初心者のための釉がけ講座(下絵付編)

 初心者のための釉掛け講座に、みなさまからの要望が高かった下絵付の講座を入れようと思ったのですが、書いていると、これが結構な枚数になりましたので、別途独立して掲載することにしました。
 下絵付とは、素焼または生素地の上に呉須や鉄または、下絵具や顔料と呼ばれる酸化金属が主成分の絵具等で絵付を施し、その上に釉薬を掛けて本焼したものです。本来は釉薬の下に絵があるために下絵付と呼ばれています。ただし、釉薬の上に描いたり釉薬で絵付をしたものも同じように下絵付と呼ぶ場合もありますので、拡大解釈として本焼のように高火度で絵付をする下絵付と言ってもいいかもしれません。
 これに対して、本焼後に釉薬の上に絵付をすることを上絵付と言います。この場合は、釉薬が熔けないような温度(800度前後)で焼き付ける必要があるために、上絵付の顔料には、鉛やフリット、硼酸等が含まれています。
 同じように本焼後に絵付する場合でも、下絵具で絵付を行い、更にもう一度本焼をしたものは、釉薬が熔けて、絵具が釉薬の中に入り込みますので、下絵付の分類に入ります。

  1. 下絵具について

     下絵具は主に酸化用と還元用とに分類されます。または陶器用(半磁器用)と磁器用とも呼ばれています。大まかに分けると、酸化用の下絵具は種類が豊富であるのに対し、還元用の下絵具は種類が少ないようです。基本的には、酸化用の下絵具の場合は、還元焼成すると変色したり色が出なかったりするものがありますが、還元用の下絵具はほとんどのものが酸化焼成でも問題なく発色します。
     下絵具は、酸化金属がベースとなっていますので、通常粉末の状態で売られています。しかし、使用する際には液体にしなければいけないので、作るのが面倒な人は、チューブ絵具や液体顔料も市販されています。種類は若干少なくなりますが、普通の絵具と同じように比較的簡単に使用出来るので、横着な人やあまり下絵具を使用しない人には便利なものです。
     下絵具と呼ばれるものには、大まかに分類して呉須や鉄のように酸化金属をそのまま混ぜたり単独で使用するものとスピネル顔料等のように下絵具用に作られた顔料とに分かれます。特徴は、下絵具用顔料は焼成後の色とほぼ一緒なのと混色がある程度出来るのに対して、呉須や鉄のように酸化金属をそのまま使ったものは焼成前の色と焼成後の色が全く違ってきます。酸化金属では、呉須や鉄の他の酸化金属として、酸化銅や酸化クロム、酸化マンガン、酸化ニッケル等を単独または混ぜ合わせて使用することがあります。

    1. 鉄と呉須

       日本では、昔から定番の下絵具と言えば鉄と呉須があります。自然界にそのままの状態で採れる顔料ということもありますし、他のほとんどの下絵具顔料が明治以降に出来たので、仕方のないことです。特に、緑色や黄色、ひわ色、トルコ青等の中間色は戦後になってから、赤やオレンジ等については、ごく最近出来たばかりなのです。ただし呉須や鉄は、他の下絵具と比べると、両方ともメクレや釉はげをあまり気にしなくて描けるのが特徴です。
       したがって両方とも、糊剤を入れなくても下絵として使用出来ます。特に呉須の場合は濃淡が出来やすく、非常に薄い色をダミと言って特殊なだみ筆で描いたりします。これに対し、鉄絵は、薄くなると色が出にくくなります。


      1.  鉄は、一般的には紅柄(べんがら:弁柄とも書きます)を使用します。最近では鉄絵というと紅柄と言われるくらいになっています。紅柄は流化鉄を焼いてから精製して作ったもので95%以上が酸化第二鉄です。また、紅柄はメーカーの違いや精製の違いで結構種類がありますが、下絵で使用する場合は、高価な弁柄は必要ないと思います。
         紅柄は、通常はいわゆる紅柄色といって赤紫色をしていますが、黄色や青の紅柄もあります。黄色や青色は染色などではよく使用されるようですが、焼成してしまうと全く同じ紅柄の色合になります。
         紅柄は精製されていますので、焼成すると色ムラがあまり出ない、割と均等な色合に仕上がります。ただし、還元焼成の場合は、釉ムラや鉄の濃さによってかなり色が変化しますので、弁柄を使っても鬼板等を使っても、さほど色の違いが分からなくなります。

         紅柄よりも若干鉄分の量が少ないですが、酸化鉄(酸化第一鉄)も鉄絵として使います。天然の蓚酸第一鉄を焼いたもので、茶褐色から黒色をしていて、鉄絵として使用すると弁柄よりも野趣的な色合になります。素朴な感じの絵に仕上げたい時には、酸化鉄や次に紹介する鬼板を使います。

         次に鉄分の多いのが鬼板です。自然に出来た褐鉄鉱の一種で、鉄分が40%とマンガンやアルミナ等が含まれています。今でも天然産が採れますので、購入時期とか場所によってもかなり色あいが違ってきます。
         鬼板は生の生鬼板と焼鬼板とに分かれます。生の鬼板は非常に固いために乳鉢等で摺ってもなかなか摺れません。これに対して、焼鬼板は生の鬼板をか焼しているために軟らかくなっていますので、乳鉢で微粉末に摺ることが出来ます。通常は、赤褐色から赤紫色の焼鬼板の状態で市販されています。鬼板は、自然鉱物ですので紅柄のようには精製されていません。摺り込むと微粒子になるために色がよくなる可能性があります。ただし、鉄絵にするには鉄分が若干不足します。釉薬が濃いと色が消えることもあります。志野釉の下絵に使うのは弁柄だと鉄分が多すぎるので、この鬼板を使用します。

         更に鉄分が少ないのが黄土です。その名のとおり黄色い色をしています。最近は日本産よりも少し鉄分が多い中国黄土が出回るようになりました。しかし、鉄分は10%以下ですので、そのまま絵付に使用しても、色ははっきりと出ません。紅柄や酸化鉄を足して鉄分を増す必要があります。黄土も天然素材ですので、摺れば発色がよくなると思います。ただし、黄土自体が非常に微粉末ですので、よほど摺る必要があります。

         鬼板や黄土を混ぜたものは紅柄単味よりも各種金属や土類が含まれますので、色にムラが出て、野趣的な味わいの色になるようです。例えると、食卓塩と天然塩の違いのようなものです。鬼板を使用する場合には、通常は鬼板と紅柄の量を5:5の割合で使用します。後は好みの問題になりますので、自分の気に入った割合を探せば良いと思います。

         その他の鉄絵材料としては、芦沼土、益子赤粉、来待石、加茂川石、水打粘土等の含鉄土類や赤粘土(信楽水簸赤等)は、そのままよく摺って使用できます。鉄分が不足していると思う場合には紅柄等で補充します。これらの土石類はアルミナ分が豊富に入っていますので、紅柄よりも素地への密着度がよくなります。
         黒浜は、四三酸化鉄と言って、砂鉄のことです。鉄分は非常に多いのですが、非常に粒子が固いために、あまり鉄絵としては使用されません。粒子が固いのを利用して、結晶釉の核として使用したりします。珪酸鉄は鉄分が少ないので、あまり鉄絵としては利用しません。

