陶窯の種類と発達
陶磁器の生産は全世界にわたり、古くから発達し、陶窯も各地方、各時代により多種多様の様式で使用されている。これらを一つひとつ仔細に列挙し、詳述することは至難であるが、世界陶業発達の上で特記する事は、
1.古来における近東諸国の陶窯
2.陶磁器として世界的発達をとげた、中国古代陶窯の発達変革
3.我が国の登り窯の発達沿革
以上3項目を略述してみたいと思う。
1.古代における近東諸国の陶窯
古代エジプトの陶窯
(第1図 エジプトの陶窯)
(イウマン氏著「古代エジプトにおける生活」に掲載されているエジプト王朝時代(紀元前2千年)に行われていた製陶の図である。(ベニ・ハサン地方で行われているもの)下図の円筒状のものが陶窯の図である。
世界における陶磁器の発達は、近東諸国が最初であることは言うまでもない。最古の窯として挙げるものは、地上に築かれた円筒状の窯であって、「ストーブ」形のものである、これはおそらく、地質が湿潤地帯であるため、地中窯が用いられにくいためであろう。
しかしこの様式は、製鉄の窯炉及び石炭焼成窯炉の先駆として、また欧州特にイギリスでは今なお用いられている。シャフトキルン、ボットルキルン、マントルキルン等もこの様式ともいえる。この種の窯は、焼成品を多く入れるために円筒の径が次第に広がってくると第7図(ギリシア陶窯)のような形式のものになる。
(第2図)バビロニアの古代の陶窯)
ドイツ東洋協会のアンドレー博士によって発掘されたアッシリア時代(紀元前6世紀)の陶窯(バビロニアアツスール所在)
地殻を窯壁として、地中に穴を掘って築かれたものである。焚き方は(第3図)に示すように作品を詰めた後で上部を(第4図)のように草木の枝蔓などでドーム状に覆い、その上に泥土を塗りつけて焼成するものである。
(第3図 近東諸国及び欧州におけるギリシア、ローマ期における窯の工作)
(第4図 アフリカ・ナタール地方における小枝で構築する小屋組)
この様式は、近東諸国、欧州、中国、日本にも伝わっている。
中国の陶業として最も古い、商、殷、周代の窯跡の発掘によっても、これを実証されている。

(第5図 ローマ時代の大窯)
第5図は、ローマ時代の大窯(紀元前1世紀)で、ドイツ考古学者によって発掘されたエシュウワイラーホックの窯である。
(第6図 中国山東省歴城附城子崖における殷時代の黒陶窯)
第6図は、殷末、周初の黒色陶窯跡であり、最近南京文化学院の手によって発掘された三東省歴城府城子崖の窯跡である。
(第7図 ギリシャの黒絵陶器時代の陶画に描かれた陶窯の図窯)
第7図は、ギリシアの黒絵陶器時代の陶画に描かれた黒絵陶の窯であって、様式は同一であるが、地上に築かれている。
この様式の陶窯を我が国では「桶素焼窯」と呼んでおり、飯炊き用の「かまど」もこの様式である。窯としては最も簡単な様式のものである。
( 第8図 ドイツの青銅時代における古陶窯)
( 第9図 奈良県生駒郡平端村(奈良朝の瓦窯窯跡))
第9図は奈良県生駒郡平端村の奈良朝の瓦窯跡で、我が国奈良朝時代の瓦焼成窯である。やはりこの様式の地上に築かれたものである。陶業として低火度陶器を焼いた奈良朝時代の陶窯は、この様式のものである。

