釉薬をムラにかける方法
釉薬を薄くかける方法通常釉薬は同じ濃度で同じ厚さ、均等にかける工夫をします。素早く釉薬の中に入れて、素早く出し、回しながら更に均一になるように乾燥させます。
しかし、あえて厚さや濃度を不均一にして味わいを出す方法もあります。濃度を不均一にするには、釉薬をかける際に上澄みと沈殿とに濃度の差がある時に作品を静かにくぐらせます。そうすると最初に釉薬に入った部分は濃くなって後から入れた部分が薄くかかります。
厚さを不均一にするには、釉掛けした直後の乾いていない間に手で拭います。また、完全に乾いた後に手で釉薬を塗ります。そうするとかなりムラになります。重ね掛けの時に使っても効果的です。
釉薬を重ね掛けする場合の基本急須の茶こしの部分とか透かしの部分で、釉薬を濃くかけると穴が詰まってしまう場合には、その部分に筆等で水を含ませておきます。その後すぐに釉掛けすると、水を含んだ部分は釉薬を薄くかけることが出来ます。
釉薬を掛け分ける方法釉薬を重ね掛けする場合は、天然藁灰等の比重の軽い釉薬は最後にかけるようにします。逆に藁灰の上から重たい釉薬を重ねた場合は藁灰がはじけて上の釉薬がめくれ落ちますので、非常に危険です。
流れやすい釉薬と流れにくい釉薬の場合は、流れやすい釉薬を上にかけると効果が大きくなります。しかし、流れにくい釉薬を流れやすい釉薬の上からかけても全く違った効果があります。
同じ釉薬をかけても全く違った雰囲気が出せます。たとえば、黒釉の上から白釉をかけると、白釉が流れて朝鮮唐津のような雰囲気になりますが、白釉の上から黒釉をかけると白釉が水玉のように浮き出た感じに仕上がります。
鉄絵について複雑な模様を2種類以上の釉薬を使って掛け分ける方法です。 最初に2回めに釉掛けする部分を等画糊でマスキングします。面倒であればガムテープ、マスキングテープ等を使用しても出来ます。終ったら釉掛けします。 次に、等画糊等を剥がして、一回目に釉掛けした部分に撥水剤を塗ります。油性の撥水剤を使えば、釉薬は剥がれません。 最後に2回目の釉掛けを行います。これで、綺麗に釉薬が掛け分けられています。
施釉後に撥水剤を塗る方法は、応用がききます。織部釉の部分施釉とか半分の掛け分けとか2重掛けの時に模様を残す、等に利用できます。
鉄絵や呉須絵で勢いのある線が出したい鉄絵は、素焼きの素地に絵を描き本焼する、いわゆる下絵の具の一種です。絵具は、鉄分の多い紅柄を使えば簡単ですが、紅柄だけでは鉄分が多すぎて平たんな感じに仕上がります。
そこで、紅柄5:鬼板5の割合を乳鉢でよく摺って作ります。最後にCMCや洗濯糊を入れて粘りを出せば描きやすくなります。ただし、素焼素地に描くのである程度の水分は必要です。水分が足りないと筆が滑らなくなって、描きづらくなります。
描く場合に、あまり濃すぎるとメクレの原因になります。濃く描きたい場合には、鉄絵に透明釉や土灰釉を少し混ぜると剥がれにくくなります。
緋だすきについて鉄絵や呉須絵を描く場合、どうしても素地土に水分を吸い取られてしまうので描くのが難しいものです。どうしても勢いのある線を出したい場合は、生素地の状態で完全に乾燥していない状態で描けば出せます。また、ぼかしたい場合には生素地の状態でしかも表面を濡らせば出せます。生素地は、水分を含んでいるため、あまり素地に水分が染み込まないために薄くなり、その分勢いが出ます。ただし、描いた部分の上から触ると絵が消えてしまうので、釉掛けするまで触ることは出来ません。また、水分が染み込まない分線が平坦になってしまいます。
胆礬(たんぱん)について備前焼の緋だすきや常滑焼きの海藻焼等は、藁や海藻に含まれるナトリウム分と素地中の珪酸分が結合して一種の釉薬になったもので、基本的には塩釉等の揮発釉にちかいものがあります。
緋ダスキが何故赤い発色をするのかは完全には解明されていませんが、素地土の中の鉄分が析出して出ると言われています。したがって、素地土に微量(1~2%)の鉄分があれば、大抵の白土が使用可能です。ただし、水簸して鉄分を完全に取ってしまったものは不向きです。
備前焼の緋ダスキは現在電気窯が主流ですので、一般の土でも藁を巻いて電気窯でゆっくりと焼成すれば簡単に出すことが出来ます。電気窯でなくてももちろん出来ます。還元焼成と酸化焼成では、還元焼成の方が緋ダスキが濃く出ます。
緋だすきだけでなく、他の釉薬ものと一緒に焼く場合は、緋だすきのものをサヤに入れて焼成します。また、温度が上がりすぎると藁が素地土と熔化して見苦しくなります。大体目安として1200~1230度が限度です。