         鉄を使用する場合には、紅柄等を乳鉢に入れてまず水を入れずにダマが無くなるまでよく摺って、更に少しずつ水を入れていって、最後に糊剤を入れて使用します。詳しくは下絵具の項で説明します。糊剤を混ぜると筆が滑りやすくなるので、描きやすくなります。
         鉄は、下絵具顔料のように濃く描いたら剥離するということが少ないのが特徴です。ただし、絵付の時は濃いと思っても焼き上がると色が飛んで、少し薄めの色になりますので、その辺を考慮して描く必要があります。

         鉄の発色は、通常酸化だと褐色から黒色になります。鬼板のように鉄分が少ない場合には褐色になります。織部の鉄絵の部分は、黒くしない場合には鬼板を使用します。還元の場合は緑っぽい灰色から黒茶色になります。しかし、呉須のダミのように薄くすると薄い色になるのではなくて、色が消えてしまいます。あまり濃淡の出るものではありません。
         酸化の場合は、特に濃淡が出にくくなります。濃さが薄いと褐色、濃いと黒色に近い色になります。逆に還元焼成の場合は鉄分の濃さや釉薬の濃さによってかなり色にムラが出てしまいます。緑っぽい色から、黒色、茶色まで中間色を含めて様々に発色をします。更に釉薬が濃い場合や鉄分が薄い場合には、釉薬に鉄分を取られてしまうために、発色の色がグレーになることもあります。逆に鉄絵が濃い場合には、釉上に鉄分が析出して結晶化したり、銀化したりすることもあります。乳濁釉等の不透明な釉薬の場合や青磁釉のように厚掛けの釉薬には、特に顕著に表われます。青磁釉に濃い鉄絵下絵としてを施して釉上に表われさせたものがいわゆる飛び青磁と呼ばれるものです。

         また、鉄絵は上に掛ける釉薬の種類や厚さ、素地土の鉄分の量によっても、かなり色が影響されます。釉薬が鉄釉系統のものや素地土が赤土の場合には、釉薬や素地の鉄分との相乗効果によって、全く違った色になることもあります。例えば、鉄絵を描いた上に鉄釉を掛けると、還元焼成だと絵を描いた部分だけが鉄砂釉のように結晶化することがあります。逆に酸化焼成の場合には、絵の部分だけが茶色になったりします。それぞれ実験して、どのように変化するかを確認してから行ってください。

      2. 呉須

         呉須(ごす:呉州とも書きます)は、通常は粉末状で市販されていますのでこれを使用します。市販されている呉須の種類は色合の違いによってかなりの種類があります。主なものでは、通常使われる種類で、還元だと青く、酸化だと暗い紺色に発色する旧呉須、古代呉須、伊万里呉須等、酸化でも還元でも青く発色する海碧呉須、新呉須、焼抜呉須等、酸化でも還元でも紺色に発色する京呉須、瑠璃呉須等、緑色に発色する青呉須、緑呉須、鶸呉須等、茶色に発色する茶呉須、唐呉須、鉄呉須等、酸化でも還元でも黒色に発色する黒呉須等があります。ただし、各名称については基準があるわけではなく、各メーカーが名称を勝手に付けていますので、同じ名称の呉須だからと言ってもメーカーが違うと全く色が違う場合もあります。
         なお、各種呉須は、磁器用下絵具または還元用下絵具として売られていますので、下絵具の項も参照にしてください。

         一般的に使用する呉須は、旧呉須か古代呉須、伊万里呉須等を使用します。昔から使用している天然呉須がこの色ですので、未だにこの色を標準的な呉須として使用しています。ただし、これらの呉須は酸化焼成の場合は呉須の中の鉄分の影響で、色が黒っぽくなってしまいます。もし酸化焼成でも青く発色させたい場合は、海碧呉須とか新呉須等のコバルト分の多いものを使用します。いずれにしても、呉須の種類は多量にありますので、カタログを見たり実際に焼成しながら自分の欲しい色を決めれば良いと思います。ただし、呉須は比較的高価なので、最初は少量で買う方が良いと思います。

         天然呉須は、マンガン鉱石に酸化コバルトや酸化鉄等が混ざったもので、黒色から青っぽい黒色をしています。日本では瀬戸、多治見近辺で岩呉須という天然呉須が採れていましたが、現在では瀬戸川の護岸工事等によって全く採れなくなりました。したがって、現在市販されている呉須は、ほぼ100%が合成呉須だと言えます。合成呉須は酸化コバルトと酸化アルミナをか焼した紺青と呼ぶスピネル顔料の下絵具に酸化マンガン、酸化鉄等を混ぜたものか、これらの材料を全て一緒にか焼して作られています。この時に混ぜる鉄分、マンガン分の分量その他アルミナ等の土類の添加物の量によって、呉須の色合が様々に違ってくる訳です。ただし、か焼しないで作られる呉須もあるようです。各メーカーによって様々な作られ方がされているようです。


         呉須の原料である酸化コバルト単体も黒色をしています。ただし、通常は酸化コバルト単味では使用しないで、酸化アルミナと一緒に焼いて色を呈色させた、いわゆるスピネル顔料(下絵具)の状態にしたものを使用します。海碧呉須や焼抜呉須、紺青という名称のものは、全て下絵具の状態にしたものです。この場合は青色をしています。また、青呉須(日本では昔は緑色のことを青色と言ったので、今でも緑色に発色する下絵具を青呉須と呼ぶことがあります。)や鶸呉須、茶呉須のように青色をしていない呉須は、呉須の名称は使っていますが、主成分である酸化コバルトは入っていないか、ごく少量だと思います。これらもまた、一度焼成して色を呈色させた下絵具として作られています。

         呉須を絵付が出来る状態にするのには、少々手間がかかります。もちろん、簡単に乳鉢で摺ってそのまま使っても問題はありません。
         作り方は、とりあえず粉末の呉須を乳鉢に入れて、水を加えずによく摺ります。この時に、時間をかけてダマがなくなるまでよく摺ります。現在の呉須は合成呉須ですので、かなり微粉末の状態で売られていますが、小麦粉にいきなり水を混ぜるとダマになるのと同じ原理で、よく摺らないとこのダマが残ってしまいます。また、呉須によっては摺り方の足りないものも市販されていますので、良く摺った方が発色もよくなります。ただし、摺る時間は半端ではありません。かなりの時間を要すると思いますので、暇な時に少しずつ摺るの良いと思います。
         乳鉢でよく摺ったら、少しずつ水または煮詰めた番茶を加えては摺るという動作を繰り返して徐々に薄めていきます。これも、一度に水分を加えるとダマが出来てしまいますので、少しずつダマが出来ないように入れては摺る作業を繰り返します。
         番茶を加えるのは、番茶に含まれるタンニンの影響で描きやすくなる、素地の密着がよくなる、あるいは呉須を変化させない、糊剤の代わりに使用する、呉須を腐らせてなめらかにする等、色々と言われています。また、番茶を加える時期は最初から摺る時に入れる人、とりあえず水で摺っておいて、使う時に番茶を入れて調整する人、番茶の変わりにCMC等の糊剤を入れる人、全く番茶は使わない人、と様々です。したがって、こうしなければいけないということは言えません。各自で自分なりの方法を見つけてください。ちなみに、私は呉須を水で摺って、使う時に番茶で薄めて使うようにと習いました。
         少し濃いめのドロドロの状態になったら、作る行程は終了です。乾燥させないようにしっかりと密閉して冷暗所に保存しておきます。釉薬等と同じで、寝かせた方が落ち着いて、描きやすくなるようです。ただし、乾燥してしまったら寝かせる効果がなくなってしまいますので、また最初からということになりますので、しっかりと密閉してください。また、粘土や釉薬と同じで寝かせる期間は寝かせたほどどろっとしてなめらかになります。

