初心者のための釉がけ講座(自分で釉薬を作ろう編)

 ここでは、自分で釉薬を作ろうという人のために書いておきます。
 自分で釉薬を作る場合は、本などを参考にして市販の材料、原料で作る場合と自分で木や草を燃やして灰から作る場合があります。
 市販の材料や原料を使って作る場合は、ある程度どういう焼成結果になるか想像できます。というよりは、出来上がり結果が先にある訳です。それに近づけるように釉薬を作っていくことになります。逆に、自分で灰から作る場合は、焼成結果は全く想像出来ません。どのような色あいになるか分からない部分のおもしろさがある訳です。したがって、同じように自分で作るという行為でも全く別の目的に基づいて作ることになりますので、別々に説明していきたいと思います。

  1. 自分で市販の材料で釉薬を作る場合注意事項

     自分で市販の材料を使って釉薬を作る場合、簡単に作ろうと思えば陶芸書籍に載っている調合リスト通りに作るのが一番です。ただし、これを元に別の釉薬に変えていこうとなると、かなりの知識を必要とします。ここではとりあえず自分で作る時の注意点を書いておきます。

    1. 天然材料と合成材料

       天然灰を使用する場合には、ミルでよく摺らないと粒が残ってしまいます。均等な綺麗な釉薬を作る場合には、ミルで摺ることが絶対条件になります。ミルは高価ですので、もし持っていない、または買えない場合には、合成灰を使いましょう。金額も安価で、それなりの釉薬を作ることが出来ます。合成灰は、合成土灰、合成藁灰、合成柞灰、合成栗皮灰等が売られています。
       ただし、自然っぽいぶつぶつの出た釉調にする場合には、逆にミルで摺らない方が面白いものが出来ます。この場合には、天然灰を80メッシュくらいの篩いを通すだけでかまいません。あまり綺麗にすると、逆に綺麗な釉薬になってしまいます。

    2. ポットミルを使う時の注意点

       初心者でポットミルまで購入している人は少ないと思いますが、一応使い方を書いておきます。
       陶器用の釉薬は、微粉末にすれば剥離しやすくなるし、均一的で単調な釉色になるために、あえてポットミルは使わずに、粗めの材料のまま使用することが多いようです。
       しかし、天然材料でないと色調の良い色にするのも難しいので、天然材料をポットミルで作ることも多くあります。
       ポットミルは、材料を微粉末に研磨するのがすることが目的です。したがって、材料を撹拌するだけの場合やある程度細かくする場合には使用しません。撹拌する時は攪拌機を使用しますし、ある程度の細かさにするには篩と乳鉢を使えば十分です。また、合成材料を使用する場合は、十分に微粉末になっていますのであえてポットミルを使用する必要はありません。
       ポットミルを使用するのは、湿式研磨が原則です。したがって、材料をミルの中に入れ、更に水を入れてミルを回します。その後、1時間から3時間程度回します。あまり時間をかけすぎると材料が微粉末になりすぎて、剥離の原因になります。

    3. 陶芸書籍を見るときの注意点について

       初心者が釉薬を作る場合には、最初は陶芸書籍の釉薬調合リストを見て作ると思います。しかし、この調合リストは数字が並んでいるだけで、詳しい作り方の説明は書かれていないことが多いようですので、ここで補足説明を書いておきます。

      1. 本に載っている数字は何か

         陶芸の本などで調合例を紹介している場合で注意が必要なのは、材料は全て重量で計算しているという点です。これは、天然材料を使っても合成材料を使っても全く同じです。たとえば、合成藁灰と天然藁灰は同じ重量だと量的には5倍ほどの違いがありますが、これで同じ原料となるわけです。本当に同じなのかという疑問が出てきますが、正解なのです。また、軽い原料と思い原料についても同じ重さで量が違ってきます。

      2. 外割りと内割りについて

         書籍を見る上で、内割りと外割りという点も注意が必要です。内割りとは材料の合計が100になるように計算されています。これは、基礎釉に多くみられます。これに対し、外割りとは釉薬100に対して酸化銅を5%追加するとか藁灰を10%追加するといった場合に用いられます。着色剤とか乳濁剤を加えるような釉薬に多く見られます。
         陶芸書籍の中には、あらかじめ外割りの比率を重さに置き換えて表示している場合がありますので、当然この場合は材料の合計が100にはなりません。自分で計算して使う時も、外割りの材料を入れていくと、合計が100以上になります。

