タタラ造りについて
1.型を使わないで作る方法タタラ造りにも色々と方法があるが、ここでは1枚の皿を反らずに造る方法を紹介する。大量に造る方法は陶芸書に多々紹介されているので省略することにする。
タタラ造りに必要なことは、粘土をよく締めるということと均一な硬さにするということ、均一な厚さにすること、そして均一に乾燥させることである。この4点が十分であれば反ることも割れることも少なくなる筈である。
2.型を使った方法タタラ造り方法は、簡単に言うと粘土を練り、よく叩いておいてから伸ばし棒で伸ばしてタタラにする。ということである。タタラ板を何枚も重ねて一度にタタラを造る方法もあるが、この場合はどうしても締め方が不足しがちになるのと、一度に大量に造らない人にはかなり無駄な作業を行う必要があるので、1枚や2枚のタタラを造る場合には不向きである。むしろ、一枚づつ叩いて伸ばす方法が安全である。また、この方法だと反りや割れの確率が極めて低く造ることが出来る。
以下、順に作り方を紹介する。
a)粘土を練る。
タタラ造りのポイントのひとつである均一な硬さにするということは、粘土をよく練ることである。練り方は、菊練りでも良いし、自分勝手に練ってもよい。とにかく硬さが均一になれば良いのである。出来れば空気を入れない方が良いが、多少空気が入っていても、次のタタラにする動作の時にある程度の空気は逃がすことが出来るので、それほど神経質になって菊練りを意識することはない。とにかく、練って硬さを均一にするという作業は非常に重要な作業なので、手を惜しまずに行うことが大切である。
b)手で叩いて締める。
次に、よく叩いて土を締めることである。これは手で叩くのが一番である。高価なタタラ機を買ってタタラを造ってもよいが、手で行った方が確実だと思う。
叩き方は、中央から端に向かって叩けば丸く伸びてくれる。四角く作りたい場合には、意識的に四角く叩くことが必要である。どうしても丸くなるので、中央から角に向けて叩いていくという具合に、気を付けて叩く必要がある。
この叩く作業は非常に重要で、この作業を手抜きすると反りの原因になる。次の行程のタタラ板と棒を使って伸ばす作業のタタラ板の厚さよりも少し高い程度になるまで徹底的に叩いて平らにすることである。
c)土を伸ばす。
粘土の両側にタタラ板を置いて、伸ばし棒で伸ばしていく。これはうどんやそばを造るのと同じ要領である。最後の方は体重をかけて厚さが均一になるまで伸ばしきることが大切である。ここで厚さが違っていれば反りの原因につながる。伸ばしていく時に、下の板にくっつくことがあるので、下に布を敷いて伸ばすと安全である。布目を出す場合には、上下に布を置くとよい。
四角い板にする場合には、対角線に伸ばしていく。これもうどん、そばを造るのと同じ要領である。しかし、四角く作る場合には、どうしても角は丸くなるので、後で切って使うようになる。
d)表面をならす。
塗装用のヘラを使って表面を綺麗にならす。伸ばし棒で伸ばした後は、どうしても表面が波うっていたり、伸ばし棒の木目が付いていたりするので、表面を綺麗にならす必要がある。ならすときは、塗装用のプラスチックのヘラを使うとよい。安くて弾力があり、傷つきにくいからである。金属製のヘラを使用してもよいが金属製は硬いので傷が付きやすく、注意が必要である。
同様に裏面もならしてもよいが、布を敷いている場合にはほとんど必要はない。ただし、印を押す場合や裏表を逆にしたい場合には、表面を綺麗にしておいて、印を押し、ひっくり返してもう一度ならすこともある。布目を出したい場合には、この作業は行わない。
e)作りたい大きさに切る。
以上の作業でタタラ板が完成したので、今度は形を作る作業に入る。同じ大きさのものを造りたい場合には、新聞紙などで型紙を作って、これに合わせて切っていく。切るのは、タタラ板をあて板にして切ればよい。
ただし、切る際に力を入れて切る必要はない。余分な力を入れると真っ直ぐに切れなくなるし、粘土を変形させることもある。極力かるく切るのがコツである。
切る道具は、針でもいいし、ヤリカンナでもよいが、針だとどうしても切り口がささくれ立つのと直角に切りづらいこと、下に布を敷いている場合布まで切ってしまうので、出来ればヤリカンナの方が良い。
f)形を作る。
切ったら、縁を持ち上げていく。持ち上げるのは、長い面から持ち上げると作業がしやすくなる。ただ単に持ち上げるだけだと落ちてしまうので、持ち上げて縁をすぼめるようにする。そうすると、四角が高くなるのを防ぐと同時にまくらをしなくても縁が下がらなくなる。