         この寝かせた呉須を絵付に使用する時には、濃い状態のものから使う分だけパレットや皿、乳鉢等に取り分けて、これに水または番茶を加えて所定の濃さに調整して使用します。番茶を使用して摺っている場合には水を入れます。水の場合は番茶または水を使用します。この時に、ほんの少量の微粉砕された柞灰や蛙目粘土を加えると釉薬とのなじみがよくなるので、釉薬が剥がれにくくなります。また、番茶を入れない場合には糊剤をほんの少々加えると筆の滑りがよくなります。ただし、どちらも多量に加えると呉須が描きづらくなりますので、気を付けましょう。特に糊剤は、入れすぎると粘りが出て呉須が濃くなりメクレや剥がれを起こしやすくなります。したがって、加える量は微量にしておきます。なお、呉須は滑りの良さが重要になりますので、通常は呉須の中には釉薬等は、少量であっても加えません。入れるとに筆の滑りが悪くなります。ただし、入れると釉薬自体は剥がれにくくなりますので、描きづらいことを犠牲にすれば入れても問題はありません。

         呉須は、黒色に近い色をしているので、描いている時は全く出来上がりの色は想像できません。これが焼成すると筆の勢いやなぞり描きした部分はくっきりと出てしまいますので、焼成後をイメージして、出来るだけ手早く描き込んでいきます。呉須の絵付は、かなり練習しなければ良い線が出せません。特に没骨法という筆全体を使って描く方法は、紙の上でかなり練習をする必要があります。

         同じ図柄を何枚も描いたり、複雑な図柄を描く場合には、竹紙と岩紫という道具を使用します。詳しい方法は省略しますが、簡単に書くと竹紙に図柄を鉛筆等で写し取り、ひっくり返して岩紫で図柄を描き、呉須で描く素地に貼り付け水の付いたスポンジで押し付けて岩紫を素地に写す方法です。岩紫で描いたものは2、3枚に写す事が出来ます。竹紙の替わりに薄い和紙を使っても可能です。図柄を写し取るだけの場合だと最近では、チャコペーパー、カーボン紙等を使用する方法も行われています。

         呉須で絵を描く場合には、かなり薄めてもコバルトの影響で発色します。逆にあまり濃すぎると釉薬のメクレや剥がれの原因になりますし、発色も黒っぽくなって、よくありません。描く前には、素焼の破片等に描いて、これを削ってみて呉須の厚さや濃さをしっかりと把握してから描くようにします。なお、呉須の原料のコバルトはかなり重い金属ですので、直ぐに沈澱してしまいます。描くときは、時々撹拌しながら沈澱させないように描くようにしましょう。撹拌しないで描くと、濃さに差が出てしまいます。描いている時には分かりませんが、焼成すると一目瞭然です。
         薄い状態でも発色するという利点を生かして、だみ筆という技法が出来るのも呉須の特徴です。これは、骨書きといって、最初に輪郭を描いた部分を防波堤の役割をさせて、内側に10倍から100倍に薄めた呉須をだみ筆という特殊な筆で塗っていく技法です。もちろん、だみ筆がなくても太い筆と薄い呉須を使えば、ある程度のダミの感じは出すことが出来ます。
         ちなみに、だみ筆は有田と瀬戸では使用方法が違っていて、有田のダミ筆は穂先を手で握って絞り出すように使いますが、瀬戸のだみ筆は穂先を上にして持ち、描く時に筆を下にして引力で落ちるのを利用して描きます。

         上級テクニックになると、呉須とダミ用の薄い呉須、それに水を使ってぼかしの技法も出来ます。筆の端に呉須をつけて、その他の部分にダミや水をつけて筆の幅一杯を使って描いていくと、呉須の付いている部分は濃くて、だんだんと薄くなっていくという技法です。逆に、ダミをしみ込ませた筆の穂先に水を付けてぼかす方法もあります。どちらにしても、かなりの熟練を要します。

      3. その他の酸化金属

         鉄や呉須以外の酸化金属で下絵具として一般的に使われるものに、酸化クロム、酸化マンガン、酸化銅等があります。

         酸化クロムは緑色の粉末で、普通にそのまま下絵具として使用すると緑色に発色します。非常に安定が良いのと酸化でも還元でも緑色に発色しますので、釉薬や練り込み顔料としても使用出来ます。
         酸化クロムと酸化コバルトを混ぜると酸化コバルトの量によって青緑色からピーコック、海碧色と変化していきます。酸化クロムよりも酸化コバルトの方が発色作用がはるかに強いので、コバルトを混ぜる量はほんの少しだけで十分です。酸化コバルトの代わりに呉須を利用しても使えます。ただし、呉須には鉄分とマンガン分が入っていますので、色自体は、多少変化します。
         酸化クロムと鉄を混ぜると、鉄の量によって赤茶からチョコレート色と変化します。コバルトの場合と違い、鉄の量はコバルトよりも多めになります。

         酸化マンガンは黒色の粉末で、通常はあまり下絵具としては利用されません。ただし使えないことはなく、単味だと酸化で灰色、還元だと褐色になります。その他の使い道としては、鉄にマンガンを少し混ぜると飴色になります。多く入れると褐色から赤茶色になります。
         その他、鉄6、マンガン3、クロム2、コバルト(呉須)1の割合で黒色顔料を作ることが出来ます。これは、透明釉に混ぜると黒釉になりますし、そのまま下絵具として絵付を行うこともできます。ただし、還元焼成の場合は釉薬が濃い場合には茶系統の色に変色する場合があります。還元焼成でも確実に漆黒にしたい場合には、黒呉須の方が安定しています。ただし、高価です。なお、酸化焼成の場合には、必ずしもクロムやマンガンを入れる必要はありません。呉須と鉄の調合だけでも黒く発色するようです。

         酸化ニッケルはうす緑色の粉末で、単独では下絵具としてほとんど利用されません。そのまま使うと酸化で茶色、還元では黒灰色になります。ただし、使用する釉薬との関係で様々に色調が変化します。したがって、下絵具としては使えない訳です。ただし、様々色調が変化するのを利用してスピネル顔料の材料としてよく使われています。

         酸化銅は黒色の粉末で、酸化焼成だと緑色、還元焼成だと赤く発色します。鉄に銅を混ぜると、還元焼成の時に鉄の周りが赤く発色することがあります。銅は揮発性なので、鉄の周りに揮発して赤くなる訳です。
         炭酸銅は緑青色の粉末で、酸化銅の代わりに銅分を取得しようとすると、酸化銅の1.6倍が必要となります。
         酸化銅は、下絵(釉裏紅)として赤の発色として使用する際には、通常辰砂釉等の釉薬の状態になったものを使用します。銅は他の金属と違い、揮発することによって赤色の発色をするために、辰砂釉として使用した方が安定が良いです。辰砂釉には、銅を安定して揮発させるために、酸化錫等の媒熔剤が入っていますので、比較的安定して赤色の発色が出せる訳です。しかし、銅単味でも色の安定さえ気にしなければ下絵付として可能です。逆に稚拙な感じを出したい場合には単味の方が面白いこともあります。ただし、この場合には必ず赤く発色するとは限りません。場合によっては黒く発色したり、色が出なかったり、緑色になったりと、思いも掛けない色に変化することがあります。
         なお、酸化焼成で緑色の発色をさせる場合には、織部釉を使用します。辰砂釉が銅分が1.5%程度しか入っていないのに対して、織部釉は銅分が4%ほど入っています。ただし、織部釉の場合は上に透明釉がかかったり、透明釉の上から織部釉で絵付する場合には、釉薬分だけ銅分が少なくなりますので、色が薄くなります。

