すり鉢の作り方

 ここでは、実用的な食器ということで、すり鉢の作り方を紹介します。すり鉢の作り方も色々とありますが、ここでは私の作る方法を紹介いたします。
 すり鉢の工程としては、1.すり鉢の鉢を作る。2.注ぎ口を作る。3.筋目を入れる。4.釉薬を掛ける・・・に分類されます。

Ⅰ すり鉢の鉢を作る。

   すり鉢を作る場合は、まず鉢を作ります。鉢を作る場合の注意点としては、あまり薄く作らないこと。高台を広めに作ること。口縁を内側にすぼめること。等です。
 あまり薄く作らないというのは、焼成後にすりこぎで押しつけたり、叩いたりしますので、あまり薄く作ると割れる恐れがあります。ある程度の肉厚が必要となります。高台を大きく作るというのは、安定性を持たせるためです。口縁を内側にすぼめるというのは、擦っている時にゴマ等が外に飛び出すのを防ぐためです。市販のすり鉢は内側にすぼまっていませんが、これは型作りで作るためにすぼめるということが出来ないためです。昔の手作りのすり鉢はすぼまった形をしています。

1.ロクロに土を置く。
 まず、すり鉢用の鉢を作ります。私の場合は大きめの鉢の場合は1.1kg、小さめの鉢は900グラムで作ります。食卓にドレッシング入れとして出すくらいの小さめの大きさだと、700グラム程度でも十分です。この写真の場合は900グラムの大きさの鉢を作る量です。

2.ロクロで真っ直ぐに引き上げる。
 とりあえず筒の状態で真っ直ぐに挽き上げます。厚さは、すりこぎで摺る、叩く等の作業を行うということを考えて厚めに作った方が良いと思います。外に広げるので、口の部分はもう少し厚めに作ります。

3.縁を広げる。
 すり鉢の形に広げます。使いやすい形にする場合は、富士山をひっくり返したようなすり鉢状にした方がいいと思いますが、ここでは食卓に出すということも考慮して丸みを帯びた形にしています。まあ、形については、好みの形にして問題無いと思います。

4.内側を綺麗にならす。
 仕上げゴテで内側を綺麗にならします。内側は後で筋目を入れますので、出来るだけ凹凸のないように仕上げておきます。ここで表面がでこぼこしていたら、筋目を付けた段階でもでこぼこしてしまい、使い勝手の悪いものになってしまいます。また、内側には釉薬をかけないので、表面をしっかりと押さえておく必要があります。
5.ここで使用している仕上げコテ。
 ここで使っている仕上げゴテは、軟性プラスチック製の料理の後始末用ヘラです。これは、表面を綺麗にするにはなかなか重宝しています。近所のスーパーに売っていました。ただし、木ゴテや金属コテのように締めるという作業は出来ません。あくまでも表面を滑らかにする時に使用します。

6.内側にすぼめる
 内側が綺麗になったら、口の部分を内側に少し折り曲げて鉢の完成です。内側に折り曲げるというのは、ゴマなどを摺った時に飛びづらくするためと、注ぎ口を作る時に注ぎやすくするためです。
 上にも書きましたが、本来の手作りのすり鉢というのは口がすぼまっていました。最近は、機械作りで大量に作るために、口がすぼまったすり鉢というのは少なくなってきました。使い勝手と見栄えを考えるのであれば、やはりこのような形の方が温かみがあると思います。
 ここまで出来たら、少しだけ乾燥させます。


Ⅱ 注ぎ口を作る

   鉢の形が出来たら、ある程度乾燥させた後、注ぎ口を付けます。注ぎ口を付けるタイミングは、まだ柔らかい状態の時に行いますが、柔らかすぎても作りづらいので、目安としてはロクロ成形後30~60分程度後です。

注ぎ口の両側に指を置く。
 いよいよ注ぎ口を付けます。最初に、注ぎ口の大きさに合わせて外側の口縁に左手(もしくは右手)で2本指をおきます。写真では、口が出来ていますが、本当は、まだ出来ていません。これは、分かりやすくするために、完成したものに手をおいたものです。
 この手の幅によって、注ぎ口の大きさが決まります。小さい注ぎ口にする場合は手の間隔を小さくします。逆に大きい注ぎ口にしたい場合は手の間隔を広げます。

2.土を倒していく。(2)
 今度は、右手で内側に廻っている土を真っ直ぐに起こしていきます。更に、この土を反対側に開いていきます。これで片口の出来上がりです。起こすときや開く時は、一気に引っ張らないで、調子を取りながら少しずつ動かしていきます。柔らかい状態なので、割れたりすることはありませんが、無理に曲げようとすると、土が切れたりちぎれたりすることがありますので、注意しましょう。
 ここで、外側の手は口の両側が開かないようにするための押さえの役目をします。外側の手の支えがないと、だらっとした口になってしまい、注ぐ時に注ぎ口の横の部分から漏れてしまう危険性があります。

3.垂れにくい注ぎ口にするには。
 ちなみに垂れない口作りは、口の先端部分が水平よりも下に向くまで曲げることです。ここまで曲げると、使いやすい注ぎ口になります。ただ見た目は多少悪くなりますので、見た目を取るか使い勝手を取るかの選択になります。昔のすり鉢の注ぎ口は、ほんの少し凹みを付けた程度のものが多いです。