      3. 杓合わせについて

         これとは別に、杓あわせという計算方法があります。最近の陶芸書籍ではあまり書かれていませんが、古い書籍などには時々出てきます。これは、日本では昔から行われていた釉薬の調合方法で、長石をマスに3杯と土灰を2杯というように、容量で計算する方法です。この方法は、今でも3号釉、5号釉という名称に残されています。
         この杓合わせを使用する場合には、当然のことながら天然材料と合成材料では全く違ったものになってしまいまいますので、注意が必要です。昔の方法ですので、天然材料しか使えないということになります。

      4. 書籍に載っている材料がない場合は

         陶芸書籍には、長石としか書いていない場合や、福島長石とか釜戸長石、平津長石といったように、具体的に種別まで書いている場合があります。
         一般的に、長石としか書いていない場合は、それほどこだわる必要がない、いわゆる調合に幅のある、熔ける温度帯の広い釉薬の場合が多いようです。したがって、どの長石を使ってもさほど関係ないということです。
         これに対し、銘柄を指定している場合は、幅の狭い調合の場合が多いようです。したがって、釜戸長石と書かれている場合には福島長石を使うと色合とか雰囲気が違ってしまうこともあります。釜戸長石を福島長石に置き換える場合には、一度ゼーゲル式で計算し直す必要が出てきます。この作業は、初心者にはちょっと難しい作業になりますので、こまめに釜戸長石を購入するか、気にしないで福島長石を使うかのどちらかの選択になるかと思います。
         材料の中には、他の材料で置き換えられる場合もあります。例えば、ストロンチウムをバリウムに置き換えることは大抵の場合可能です。幅のある釉薬の場合は、多少調合の数量が違っても全く問題ありません。ただし、微量の添加でも絶対に必要となる材料というのもありますので、気を付けなければいけません。例えば、トルコ青釉を作る時に必要なリチウムは釉薬をアルカリ性にする上で欠かせない材料で、これを入れないと釉薬が青くならずに緑色になってしまいます。
         とにかく、その材料がどの様な働きをするかを理解すれば、必然的に必要な材料か、または、他の材料で置き換えられるかどうかも分かってきます。初心者にとっては、かなり頭の痛い問題ですが・・・。

    4. とりあえず自分で作ってみよう

       ということで、陶芸書籍の調合リストに基づいて作ってみましょう。最初は、簡単に石灰釉(または透明釉、基礎釉とも呼ばれています)を作ってみましょう。
       陶芸書籍によると、長石6:石灰4という割合から長石8:石灰2という割合まで書かれています。これに藁灰を加える調合も載っています。長石5:石灰4:藁灰1という割合が載っています。
       基本的には、長石が多くなるにしたがって焼成温度は高くなります。したがって、SK8の場合は長石6:石灰4が使いやすいと思います。
      .はかりを使って原料の重さを量ります。原料は、一度天日乾しにして、乾燥させた方が良いと思いますが、あまりこだわらないでも大丈夫です。
       はかりは、天秤秤できちんと量ると書いている書籍もありますが、釉薬自体がそれほど正確を必要としませんので、料理用のはかりで十分です。ただし、量があまり少ないと使えないので、最低でも1キロ単位で作る必要があります。したがって、長石を600グラム、石灰を400グラム量って、バケツにでも入れます。

      .ここで、長石については、上記に書いているように、どの産地の長石を使ってもかまいません。一般的には、福島長石を使います。石灰は、白石灰とネズミ石灰がありますが、これもどちらでもかまいません。一般的にはネズミ石灰の方が安定が良いとされています。注意することは、石灰は生石灰を使っては行けないということです。水を入れた時点で発熱するので危険です。もちろん、園芸用の消石灰は同じ石灰ですので当然使用出来ます。

      .次に、水を入れたバケツの中に静かに量った原料を入れていきます。水の量は、下の表から換算してとりあえず700CCを入れておきます。水は、後で追加するのは簡単ですが減らすのには時間がかかるので、最初は少な目に入れておきます。