      4. 釉薬で絵付けする

         本来は下絵付と呼べるかどうか分かりませんが、色釉薬を下絵具の代わりに使うこともあります。代表的なものが上記で説明した辰砂釉を使った釉裏紅です。
         下絵具を使った絵付の場合との違いは、釉薬で描くと剥がれたりメクレたりすることが少ないという点、下絵具で描くようには筆跡が出にくいという利点があります。逆に、欠点としては、筆の勢いというものは出にくくなり、下絵具よりも描きにくくなります。また、混色を起こす場合もあります。また、下絵具のようには色の種類がありません。
         釉薬には、長石分が入っているので、下絵具として使用するのは筆が滑らずに、ぼたっとした感じになってしまいます。糊剤や煮詰めたお茶を入れて、よく伸びるようにすればある程度は解消されますが、呉須のよう滑らかには描けません。また、釉薬の場合は薄く描くと色が出ない場合がありますので、厚く描かなくてはいけません。厚く描いても下絵具で描くように上の釉薬を弾いたり釉メクレが起きることは少なくなります。ただし、あまりにも厚く描いたり、上に掛ける釉薬との相性が悪い場合には釉メクレがおきます。このような時は、絵付した上に撥水剤を塗って絵の上には釉薬を掛けないようにする等の処置を行います。

         辰砂釉を釉裏紅で使用する場合は、通常の辰砂釉に酸化銅や炭酸銅を少し足して下絵具にします。通常の辰砂釉は銅分が1.5%くらいですが、釉裏紅として使用する場合は3%くらいにします。辰砂釉を少し乳鉢に取って、銅を補充してよく摺って、再び釉薬に戻し、よく混ぜれば良いと思います。その後、糊剤と番茶を入れて描く濃さにまで伸ばします。

         鉄釉も下絵具として使えます。下絵として使用する場合は、通常の下絵の鉄で描くよりも厚く描いても釉飛びがしないことが利点です。通常の鉄絵も、木灰や石灰等を入れると釉飛びが少なくなります。ただし、鉄釉で描く場合は釉薬の中の長石分のために描くにくく、描いた絵が焼成時点で流れやすくなりますので、細かい絵には不向きです。
         鉄釉は、鉄分の量の違いによっては、発色が違ってきますので、描き分けが出来ます。例えば、飴釉と天目釉の描き分け等が出来ます。

         織部釉は流れやすいので、下絵としては不向きですが、逆に流れを利用する方法もあります。また、織部釉を釉薬の上から利用するのと単味で利用して色に変化を出す方法とか、白化粧をした部分と赤土の部分とで色の変化を出す方法があります。後者は、鳴海織部で使われている方法です。

         その他の釉薬として、定番としては織部釉とか瑠璃釉、黄瀬戸釉、伊羅保釉、白釉、鉄赤釉があります。新しい釉薬では顔料の入った黒釉やピンク釉、クロム緑釉、紫釉、黄釉等があります。
         これらの釉薬を単味で絵付にしても、他種類を混合してもかまいませんし、絵付と釉掛けとに色釉を使う方法、下絵具との組み合わせ等可能性はいくらでもあると思います。

         釉薬で絵付をする場合には、釉掛けする前に描いても、釉掛けの上から描く方法もあります。いわゆる釉薬の重ね掛けの応用になります。ただし、釉薬の上から描く場合には、天然灰を使った釉薬や結着緑の弱い釉薬の上に描く場合には、剥がれたりする危険があります。なるべく避けた方が良いとおもいます。どうしても行いたい場合には釉薬固着剤等を使用したり、糊剤や釉薬強化剤を入れて使用します。また、釉薬の上から絵付をすると、下の釉薬と色釉が混色して、違った色になる場合や、筆の跡が出てしまったりすることがあります。
         流れやすい釉薬の上から絵付をすると絵が流れてしまうことがあります。逆に流れにくい釉薬の場合は絵付の部分が盛り上がったりすることもあります。また、釉薬の上から絵付する場合は、下の釉薬が水分を吸収するために、描きづらくなります。
         釉薬を使用している関係上、釉薬同士の重ね塗りをすると、混色します。例えば透明釉の上から織部釉を掛けるとうす黄緑色に、逆の場合は薄緑色になることがあります。そしかし、どういう色や変化になるかは釉薬同士の組み合わせとか厚さによって様々に変化するので、ここで簡単に書くことは出来ません。各自で実験してください。また、釉薬の相性が悪いとメクレや剥がれが起きることもありますので、使用する場合には注意と試験が必要です。安全に確実にいこうと思えば、重ね塗りは避けた方が良いかもしれません。

         広い範囲を同じ色にする場合には、色釉薬を使った方が下絵具で塗りつぶすよりもムラ無く綺麗に発色せせることが出来ます。この場合は、マスキングテープや陶画糊、撥水剤等を使用して、流し掛けをしたり、スプレー掛け、釉薬の中に浸けたりして、釉薬が均一に掛かるようにします。
         なお、釉薬を下絵として使用する場合に、上に釉薬を掛けると色が薄くなったり混色したりしますので、上から釉薬をかけたく無い場合があります。こういう場合には、下絵にする釉薬にCP-H撥水剤を1割程度入れて描きます。そうすると、上に掛ける釉薬を弾くために、色釉の色をそのまま出すことが出来ます。CP-H撥水剤がない場合は、少々手間ですが、絵付をした釉薬の上から撥水剤を塗ります。その後釉掛けすると、撥水剤の部分の釉薬はかからなくなります。

      5. 色化粧土で絵付けする

         これは、もう下絵付とは呼べないかもしれませんが、釉薬で絵付する方法と同種類の方法ですので、載せておきます。
         色化粧土は、白化粧土に鉄や呉須、あるいは練り込み用顔料を混ぜて作ります。呉須やコバルトの場合は、それほど入れなくても発色しますが、鉄の場合は化粧土と5:5くらいの割合くらいまで入れる場合もあります。量については好みや試験を行ってから入れてください。
         練り込み用顔料の場合は、土に混ぜるのと同じくらいの割合です。基本的には1割 以下ということになります。通常は5%程度です。ただし、発色の良い色と悪い色がありますので、それぞれの色によって加減して使ってください。コバルトを使った青系統のものとクロムを使った緑系統のものは発色がよく、黄色やピンクは発色が悪いので、顔料の量を多くする必要があります。
         色化粧土は、基本的には通常の化粧土と同じように生の状態で使用します。ただし、薄目にすると素焼素地にも使えます。この場合は、化粧土が濃いと釉掛けの時や焼成時に剥がれる危険性があります。化粧土の範囲が狭いと比較的素焼でも安全に使用することは出来ます。もう一度素焼を行うと確実に釉掛けすることが出来ます。
         色化粧土が釉薬や絵具と違う点は、混色しないという点です。化粧土にはほとんど透光性がないために、上に塗った化粧土の色が出てきます。ただし、かなり薄目にした場合には、下の色が出ることもあります。しかし絶対に色同士が混ざるということはありません。上の化粧土の下に下の色が薄く見えるという程度になります。混色したい場合には、色化粧土同士をよく混ぜ合わせてから使用してください。

