初心者のための釉がけ講座(応用編PART2)

 ここでは、釉薬の重ね掛けの可能性について、書きたいと思います。使用する釉薬は、白マットと黒マットの2種類のみ、焼成は還元焼成のみで、どこまで重ね掛けや2度掛けの可能性があるのかを調べてみたいです。
方法は、下の手順に乗っ取って、釉掛けしていきます。出来たものは随時アップしていきます。

1.白マットを2度掛けする
2.素地の一部を水で濡らしてから、白マットを掛ける
3.白マットの掛けた上から黒マットを掛ける
4.黒マットの掛けた上から白マットを掛ける
5.黒マットを筆で塗った上から白マットを掛ける
6.白マットを霧吹きで吹きかける
7.白マットを掛けた上から黒マットを霧吹きで掛ける
8.黒マットを掛けた上から白マットを霧吹きで掛ける
9.黒マットの掛けた上から白マットをスポンジで置いていく
10.黒マットをスポンジで置いていって、更に上から白マットをスポンジで置いていく
11.黒マットを掛けた上に撥水剤で絵を描いて、白マットをかける
12.白マットを掛けたら、乾燥しない内に黒マットを上から落とす。
13.黒マットに、CP-H撥水剤を混ぜてイッチンで描いた上に白マットをかける
14.水性撥水剤を水で薄めて、素地面に塗り、その上から白マット釉を霧吹きで掛ける
15、マスキングテープをして黒マットを掛け、更にマスキングテープをして白マットをかけ、釉掛けした部分に撥水剤を塗って、トルコ青マットをかける

  1. 白マットを2度掛けする

     土は、赤土を使用しました。これは、白土だと白マットの濃さが分かりづらいと思ったからです。また、最初の白マット釉は薄掛けにしています。さらに分かりやすくするために、布目を付けてあります。上にかける釉薬は、柄杓で掛けました。
    白マット重ね掛け  左写真が焼成結果です。焼成は還元焼成でSK8です。結論としては、割と二度掛けの差が出たのではないでしょうか。下の釉薬だけでも雰囲気としては十分に良いと思います。白マット釉は、この程度の薄掛けも綺麗ですし、白土に濃くかけて半つや消しの状態で使っても面白いです。

  2. 素地の一部を水で濡らしてから、白マットを掛ける

    素地土を水で濡らしてから白マットを掛ける  これは、釉薬の濃さを部分的に変える方法の例です。これも白土では分かりづらいので赤土を使っています。
     水に浸ける時間が長いと差がはっきり出ますし、短いとほとんど差が出ません。また、水に浸けるので、細かい模様とかは出来ません。方法によっては出来るかもしれませんが・・・。ただ、勝手にグラデーションになるようです。
     この方法は、釉薬をあまり混ぜずに上澄みだけを掛けた場合とよく似ています。しかしが、上澄みの場合は混ぜ方や掛け方にかなり左右されますが、こちらの方が確実に濃淡が出来ます。

  3. 白マットの上から黒マットを掛ける

    白マットの上から黒マット  白マットを半分だけ掛け、上から黒マットを掛けたものが左写真の左半分がそうです。残りの半分は黒マットの上から白マットを掛けています。
     これは、はっきり言って失敗でした。ほとんど黒マットの色になっただけで、しかも白マットの上から掛けたために釉薬のメクレがでてしまいました。白くぽつぽつと見える部分が、釉薬のメクレです。このパターンはあまりお薦めではありません。

  4. 黒マットの上から白マットを掛ける

     上の写真の右半分が、この方法で釉掛けしたものです。
     これは、2の方法の全く逆のパターンですが、こちらは釉薬がめくれることもなく白と黒とかマダラ状に出て、面白い効果になっています。黒マットの上から白マットを掛けると、下の黒色がにじみ出るのに対し、逆の場合は上の釉薬の色しか出ないというのは、面白い結果でした。こればかりは、想像していたものとは全く違った結果になりました。全く、焼いてみないと分からないものです。

  5. 黒マットで線を描き、上から白マットを掛ける

    黒マットの線の上から白マット  これは、黒マットの上から白マットをかける方法とほとんど一緒です。全面に黒マットを掛けるかわりに、筆で線を描いて、その上から白マットを全面に掛けました。したがって、色の出方はほとんど一緒なのですが、白と黒の差が出ることにより、白マットの白が強調されています。この方法は、模様を描いたり字を書いたりしてもいけます。割と応用が出来る方法ではないでしょうか。

  6. 白マットを霧吹きで吹きかける

    白マットを霧吹きで吹きかける  この方法は、単純に白マットを霧吹きで吹きかけるだけの方法です。しかし、赤土に吹きかけることによって、グラデーションを出すことが出来ます。写真の作品は、ナンバン土に内側はドブ掛けで白マット掛けて、外側は上から下にかけてグラデーションになるようにL字型の霧吹きで白マットを掛けています。中間色だと茶色っぽくなって、遠くから見るとざらつきのある、かいらぎ釉のようにも見えます。
     この方法は、型紙を置くとか、マスキングテープで処理をするとか、複合的な技法を使っても、面白くなる方法ですし、土によって、かなり雰囲気の違ったものになります。

  7. 白マットを掛けた上から霧吹きで黒マットを吹きかける

    白マットの上から黒マットを霧吹き  この方法は、白マットを掛けた上から安全に黒マットを掛ける方法の一例です。白マットの上から黒マットをそのまま掛けた場合にはメクレた釉薬も、ここでは確実にかかっています。霧吹きのやり方次第では、グラデーションをつけたり、写真のように石のように見せたりすることができます。この方法も、応用範囲の広い方法です。