Ⅲ 筋目を入れる。

   注ぎ口が出来たら、今度はすり鉢のための筋目を入れていきます。私は自作の特殊な道具を使っています。これは市販の道具ではなかなかピッタリとするものがないためです。したがって、出来れば自作した方がいいと思います。自作が面倒な人は、ステンレスの道具がスクレーバーという名称で市販されていますのでそれを使います。ただし、これは筋目が細かすぎるためにあまり実用的ではないと思います。
 筋目を付けるタイミングは、削りの前でまだ少し柔らかい時点で行います。硬くなりすぎると筋目が粗くなりますし、柔らかすぎると変形する恐れがあります。

1.内側から一本づつ筋目を入れる
 さて、これから筋目のギザギザを入れていきます。少し乾燥させて、触っても変形しにくくなったら、ギザギザを入れていきましょう。最初に内側の中心から外に向かってギザギザをつけます。最初の中心部分は筋目の道具を置くときに左側はしっかり刃を押さえて、右側は浮かせるように入れます。外側に引いてくる時にだんだんと刃を当てる面積を大きくしていって、最後には全体を当てて広くギザギザを入れます。これは、写真を見れば分かると思います。

2.筋目を付ける道具です。  筋目のギザギザをつける道具は、市販品でスクレーバーという道具がありますが、私は自分で作っています。ここでは使わなくなったクレジットカードや会員カードを使ってギザギザを作っています。適当な丸みに万能ハサミで切って、更にノコギリのような歯をハサミで付けます。実際のノコギリの刃よりも少し大きめの方が使い勝手がいいと思います。
 ギザギザは、マジックインキで下書きをして、この下書きに沿ってハサミで切っています。同じ方向ばかりを切って、次に反対から切ると簡単にギザギザを作ることができます。

3.最初の筋目の隣に筋目を入れる。
 次に、最初に入れたギザギザの右となりに全く同じ要領でギザギザを入れます。この時に、筋のギザギザがなるべく重ならないように筋目を入れていきましょう。重なると、見た目も悪いし使い勝手も悪くなります。
 この要領で一周ギザギザをつけていきます。ロクロを使って入れると楽に入れることが出来ます。

4.全面に筋目を入れる。
 全面にギザギザを入れ終ったら完成です。中心からギザギザを入れていくと、どうしても中心の部分にギザギザが集中して、潰れてしまうことがありますので、中心部分は一部分だけを入れるようにしましょう。少し浮かすことにより潰れを少なくすることができます。


Ⅳ 削りを行う。

   筋目まで出来たら、削りの硬さまで乾燥させて高台の削りを行います。

1.ロクロに置く。
 半乾きの状態になったら、削りを行います。削りは、普通に削ればいいのでここでは、簡単に書いておきます。
 とりあえず、ロクロの中心に鉢を伏せておきます。

2.削りを行う。
 最初に、外側を削って、次に内側を削り取ります。削りの方法はいままで行ってきたとおりの方法で行います。したがって削り方については、別に何も書くことがありません。
 ただし、ここで注意する点は、高台はなるべく大きめに作るということです。これは、すり鉢を使う時にかなりの力がかかりますので、高台は大きくて安定した方が使い勝手が良いためです。小さい高台だと、見かけはいいのですが、傾いたり、ひっくり返ったりする可能性があって危険です。


Ⅴ 釉掛けを行う

   さて、いよいよ最後の工程の釉薬掛けです。
 ロクロ講座なので、本来は釉掛けの工程は省略するのですが、すり鉢の場合は少し特殊な釉掛けになりますので、簡単に説明しておきます。  釉薬は、内側の筋目の部分には掛けません。ここに釉薬を掛けてしまうと目詰まりして使えなくなるからです。

1.撥水剤を塗る
 素焼が終わったら、釉薬をかけない部分に撥水剤を塗ります。釉薬を内側をほとんど掛けないようにする場合は、中の空気を出さないように静かに沈めればいいのですが、この作品のように途中まで釉薬を掛ける中途半端な場合は、撥水剤でないと都合が悪いことになってしまいますので、撥水剤を使うのが簡単だと思います。


2.釉薬をかける
 撥水剤を塗ったら、釉掛けします。ここでは、撥水剤を内側全てに塗っていませんので、ある程度内側に空気を残したままの状態で静かに真っ直ぐに沈めています。撥水剤を内側全てに塗っている場合は、どうやって掛けてもかまいません。撥水剤も、凹凸の部分に塗るには結構な量を使わなければいけないので、ここでは少しだけ節約しています・・・。

3.呉須で麦藁手模様を描く
 ここで、ちょっと特殊な方法で絵を描いています。通常は呉須は素焼の素地面に描くのですが、ここでは釉薬が不透光性の藁灰釉を使用しているために、素地に描いたのでは線が消えてしまいます。呉須の線をはっきり出すために釉薬をかけた上から呉須で絵を描いています。ちなみに、この模様は麦藁手で、線の本数が少ないものを麦藁手、多いものを十草(とくさ)手と言います。ただし、基準は曖昧ですので、自分で麦藁手と言えば麦藁手、十草手と言えば十草手です。(笑)

4.呉須の描き方。
 この藁灰釉は天然藁灰が入っているために、大変柔らかい釉薬になっています。したがって、力を入れて線を描くと釉薬を削り取ってしまいますので、柔らかい筆で軽く描いています。釉薬の上から絵を描くと、描いた線に勢いが出ませんのが、ムラなく描くことが出来ますので太い線には重宝です。上の写真が描いているところ、下の写真が一応完成したものです。

5.焼き上がり写真



 還元焼成で1250度で焼成したら完成です。これが完成写真とすり鉢の内部のアップです。