         色化粧土は、下絵具ほど種類がないのと、酸化焼成が基本になりますので、使い方が限られてしまいます。また、色が平坦になりやすいのですが、広い面積を同じ色にすることが出来ます。釉薬でも可能ですが、釉薬の場合は、何種類かの色を重ねると釉薬が混ざり合って、輪郭がぼけたり、混色したり、流れたりしますが、化粧土の場合は常に一番上の色しか発色しませんし、混色も流れることも絶対にありませんので、比較的狙い通りに発色させることができます。安定した色使いの場合には面白い使い方が出来ます。

    2. 下絵具用顔料

       下絵具の顔料は通常スピネル顔料等で出来てます。スピネル顔料とは、2種類以上の酸化金属や土石類を混ぜ合わせて一度焼成して成分酸化物の中間の色ではなくてそれらが反応して全く別の色に変化させたものです。したがって、焼成後と同じ色をしているのが特徴です。たとえば、呉須は黒色をしていますが、コバルトと無色アルミナを混合して作った下絵の青絵具は青色をしています。ただし、スピネル顔料といってもちんぷんかんぷんだと思いますので、ここでは下絵具用顔料として説明します。
       下絵用顔料は戦後著しく進歩しました。戦前は呉須の青と鉄の黒ないし茶色、、せいぜい酸化銅や酸化クロムの緑や、金を加工したピンク等の限られた顔料を使っていましたが、戦後になってからは、トルコ青、陶試紅のピンク、黄色、ひわ色と次々に発見されてきました。最近では、絶対に不可能と言われた下絵具での赤色や中間色、パステルカラーのオレンジ、サラダグリーン等も作られるようになりました。
       一般に市販されている下絵具顔料には大きく分けて、酸化焼成用と還元焼成用に分かれます。
       

      1. 酸化用下絵具

         酸化用の下絵具は、通常は陶器用または半磁器用顔料としての名称で売られています。また、何も焼成方法に指定や明記がない場合は、通常酸化用の下絵具だと思って問題ありません。
         酸化用の下絵具の場合は、還元用と比べて色の種類が豊富にあります。最近では、技術の進歩と顔料の研究成果によってかなりの種類のものが売られるようになりました。絶対に不可能と言われた下絵の赤色や中間色、パステルカラーのものも売られるようになりました。
         酸化用の絵具は、還元焼成すると色が変色したり出なかったり全く違った色になったりすることがありますので注意が必要です。色が変化するものには、黄色、農ピンク(クロムピンク)、オレンジ、サラダグリーン、黒等があります。逆に、還元でも変わらない発色のものはピンク(陶試紅)、海碧、青、緑、トルコ青、ライラック等があります。パステルカラーや中間色のものは、大抵の場合変色すると考えた方が良いと思います。

      2. 還元用下絵具

         還元用の下絵具は、磁器用下絵具とも呼ばれていて、○○呉須という名称で売られているのが多いようです。最近は、かなりの色数が増えましたが、やはり酸化用下絵具に比べると色の種類が少なくなってしまいます。○○呉須という名称がついていないものが新たに開発された新製品だと考えてください。赤色とか黄色、ピンク、ライラック、ピーコック等が新しい還元用下絵具の代表です。
         還元用下絵具は、酸化焼成でも還元焼成でもあまり変色しないで使用できます。ここが酸化用下絵具との違いです。ただし、酸化焼成だと若干色が薄めになるようです。酸化焼成でも還元焼成でも絵付をして焼きたいという人は、どちらでも発色する還元用下絵具の購入をお勧めします。もちろん、変色する色のものだけを還元用で揃える方法もあります。特に、黄色、ピンク、黒色等は還元用の磁器用下絵具を用意した方が良いと思います。ただし、酸化用下絵具に比べると金額が少し高めになります。
         逆に酸化用下絵具で還元焼成でもちゃんと発色するものについては、酸化用下絵具で揃えてもかまいません。ピンク(陶試紅)、ひわ色、緑色、海碧、ピーコック、ライラック、トルコ青等は酸化焼成のものが、そのまま還元焼成で使用できます。この場合、トルコ青に関しては、還元焼成だと若干緑色を帯びます。

    3. 下絵付の描き方について

       下絵付は原則として素焼の上に描きます。もちろん、生の状態でも描けます。濃淡を出したくない場合や均一な色にしたい場合には湿っている生素地の時に描く方法もあります。ただし、この場合には水分が多いとにじむことがありますし、筆の勢いというものは出なくなって、見た感じが平坦になります。また、乾燥が遅いので2色とか3色使用する場合には混色してしまいます。
       乾燥した生素地に描く場合は、素焼に描くのとほぼ同じ焼色き上がりになります。生素地に描くとある程度濃く描いても素地に対応がありますし、濃すぎる場合には素焼をした時点で剥がれているので、素焼後に修正出来るという利点もあります。ただし、素焼をするまで描いた表面にはさわれなくなりますし、作品同士を重ねて素焼をすることも出来なくなります。また、乾燥した素地は、素地の厚さが薄くて、更に水分が多い絵具で描くと割れたりヒビが入ったりする危険性があります。

      1. 下絵具を作ります。

         下絵具は、通常は粉末の状態で売られています。これをまず水を入れずに粉末の状態で乳鉢でよく摺ります。ダマが完全になくなるまで摺る必要があります。呉須の場合も同じですが、結構手間と時間がかかる作業です。

         次に、少しずつ水を入れて薄めていきます。いきなり水を入れると、ダマが出来てしまいますので、丁寧に少しずつ水を入れて摺るようにしましょう。

         ある程度薄くなったら、糊剤を混ぜて、ある程度摺ったら完成です。糊剤には、一般的にはフノリ、ニカワ、、アラビアゴム、CMC等があります。
         フノリは海草で畳鰯のような状態で売られています。これを煮て使用します。ニカワは、棒状で売られていて、お湯に溶いて使用します。面倒な人は、フノリ液やニカワ液が材料店や画材店で売られていますので、これを使用してください。
         また、絵具用の糊剤として、ミックスソリューション等の名称でも市販されています。ただし、ミックスソリューションは、入れすぎると乾燥時点でカチカチに固まってしまい、次に使えなくなりますので、入れる量には注意する必要があります。もちろん糊剤を使用しないでももちろん描けますが、糊剤を入れると筆の滑りがよくなって描きやすさが違ってきます。

         糊剤と使用する目的として、筆の滑りの他に、下絵具を素地面に固定するということがあげられます。
         下絵具や呉須等で素地に描いた場合、一見素地に付着しているように見えますが、実は水の影響で素地の上にひっついているだけ状態ですので、乾燥したらホコリが素地の上に乗っかかっているのと同じことになりますので、乾燥した時点で手で触ると簡単に剥がれてしまいます。また、下絵具が厚いと釉薬が素地土にしみ込まなくなりますので、釉薬がメクレたり剥がれたりします。
         これを防止するためには下絵具を糊剤で固めるか、下絵具に釉薬を入れて下絵具自体を熔けるようにするか、下絵具を薄く描いて、釉薬が下絵具を通して素地にしみ込むようにする必要があります。したがって、糊剤を入れると釉飛びや釉メクレを防ぐ効果がありますので、使用した方が良いと思います。ただし、あまり糊剤が濃いと逆に糊剤が釉薬を弾いてしまうために、絵の上の釉薬が薄くなって絵付の部分だけ触るとへこんだ感じに仕上がることがあります。