  8. 黒マットを掛けた上から霧吹きで白マットを吹きかける

    黒マットの上から白マットを霧吹き  この方法は、上記4とは全く逆のパターンです。同じように霧吹きで釉薬をかけても、白マットの場合は黒マットの中に白色が入り込んでしまっているために、色が薄く出ています。しかし、濃くかけると黒マットの上から白マットをかけたのと同じ色合になってしまうので、この辺が適当だと思います。この方法もグラデーションを出したり、部分的に白色を出したりできます。

  9. 黒マットを掛けた上からスポンジで白マットを置いていく

    黒マットの上から白マットをスポンジで置く  この方法は、黒マットの上から白マットを目立たせるにはもっとも効果的でした。やり方によっては、波のように見せたりも出来ますし、霧吹きと同時に使って粗いぼかしと柔らかいぼかしとのコンビネーションで使っても面白いと思います。

  10. 黒マットをスポンジで置いていって、更に上から白マットをスポンジで置いていく

    黒マットの上から白マットをスポンジで置く  これは、上記の方法を一歩進めた形です。両方の釉薬をスポンジで置いていくとどうなるかやって見ました。
     結果は、黒マットを掛けた上からスポンジで置いたものと、大差はありませんでした。しかし、変化はこちらの方が大きいようです。下釉の黒マット釉も上釉の白マット釉もm、双方がムラになるために、予測できない変化になるようです。面白さだけでいえば、こちらの方が一枚上手といった感じです。

  11. 黒マットを掛けた上に撥水剤で絵を描いて、白マットをかける

    黒マットを掛けた上に撥水剤で絵を描いて、白マットをかける  この方法は、黒マットの上から白マットを掛ける方法の応用編で、一部分だけを黒マットだけにする方法です。黒マットを掛けた上に、油性の撥水剤で絵を描き、白マットをかけるだけの方法です。水性の撥水剤を使用する場合は、上掛けの釉薬を上手く弾かない場合がありますので、必ず試験してから行いましょう。
     この方法は、釉薬の重ね掛けと掛け分けを組み合わせた方法といえます。撥水剤を塗った部分は掛け分け、そうでない部分は重ね掛けということになります

  12. 黒マットに、撥水剤(CP-H)を混ぜてイッチンで描いた上に白マットをかける

    黒マットに、撥水剤を混ぜて描いた上に白マットをかける  この方法は、完全に釉薬を掛け分ける方法です。同様の方法で、釉薬を部分掛けして、その釉薬の上から撥水剤を塗って、違う釉薬を掛けるという方法もありますが、撥水剤を塗るのは結構手間のかかる作業です。釉薬に撥水剤を混ぜれば簡単に行うことが出来ます。ただし、撥水剤の入った釉薬は決して重ね掛けが出来ませんので、新たに分けて作る必要があります。
     ここでは、CP-H撥水剤を使いました。これは、釉薬に1割程度混ぜると、上掛けの釉薬を綺麗に弾いてくれるので非常に作業が楽になります。通常の水性の撥水剤では、上手く撥水効果が出ませんので、注意が必要です。
     今回は、イッチンを使用しましたが、筆で塗る方法、柄杓で部分掛けする方法、マスキングテープとか陶画糊を使用する方法等、それぞれ雰囲気が違うし、応用でいくらでも可能性がありますので、いろいろと試してみるのも面白いかもしれません。
     イッチンを使ってみた結果、上掛けの釉薬が白マットのように粘性がある場合は、細かい模様を描くのは隙間に上掛けの釉薬が入らないので、難しいということが分かりました。あまり細かい絵は不向きですので、気をつける必要があります。

  13. 水性撥水剤を水で薄めて、素地面に塗り、その上から白マット釉を霧吹きで掛ける

    水性撥水剤を水で薄めて、素地面に塗り、その上から白マット釉を霧吹きで掛ける  この方法は、釉薬が梅花皮(かいらぎ)状になるのが特徴です。撥水剤にどの程度水を混ぜるかによって、水の弾きかたが違ってきますので、大きな粒から小さい粒まで出すことが出来ますが、何度か試験をする必要があります。

  14. 白マットを掛けたら、乾燥しない内に黒マットを上から落とす。

    白マットの上から黒マットを落とす  この方法は、墨流しと同じ方法です。白マット釉をかけて、それが乾燥する前に黒マット釉をスポイトで落として、よく振ると、墨を流したような表面になるという方法です。
     この方法は、とにかく白マット釉が乾く前に黒マット釉を落とさなければいけませんので、ゆっくりとしていると直ぐにダメになってしまいます。白マット釉を乾燥しにくくするのが一番てっとり早いので、作品を水に浸けて水分を含ませてから白マット釉を掛けます。そうすると、素地に水分を含んでいる分だけ乾燥が遅くなりますので、その間に黒マットを落としてよく振って墨絵風にしていきます。

  15. マスキングテープをして黒マットを掛け、更にマスキングテープをして白マットをかけ、釉掛けした部分に撥水剤を塗って、トルコ青マットをかける

    マスキングテープをして黒マットを掛け、更に白マットをかけ、トルコ青マットをかける  この方法が、多分一番手間のかかった方法だと思います。もちろん、撥水剤入りの釉薬を使えば、もっと簡単に出来るのですが、釉薬用の撥水剤が試験までに間に合わなかったので、手間のかかる方法になってしまいました。
     この方法では、釉薬の重なった部分と、そうでない部分を組み合わせることによって、4種類の色を出しています。手間のかかった分、面白い釉掛けの方法と言えます。