      .この後の作業は、上記に書いている粉末釉薬の作り方と全く同じですので、省力いたします。



  2. 釉薬を自分で灰や土から作ってみよう

     書籍に載っている釉薬に飽きてきたり、全く違った感じの釉薬を作りたい、あるいは木や草を焼いたので灰を作って釉薬を作ってみたいという時は、自分で灰から作ってみましょう。
     釉薬の材料は、自分で灰を燃やして作ったり、近所の土から釉薬を作ったりもできます。この場合には、次のことに注意をしましょう。

    水簸と灰汁(アク)抜きについて

    実際に灰に水を入れてやると、まず水溶性のソーダ分やカリ分が水に溶けだします。このソーダ分やカリ分が実はアルカリ物質、いわゆるアク(灰汁)のことで、灰汁を取り除く作業を灰汁抜きと言います。
    ソーダは、Naのこと、すなわちナトリウムです。科学の実験や花火などでよくご承知の通りナトリウムは燃やすと赤色に発色します。したがって、緋色釉は赤色になる訳です。
    ただし、ナトリウムは水に溶けてしまいますので、釉薬にはなりません。本来表面に幕を作るのが釉薬の働きですが、素地の中に染みこんでしまうと素地土に悪影響を与えるからです。
    したがって、ナトリウムを釉薬で使おうとすると、塩釉といって燃えている窯の中に塩を入れて揮発するナトリウムを素地の表面に定着させるという方法がとられます。
    さて、話が横道にそれましたが、水簸という作業は字のごとく水であおる即ち分類するという作業のことで、本来は、灰汁抜きしたもので行います。
    灰を入れた水を撹拌して、少し時間をおきます。すると、重いものは沈澱します。そのタイミングで沈澱したもの以外を取り出します。
    この作業を繰り返すと、重い金属類が取り除かれていき、軽いカルシウムだけになってきます。
    徹底的にこの作業を行うと、純粋なカルシウムと天然珪酸だけになってしまいます。昔はミルなどという道具がありませんでしたので、こうやって灰を作った訳です。 したがって、この作業を行うと色を付けるべき金属類は全て取り除かれてしまいます。といっても、9割以上が鉄分ですので、黒ボツの原因である鉄分を取り除くのが目的のようなものですけどね・・・。(笑)
    したがって、このように水簸して作った灰は、純粋に無色透明になる筈です。実際には取り切れなかった鉄分が少し入ってしまいますので、若干色は付くんですけどね。また、灰の量は、多分当初の1割程度までになってしまいます。
    .自分で灰を作る場合は、灰のアルカリ物質を十分に取る必要があります。アルカリ物質は、アクと言って灰汁と書きます。ズバリ灰の汁のことですね。 ブクを作ったり剥離を起す原因になります。これを取り除くには、灰汁抜きを繰り返して行う方法が一番です。灰をバケツに入れて良く撹拌します。灰が沈澱したら、上水を捨てます。上水を捨てる際には、ホースを使ったり灯油用のポンプを使うと便利です。
     水にぬめりがある場合は、まだアルカリ物質を含んでいるということですので、灰汁抜きを繰り返し行います。水簸は大体、20回から30回行う必要がありますので、焦らずに気長に行うことです。

    .灰は、基本的には木から出来た灰は、木灰系統で石灰分を多く含んでいます。植物、特にワラやススキ、セイタカアワダチソウのように穂のある植物は珪酸を多く含んでいます。したがって、藁灰の系統として使用します。

    .土は、同じように水簸して土灰や石灰と混ぜて使用します。基本的には土は長石や粘土の系統と考えても良いと思います。ただし、不純物を沢山含んでいますので、どういう色合になるかは焼いてみないと全く分かりません。
    土を使用するのは、黄土や赤土、壁土の場合が多くなりますので、基本的には土灰と半分づつ混ぜれば伊羅保釉のようにアルミナ質マット釉になるようです。しかし、これはあくまでも黄土系の赤土を使った場合ですので、使用する土によって全く違った色合や釉調になると思います。これだけは焼いてみないと全く分かりません。
    半分づつの割合でも熔けない場合には、土灰の割合を増やしていきます。熔けすぎる場合には、逆に土の割合を増やします。何度も試験焼成を行って、調製する必要があります。
     水簸というのは、水の中に土を入れてよく撹拌して、しばらく置くと重い部分が沈澱します。そうしたら、上水だけを取り出して細かい部分だけを使用することです。完全に沈澱してしまったら水だけを取り出すことになるし、早すぎると大きな粒まで取り出してしまうので、タイミングが重用になります。