         下絵具は、ダマがない状態まで摺らないと、焼成後に凹凸が出たりムラになったりします。本当は乳鉢で摺った上に更にガラス板の上で摺ると良いのですが、ガラス板用の摺り棒は特殊な道具なのと手間が大変なので、乳鉢で出来るだけダマがなくなるまで摺るだけでもかまわないと思います。

         なお、液体で市販されている顔料やチューブ式の下絵具を使用する場合には、ここまでの手間を省略することが出来ます。
         チューブ絵具には、最初から糊剤が入っていますので、使う分だけチューブから出して水で溶いて使用します。もし残って乾燥してしまったら、ぬるま湯で溶くか、乳鉢等で水を入れて丁寧に溶いて使用します。糊剤の溶けない内に使用すると、作品の表面がざらついたり、凹凸が出てしまいます。

         絵具を濃く描きたい場合や、メクレが心配な場合には、透明釉や合成土灰、柞灰等をほんの少し入れます。透明釉や合成土灰を入れると、長石分が水を吸うのと重たいために、この影響で描きにくくなり、筆の滑りも悪くなりますので、入れすぎには注意する必要があります。慣れない人は、天然灰を入れた方が良いと思います。この場合、天然土灰等の鉄分の入ったものは使用しないことです。天然灰を使う場合は柞灰釉や栗皮灰等の鉄分がほとんど入っていない天然灰を使用します

      2. 濃さを決めます。

         下絵付を行う際に気を付けなければいけないのは、下絵具の濃さです。下絵具が濃すぎると釉はげやメクレ、剥離、ピンホールの原因になります。逆に薄いと色が出なかったり、ムラに出たりします。
         この濃さを決めるのだけは経験で判断するしかありません。鉄や呉須、下絵具の種類によって、濃さが全て違ってくるのと、自分の好みの濃さというものがありますから、自分で経験によって判断するしかありません。
         濃さを量るには、いらない素焼の破片にとりあえず描いて下絵具を削って、厚さを測り濃さを確認します。この部分は一番重要なのですが、逆に書くことは何もありません。全て自分の判断で行うことになるからです。

      3. 作品の表面を綺麗にし、下書きをします。

         下絵付の前には素地の表面のホコリや油分を取り除きます。通常は水で湿らせてから、固く絞ったスポンジで表面を拭けば大丈夫です。
         素焼に下絵付を描く時は、鉛筆や岩紫、インク等で下書きをすることが出来ます。鉛筆の場合はあまり濃く描いたり何度も描き直しをすると、鉛筆の粉が下絵具を弾くことがありますから、なるべく薄く描くようにしましょう。また、消しゴムを使うとある程度の書き直しが可能です。ただし、消しゴムのカスや手あかが素地に付くと釉はげの原因になりますので、注意が必要です。

      4. 下絵具で描きます。

         下絵具で描くときは、なるべく筆の勢いが出るように一気に描きます。特に筆で描いたものは、描いた時には分かりませんが、焼成するとかなり筆線の勢いとかムラが出てきます。したがって、勢いの無い線や、なぞり書き、2重書きすれば焼成すると直ぐにばれてしまいます。逆に、勢いがある線で描けば、少々絵が下手でも誤魔化せるものです。
         線以外を色塗りする場合には、呉須の時と同じように少し薄めの絵具を作って塗る方が安全です。濃い絵具を塗ると、それだけ剥離の危険性が出てきます。ただし、下絵具の場合は呉須のように薄くダミのようには出来ません。薄いと色が飛んでしまいます。なお、重ね塗りは出来ますので、薄い絵具を何度がに分けて重ね塗ると比較的安全に色が塗れます。

         筆で描く以外の方法としては、スポンジで描く方法、タンポを使う方法、和紙染めの方法等があります。スポンジを使うと点描のように描くことが出来ますし、タンポ(いらないストッキングがお薦め)は均一に塗ることが出来ます。また、和紙染めは和紙の模様やぼやっとした絵付が出来ます。とくに和紙染めの場合は和紙を置いて、その上に絵具をつけた筆で和紙にしみ込ませていく方法ですので、ある程度濃くすることも可能です。ただし、絵具の半分は和紙に吸い取られてしまうので、かなり歩留まりの悪い作業になります。その他の方法としては、吹き墨の方法も可能です。吹き墨の方法が一番安全に大きな面積に均一に着色することが出来ます。

         下絵用顔料で描く場合には、混色が出来るというのも特徴のひとつです。下絵具は基本的に作成時において、原料同士を混ぜ合わせて一度焼成して化学変化をさせて、色を定着していますので、再度別の金属を加えても最初の色自体は科学変化しないという特性があります。
         したがって、違う色同士を混ぜ合わせると、絵具を混ぜ合わせるのと同じように使用することが出来ます。これは、か焼していない鉄や呉須などの酸化金属同士では出来ません。焼成時点で全く別の色になる危険性があるからです。

         したがって、混色をすることによって色のバリエーションが豊富になります。単純な色の場合は、赤色と青色で紫色とか、緑色と黄色で黄緑色とかが出来ます。ただし、混色する際にはパレットや乳鉢で2色を混ぜ合わせた上で使用してください。重ね塗りの場合とは発色が違ってきます。

         もちろん、重ね塗りをしても問題はありません。より複雑な色を出したい場合には、混色や重ね塗りを併用したり、濃淡を出したりして、テクニックを駆使すると複雑で面白い色あいにすることも出来ます。ただし、あまり重ね塗りをすると一般の絵具と一緒で色がだんだんと暗く、濁ってしまいます。  テクニック次第では、グラデーションや墨絵風、ちぎり絵風、油絵風と、様々な発色が出来ます。

         下絵具で描く時に失敗した場合ですが、下絵具は素焼後に描く場合には原則として描き直しは出来ません。素地の目の中に下絵具が入り込んで、完全に落としたと思っても、焼成すると色が出てしまう危険性があるからです。ただし、表面をよく洗ってしっかりと乾燥させた後での書き直しは可能です。この場合、乾燥が足りないとムラ、剥離等の原因になります。確実で安全な方法は、綺麗に洗った後で再度素焼をして、改めて絵付をする方法です。

      5. 釉掛けします。

         下絵付を行ったら、十分に乾燥して、最後に釉掛けして本焼すれば出来上がりです。乾燥が足りないと、下絵具の中の水分が釉薬が素地にしみ込むのを防止することになりますので、下絵具の部分だけ釉薬が薄くなってしまいます。また、釉掛けするまでは決して描いた部分に触らないことが大切です。裏側を描いている時に、描く方に夢中になってうっかりと触ってしまうということがよくありますので、描く場合には、作品の上下を持つようにするのが安全です。
         釉掛けの時に、うっかり触ってしまうということもありますので、施釉する時に手で持つ部分には、原則として絵付をしないことです。どうしても絵付をする場合には、釉掛けする時のことを考慮して絵付する必要があります。