持ち上げる時の注意点は、底と横の境目を薄くしないことである。初心者がよくやる失敗は、折ってしまってその部分が薄くなって割れたりヒビが入ったりすることである。持ち上げる時は、そっと持ち上げて指で軽く押しながら角度を付けていくことである。
この時に、下に石膏ボードを敷いておくと反りにくくなる。石膏ボードが裏面の水分を取ってくれるからである。 全て持ち上がったら、粘土を丸めてまくらにし、持ち上げた箇所に何個が置いてもよいが、先に書いたように縁をすぼめておくと、縁が落ちてこないのであえて置く必要もない。ただし、大きいものの場合には重くなる分落ちることもあるので、まくらを置く場合が出てくることもある。
g)なめし皮で仕上げを行う。
最後に仕上げを行う。なめし革を使い、力を入れずに縁をならしていく。力を入れてならすと、形が変形するし縁が薄くなって切れやすくなる。また、なめし革は硬くしぼって使うことである。縁だけを水で柔らかくすると、切れたり反ったりする原因になるのである。
なめし皮を使う時に、角を四角く残す場合と丸くする場合がある。四角くする場合には、角の部分になめし皮を当てて角が丸くならないようにならしていく。角が2面あるので、両方同じ作業を行うことになる。逆に丸くする場合には角を取るように使えば丸くすることが出来る。
h)完成写真
織部釉で葉型に筆塗りした上に透明釉を掛けて酸化焼成
温度1250度
次に型を使った方法を紹介する。型は石膏で作るが粘土を使えば自分で簡単に作ることが出来るので、面倒がらずに作るとよい。型を使ったメリットは、同じ形のものが大量に作れる点である。同じ大きさのものが出来るので、収納する場合に重ねて置く事が出来るので、後々非常に便利である。作ったのはいいが置く場所がなくなってしまったということがよくあるので、大変に便利である。
次に型を使った場合の作り方を紹介するが、a)からd)までの行程は、型を使わない場合と全く同じなので省略して、e)から始める。
e)型に載せる。
型の上に、静かに載せていく。この時、どちらか片方を支点にして載せると、やりやすい。型はロクロの上に載せて使うと便利であるが、型がロクロよりも小さい場合には、何か台を載せて、その上に型を載せるとよい。
一度型の上に載せたら、あまり動かさない方がよい。どうしても型の跡がつくので、出来上がりが汚くなることもあるし、変形することもある。
f)押さえていく。
型の上に載せて両方の手でよく締めながらシワにならないように押さえていく。浅い皿のようなものの場合だと比較的シワが出来にくいが、深い鉢のような形状のものだと気を付けなければシワになったりダーツが出来たりするので、気を付けなければいけない。
また、厚さを均等にすることも必要である。どうしてもシワになった部分の厚さが厚くなってしまうので、これにも注意が必要である。
十分に押さえたら、仕上げになめし革で表面をならしていく。なめし革は出来るだけ水分を絞って、必要以上に水分を与えないようにするのがポイントである。型に当たった面は型の石膏によってどんどんと水分を取られている状態なので、片側だけ水分を与えておくと、反りや割れの原因になるからである。なめし革で、ならしながら、押さえて締め付ける作業も必要となる。しっかりと締めていけば割れにくくなる。
g)余分な土を切り取る。
ひっくり返して、ヤリカンナで余分な土を切り取る。このときに弓を使って切る方法もあるが、初心者の場合には結構難しくて、型を削ってしまったり傷つけてしまうこともあるので、切る場合にはひっくり返して目で見ながら切る方が安全である。また、弓を使う必要は全くなく、ヤリカンナや針で切ってもよい。自分で切りやすいもので切ればよいのである。ただし、ヤリカンナで切る場合には鋸のように上下に揺すりながら切るのはダメである。必ず滑らせて切るようにする。また、切る場合は、型と水平に切るのではなくて、少し斜めにして型の上を滑らすように切っていく。型を支点にすることにより、スムースに切れるようになる。
g)仕上げを行う。
最後に仕上げを行う。なめし革を使い、力を入れずに縁をならしていく。力を入れてならすと、形が変形するのと縁が薄くなって切れやすくなる。また、なめし革は硬くしぼって使うことである。縁だけを水で柔らかくすると、切れたり反ったりする原因になるのである。