焼き直しについて黄瀬戸釉を掛けた場合に、ところどころ緑色に発色した胆礬という効果をよく行いますが、大部分の初心者の人は織部釉で代用しています。本来の胆礬は、水溶性の硫酸銅を使用するために、素地の裏側まで緑色が抜けてしまう「抜け胆礬」というものにならなければいけません。
現在では、天然の硫酸銅はなかなか手に入らないので、天然のものと比べるとどうしても発色が綺麗になりすぎますが、化学薬品の硫酸銅を使用します。
硫酸銅は薬局や陶芸材料店で買うことが出来ます。結晶の形で売られていますので、これを水かぬるま湯で溶いて、さらに同量のグリセリンと混ぜ合わせて使用します。ただし、ほとんど色が付いていないので注意が必要です。また何度も塗り重ねると濃くなりますが、濃くなり過ぎると釉薬をはじいたりしますので、注意が必要です。
通常は、釉薬をかける前に出したい部分に塗りますが、効果を大きくしたい場合には、釉薬をかけた上から塗るとはっきりと出すことが出来ます。ただし、この場合は釉薬と一緒に流れてしまうこともありますし、抜け胆礬にはなりません。
全面に釉薬をかけたい場合一度焼いたのに、色がおかしかったとか、薄かったとか、とにかく失敗した場合に、焼き直しが必要になります。もちろん、焼き直しは可能ですし、何度焼いても問題ありません。ただし、一度還元で焼いたものを酸化で焼き直しても酸化の色にはなりません。逆の場合も同じです。
釉薬が薄かった場合とか、ムラが出来た場合に塗り直すことも出来ます。この場合は、素焼の時とは違って釉薬が素地に吸い込まれることはありませんので、糊を釉薬に混ぜて盛るように塗ります。ただし、あまり厚くかけると剥げてしまいます。
還元が弱くて、辰砂釉や鈞窯釉の色が出なかった場合には、焼き直しの仕方が違ってきます。1000度付近で3時間ほどキープします。焼成は酸化焼成です。
焼締めをしようとした場合、本来何昼夜も焼成を続ける必要がありますが、これを何度も焼成を繰り返すことによって、だんだんと焼締めの雰囲気にすることも可能です。信楽の粗い土で焼成した場合には、長石分がだんだんと熔けだしてきてビードロ釉の雰囲気が作り出せます。
土灰を振りかける高台の下にも釉薬をかけたい場合とかには、焼成温度の違う釉薬を使います。最初に高火度釉(1250度以上)の釉薬で高台の下は釉掛けしないで普通に焼きます。次に、中火度フリット釉(1000度程度)か楽焼の透明釉を使って高台の裏に釉掛けして、ひっくり返して焼成します。ただし、中火度釉や低火度釉はツヤがよくなるので注意が必要です。上絵具は、この方法を応用した方法です。低火度透明釉に着色金属が入っています。ただし、チャイナペインティングなどの洋絵具はまた違ったものです。
この方法を応用して、部分的に釉薬がめくれた部分とか剥がれた部分の補修的な焼成も出来ます。ただし、低火度釉や中火度釉には鉛が含まれていることがありますので、出来上がったものは使用上の注意が必要です。具体的には酢の物や酸を使ったものに使用しないということです。
銅を飛ばすいろいろな釉薬をかけた上から天然木灰を振りかけると、全く雰囲気の違ったものになります。例えば、鉄釉の上から土灰を振りかけると、振りかけた部分だけが白く乳濁して海鼠釉の雰囲気になります。また、灰釉の上から振りかけると振りかけた部分が複雑な色になり、振りかける量が多いと流れたようになります。無釉の素地に灰を振りかけて焼くと、一見焼締めのようになります。
ただし、藁灰を多量に振りかけると熔けきらない場合も出てきます。藁灰には珪酸分が多量に含まれているために、熔けにくくなるためです。
酸化と還元でも全く違う色になります。天然木灰の場合には、酸化で茶色系統、還元で薄緑系統の色変化をしますが、色釉の場合には様々な変化を起こすので、いろいろと試してみると面白いと思います。
ただし、灰を振りかけると、周りの作品にも飛び移りますので、色変化を好まないものや白く焼きたいものを一緒に焼かないことが必要です。
織部釉や辰砂釉、鈞窯釉のように銅を使った釉薬を使う場合には、周りの作品にも影響を与える場合があります。これは、釉薬に含まれる銅分が揮発して周りの作品にくっつくからです。特に還元焼成の場合、赤色に変化するための銅の量は少量で良いために周りの作品がほんのりと赤くなったり、酷いときには真っ赤になることがあります。これは、周りの作品が白釉や透明釉の場合に起こりやすい現象です。
この原理を応用して、サヤの内側に銅を塗っておき、サヤの中に通常の透明釉をかけた作品を入れて辰砂釉を作る方法があります。
逆に、銅分を飛ばしたくない場合には、銅釉の作品はサヤの中に入れるとか、一番隅に置くとかの工夫が必要です。一番良いのは、銅釉を使った作品だけで焼くことです。