         下絵具が濃い場合には、釉掛けした時点で絵具が釉薬を弾いてしまう場合があります。これは、絵具が濃すぎるために起こる現象ですので、こういう場合は本焼すると必ずメクレや剥がれを起こします。出来れば描き直しをしましょう。書き直せない場合は、釉薬を弾いた部分に再度筆で釉薬を塗ります。
         ここでいうメクレとは、本焼した場合に一部分の釉薬がめくれて盛り上がったり重なったりする現象です。剥がれとは、メクレがひどくなった状態で、完全に釉薬が剥がれて脱落した現象で、焼成中に起こる場合と釉掛けした後で乾燥時点で起こる場合があります。釉薬が弾くというのは、剥がれの小規模な状態で、ピンホールや小さな剥がれが起きる現象です。通常は、釉掛け後に起こりますが、気づかずに焼成される場合が多いようです。
         いずれにしても、釉薬が剥がれる等の現象は下絵具が濃すぎる状態で発生します。書き直すのが一番安全かつ確実な方法です。手間を惜しまずに描き直しましょう。その他の方法としては、絵付後に糊剤で絵を固めてしまう方法があります。絵付した後で絵の部分にCMCやニカワ、フノリ等を塗って絵を固めてしまいます。

         釉薬が不透明の場合には、本焼すると下絵が消えてしまう場合もあります。また、色釉の場合は下絵具の色が変色する危険性もあります。したがって、下絵付を描いた場合の釉薬は必然的に透明系の流れにくい釉薬に限定されます。
         御深井釉やビードロ釉のように、流れやすい釉薬の場合には、下絵具が流れてしまって安南手のようになることもあります。もちろん、これを計算して使うをいう手もあります。

         どうしても不透明の釉薬を掛けたい場合には、釉薬を施釉後に、乾燥した釉薬の上に下絵具で描くという方法があります。この場合は、下書きを描く場合に堅い鉛筆は釉薬を削り取ってしまいますので、使用できません。インクか岩紫を使うようにしましょう。また、釉掛け後はあまり筆で押し付けて描いたりすると釉薬を剥がしてしまう危険性があります。特に、天然藁灰等の軽い釉薬を使った場合には簡単に釉薬が剥がれてしまいます。こういう時は、CMCやフノリ等の糊剤を下絵付をする部分に塗って、釉薬を固定させてから描くと安全に掛けます。釉薬にグレースバインダー、釉薬強化剤等を混ぜるという手もあります。
         なお、釉薬の上に描いた場合でも下絵具は釉薬の中にとけ込みますので、釉薬の上で盛り上がったり、使っていると剥がれ落ちるという心配はありません。また、やはり流れやすい釉薬の場合には絵が流れる危険があります。特に、釉薬の上に描くので下に描いた時よりも流れる危険性は高くなります。

         釉薬の上から描く方法と下に描く方法を併用すると、絵具の濃さを違えることが出来ます。当然ながら、釉薬の上に描いた絵具の法が濃く出ます。釉薬を掛けると、下に描いた場所が分からなくなりますので、こういう時は釉掛けの前に、釉薬の上に描く部分にインクや岩紫等で下書きをしておきます。そうすると、釉掛けした後でこの部分がにじみ出てきますので、場所がわかります。

      6. 焼締め、無釉に下絵付をする場合。

         焼締めの作品や無釉の作品に下絵付をしたい場合には、下絵具に透明釉を加えて、いわゆる色釉の状態にして描きます。こうすると、下絵具が固着され、透明釉の影響でツヤのある状態で焼き上がります。ただし、下絵具に釉薬を混ぜる量によって、ツヤや色合いが違ってきますので、何度か試験を行って自分の好きなツヤと色合いを作り出す必要があります。当然、釉薬が多ければツヤが出たものになりますし、逆の場合はツヤの少ないものになります。通常は、半分ずつくらいから試験を始めます。

         もちろん、下絵具だけでも下絵具の材料によっては焼成すると固着しますが、ツヤがないことと色がはっきりと分からないこと、やはり擦ると取れる恐れがありますので、釉薬を混ぜた方が安全だと思います。また、釉薬を混ぜない場合には作品の色によって、描いているのかどうか分からなくなる場合がありますが、釉薬を混ぜた場合には、下絵具にツヤが出て、描いた部分が目立つようになります。逆に、光るのがイヤな場合には、釉薬を入れないか、少しだけにします。

         下絵具に釉薬を混ぜた場合、透明釉が溶けやすい釉薬や流れやすい釉薬の場合、あるいは釉薬の量が多い場合には、絵が流れる危険性があります。必ず試験焼をしてから行うようにしましょう。また、釉薬が入ると、下絵具がボテッとして、細かい絵付けが出来なくなりますので、この場合は釉薬の入った絵具を盛り上げて置くようなつもりで描きます。細かい部分については、後でナイフ等で削って修正します。下絵具に釉薬の入った場合は、筆の勢いとか濃淡はあまり関係なくなるので、置いていくように描きましょう。
         特に、釉薬の量が多い場合には、通常の下絵具のように描くと色が出なかったり薄くなったり、ムラになったりします。したがって、細かい模様を描く場合には、とりあえず絵具を盛っておいて、後で削って仕上げるようにします。この方が焼き上がりが綺麗に仕上がります。この方法は釉薬で絵付けする場合と同じですので、そちらも参考にしてください。

         他の方法として、撥水剤等を使用して下絵付けをした箇所または絵付けした部分に釉掛けするという方法もあります。ただし、複雑な絵や全面に描き込んだ絵の場合には非常に手間がかかってしまい、また全面に描き込んだ場合は結果的に全部を釉掛けすることになりますので、部分的で簡単な絵の場合に限るということになります。

         

    4. 液体顔料

       特殊な下絵具として、液体顔料があります。水溶性顔料、液体試薬とも言います。液体顔料の代表的なものとしては、黄瀬戸釉と一緒に使われる胆礬(たんぱん)として使われる硫酸銅や青色水玉模様として使用される塩化コバルト等があります。
       通常の下絵具も液体状態で市販されている場合がありますが、ここでいう液体顔料とは全く別のものです。通常の下絵具が液体で売られているものは、下絵具が微粉末の状態で水の中に浮遊しているだけなので、素焼き面に描くと水分は素地中に浸透して表面に下絵具が付着しますが、液体顔料は水に溶けていますので、素地面に描くと水と一緒に素地内部に浸透して、表面には何も残りません。乾燥したら、描いたかどうかも分からなくなります。
       すなわち、液体顔料が通常の顔料と根本的に違うのは、水に溶ける性質があるということです。液体ですので、素地にしみ込んでいきます。この素地にしみ込むという特徴を利用したのが黄瀬戸でおなじみの抜け胆礬という技法です。抜け胆礬というのは、素地の表面に描いた緑色の絵がそのまま素地の裏にまで抜けて裏面も緑色に発色したものです。これは、顔料が素地の中に染みこんでいくために起こる現象なのです。

       また、液体顔料は素地にしみ込みますので、描いた絵の輪郭がぼやけて、ぼんやりとした淡い発色になるのと、筆跡が出ないのも特徴のひとつです。ただし、しみ込んでいきますので、一度描いたものは絶対に修正が出来ません。通常の下絵具だと洗ったり削ったりすれば何度でも修正が出来ますが、液体顔料の場合は絶対に不可能です。

