ざって透明感のある釉薬に仕上がります
     灰を振りかける方法は、灰を振りかけると熔融温度が低下して、流れやすくなるという特性があります。これを利用して木灰釉とか藁灰釉をかけた上に灰を振りかけて、表面の釉薬を流すという手法があります。粗い土とか手跡、ロクロ目のついた作品だと濃淡が出来て面白い効果があります。また、ビードロ釉とか条痕釉のように流れやすい釉薬の上から灰を振りかけると更に流れやすくなりますし、釉薬に変化が出来ます。灰の中の鉄分が流れて模様を作り出しますので、面白い効果があります。
     下の釉薬が鉄釉などの鉄系統の場合は、灰を振った部分が白く乳濁して、朝鮮唐津のような効果が出ます。ただし、この場合は灰の量をたっぷりと振りかける必要があります。木灰釉のかわりに藁灰釉や柞灰釉、栗皮灰のように違った釉薬だと、全然違った雰囲気になります。


    素地の上から灰を振りかける  素地土の上にそのまま灰を振りかけると、焼締め風の作風になります。これは、赤土と白土では全く違った感じに仕上がります。
     備前焼のように、赤っぽい焼締め風にする場合は、赤土に灰を振りかけます。この時に、紙を丸く切って作品の上に置いて、その上から灰を振りかけて、その後紙を取り除くと、備前焼のぼた餅のようにその部分だけが模様となって残ります。この場合は、紙にガムテープ等で取っ手を付けておくと紙を取り外す作業がラクになります。振りかけた灰を手でこすったりすると、不自然な模様になる場合がありますので、紙はなるべく簡単に取れるようにしておくと便利です。
     童仙傍等で煎餅を作って、藁を敷いた上にこの煎餅を載せて、更に灰を振りかけて焼成すると、藁を置いた部分が赤くなって、より一層備前焼風にすることが出来ます。


    素地の上から灰を振りかける  焼成は、還元焼成の方がより焼締め風になります。これは、穴窯が還元焼成なので、それに近いからです。白土に振りかけると、還元焼成では緑色から茶色に変化します。薄い部分は透明から茶色で濃い部分が緑色になります。これは、灰に含まれる鉄分の影響によるものです。酸化焼成だと、おとなしい色合いになります。やはり鉄分の影響で黄色っぽい色合になります。
     ただし、使用する土の種類や使用する灰の種類によって、全く違った雰囲気になります。これは焼成しないと結果が分かりませんので、自分で何度も実験して気に入ったものを手に入れるしか方法はありません。もちろん、食器として使用しようと思うと、焼締らない土はニオイやカビの原因になるので不向きだと思います。使用方法を考慮すれば使えないことはありませんが、その分手間がかかるということになります。