       液体顔料の使用方法は、結晶状または粉末状になっている顔料の試薬を水またはグリセリン液で薄めた水に入れて溶かして使います。逆に、水の中に試薬を入れてもかまいません。入れる量が飽和量を超えると溶けきらずに結晶の状態で底に溜まります。
       この顔料の熔けた水溶液を生素地または素焼素地に染みこませるか、筆等で塗って使用します。液体の状態では薄く色が付いていますが、素地に塗って乾燥するとほとんど無色になります。筆で塗る際には、流れやすいので注意して塗ってください。

       液体顔料は、溶かす水の量や、重ね塗りをすることによって色を濃くしたり薄くしたりすることが出来ます。ただ塗り重ねる場合には、水に溶けた状態だとほとんど無色透明に近いので、塗ったかどうかとか何回塗ったかとかも分からなくなります。顔料にインクを少し混ぜるとか、描き始めの場所等にしるしを付けて、しっかりと描いた部分を把握していかなければいけません。なお、濃くしようと思って試薬を一定量以上水に溶かしても、飽和量以上は溶けませんし、これ以上は色も濃くなりません。飽和量になっても、発色は思ったほど濃くなりません。重ね塗りをすれば、ある程度は色が濃くなりますが、やはり限度があります。

       液体顔料自体は、色の種類はそれほど多くありません。主な種類は酸化焼成の場合だと、青色のコバルト系、肌色のマンガン系、橙色のニッケル系、緑色の銅系、茶色のクロム系、ピンクの金系がありますが、全てが淡い色合いなので、通常の顔料のようには色に差は出ません。
       液体顔料も通常の顔料と同じように酸化焼成と還元焼成では全く違う色になる場合があります。例えば、塩化クロムや硝酸クロムは酸化焼成だと茶色に発色しますが、還元焼成だと緑色に発色します。硫酸銅は酸化焼成だと緑色に発色しますが、還元焼成だと赤色から茶色に発色します。ただし、塩化コバルトは酸化でも還元でも青色に発色しますし、塩化金はピンク色に発色します。
       同じように、釉薬によっても発色が違うことがあります。通常は透明系の釉薬を使用しますが、色釉を使用すると補色効果によって違った色になったり濃くなったり薄くなったりします。例えば、硫酸銅を還元焼成すると、透明釉では茶色になりますが、青磁釉だと辰砂のような赤色に発色します。
       また、顔料によって発色するために使用する試薬の量が違います。マンガン系や鉄系、クロム系は濃度を上げないと発色しませんが、コバルト系や金系、ニッケル系は、かなり水で薄めても発色します。ただし、焼成してみないと発色が分からないので、これらは何度も試験焼をして自分の濃さを探し出すしか方法がありません。

       それから、液体顔料を使用する土は、磁器土や半磁器土のように白くてきめの細かい土の方が発色がよくなります。赤土や荒い土の場合は上手く発色しないこともあります。


       液体顔料の混色もある程度は可能です。ただし、下絵具と同様に試験焼きが絶対に必要となります。下絵具が、実際に色が変化するのでその場で確認出来るのに対して、液体顔料の場合は、その場では全く分かりません。焼成してみて、はじめて色が分かりますので、何度も試験焼きをして確認する必要があります。代表的な混色では、コバルトと金で紫色系、コバルトとクロムで青緑色系、クロムとマンガンで灰色系等があります。
       混色の方法は、液体顔料同士を混ぜる方法、同じ場所に違う顔料を塗り重ねる方法、一度塗ったら、素焼して色を定着させてから更に塗る重ねる方法等があります。液体顔料同士を混ぜる方法は、一度作れば同じ色を何度でも使うことが出来る点が便利です。ただし、色を決めるためには、顔料同士の比率を決めるのに試験焼きを何度も行う必要があります。
       同じ場所に塗り重ねて、一度で焼く方法は、一番簡単な方法です。ただし、これは焼成するまではどんな色になるのかが分かりませんので、確実な方法とは言えません。焼成の度に違う色になる可能性が大いにあります。
       一度素焼をして色を定着させてから重ね塗りをする方法だと、実際に色が確認出来るので安全です。液体顔料で有名な板谷波山の葆光(ほこうまたはほうこう)彩磁は、絵付と素焼を繰り返すことによって生まれる色合ですので、ただここまで行おうとするとかなりの根気と燃料代が必要になります。
       素焼を重ねる場合の注意事項は、塩化マンガンや硝酸クロムのように酸化と還元で発色の違う場合は、還元での素焼を必要とすることです。通常は800度までは酸化焼成で焼いて、その後900度くらいまでゆっくりと還元焼成で焼きます。従って、素焼の温度も高めになります。

       液体顔料については、青色の塩化コバルトと緑色の硫酸銅以外にはかなり特殊になりますので、注文生産となる場合があります。また、特殊な試薬ですのでかなり高価になってしまいます。特に塩化金や塩化白金などは、1グラム単位で非常に高価な金額で売られていますので、一般的にはなかなか使う機会のない顔料のひとつと言えます。なお、薬品によっては劇薬指定にされているものもありますので、使用するには注意が必要となります。

    5. 陶芸用クレヨン

       陶芸用クレヨンは、陶芸用パステル、陶彩パス等の名称で売られています。もちろん、普通のクレヨンとは違って、下絵用顔料を糊剤、粘土等で固めたもので、一般的には、6色(ピンク、黄、緑、黒、茶、青)が多いようですが、10色のものとか、アメリカ製のクレヨンで、パステル調のものもあります。
       陶芸用クレヨンは、原則として酸化焼成の使用となります。還元焼成でも発色するものもありますが、基本的には酸化焼成が原則となります。6色のクレヨンで言うと、ピンクと黄色は還元焼成では発色しません。ただし、緑と青は還元焼成の方が色が濃くなります。還元焼成で使用する場合には、事前に試験焼成を行ってから絵付に使用してください。
       陶芸用クレヨンは、筆の勢いとか濃さとかを気にせず描けるので、初心者には非常に便利です。焼成すると、本当にクレヨンで描いたように素朴で味のある感じに仕上がります。ただし、細かい絵には不向きです。また、作品の土の荒さにも影響されます。当然粗い土のものは描きづらくなります。下絵具との併用も出来ます。絵付を下絵具で行い、輪郭部をクレヨンで描く等の方法があります。この場合は、先に下絵具で色つけをしておかないと、クレヨンを水で塗らすと通常の絵具のような雰囲気になってしまいます。

       陶芸用クレヨンは、顔料を固めたものですから、溶かして下絵用顔料としても使えます。クレヨンで描いた上から水を付けた筆で溶かしていっても、面白い絵になります。

       陶芸用クレヨンは、自分で作ることも出来ます。磁器土と蛙目粘土、カオリンを同量づつよく練り合わせます。その後、このこの混ぜ合わせた土と同量の練り込み用顔料をよくよく混ぜ合わせて乾燥させれば出来上がりです。顔料は発色の良いものと悪いものがありますので、適当に増やしたり減したりしていくと良いでしょう。発色が良いものは、緑色、青色等で、悪いものはピンク、黄色等です。
       自分でクレヨンを作る場合には、下絵具と同様に混色をすることも可能です。混色によって、オレンジ色や黄緑、サラダグリーンのようにパステルカラーを作ることも出来ます。ただし、顔料の量によって色が変化しますので、何度も試験焼成をする必要があります。