釉上彩料
「釉上彩料」は陶磁器の釉上に彩料を低火度で熔着させるものであって、釉下彩料と同一性状の彩料に、その焼付温度に適応する溶剤を適量混和して調製するものでる。釉上彩料は、釉下彩料に対し低火度焼成である事と、釉の熔融作用の影響をほとんど受けないため、彩料の呈色は比較的安定であり、各種の色調を自由に出すことが出来る。
釉上顔料の種類には
1.透明ガラス状のもの。我が国の「和絵具」、中国では「硬彩」または「五彩」、西洋の「ビトリアスカラー」
2.不透明ガラス状のもの。我が国で「十錦手」「盛絵具」、中国では「粉彩」、「七宝釉」
3.釉上に彩料を熔着するもの。我が国の西洋絵具、中国での洋彩、西洋での「エナメルカラー」
4.釉上にタンパク光(オペールレッセンス)、虹光(イリデッセンス)、金属光(メタルラスター)を呈する釉上彩料を一般に「ラスター」と呼ぶ。
以上のような種類のものであって、要は「彩素」に対する熔剤の種類とその量により、その呈色及び熔調が変化するのである。
透明ガラス状の彩料及び不透明ガラス状彩料は、前述「釉薬篇」の低火度透明釉、不透明釉の色釉とその性状が同一であるので省略する。
釉上に彩料を熔着する、すなわち「エナメルカラー」について略述すれば
熔着温度は、硬質磁器では摂氏720℃より800℃であるが、軟質磁器または陶器には650℃より700℃程度で熔着する。「ラスター」類は550℃より650℃程度である。
この彩料は釉下彩料のように着色剤もしくは金属塩と熔剤とよりなり、着色剤としては前記釉下顔料と大差ないが、特に鮮紅色には、黄金からの「カシアス紫」を調製して、応用する。「カシアス紫」は西暦1685年エ、カシアス氏の創製によるものであって、金を王水にて溶かした液と錫を王水にて溶かした液とを作り両種の溶液を混合する事によって得られるものである。
金と錫との比が1対10…………………マロン色
1対 5…………………ローズ色
1対 4…………………淡紫色
を呈する。
熔剤は各呈色により、それぞれその組成が違っており、その種類も多種に及ぶ。主なものを列挙すれば
1.青色及び種々の鉄赤色用
鉛丹 75 ~ 80%
石英砂 25 ~ 20%
(鉛丹75、石英25、の場合はロカイユ熔剤と呼ばれる)
2.灰色、黄色、淡褐色、鉄赤色用
鉛丹 67%
石英砂 22%
硼砂(無水) 11%
あるいは
鉛丹 60%
石英砂 15%
硼砂(結晶) 25%
3.濃紅色及び淡紫色用
鉛丹 11%
石英砂 33%
硼砂(無水) 56%
4.紫色及び混合紫色用
鉛丹 37.5%
石英砂 12.5%
硼砂(結晶) 50.0%
5.バイオレット色用
鉛丹 67.5%
石英砂 5.5%
硼砂(結晶) 27.5%
6.「クロム」緑、黄緑色用
鉛丹 73% あるいは 70%
石英砂 18% あるいは 10%
硼砂(結晶) 9% あるいは 20%
7.水緑、藍賽石青色用
鉛丹 35%
硼砂(結晶) 65%
釉上彩料として、金属光、虹光、真珠光などを呈したものを通常は「ラスター」彩料と呼ばれている。
釉上「ラスター」彩料応用の最も古いものは、近東諸地方で行われたものであって、銅、銀のような金属の流化物に粘土または黄土を加えてよく細磨し、これを彩料として釉上に描画して、摂氏600℃~700℃において焼成すればその彩料中の銅または銀は揮発し、釉中または釉上に熔着する。そして釉上の焼暇物を洗い落とせば「ラスター」が生じるのであって、紅色ラスターの例でいえば、摂氏600℃程度で還元焼成すれば銅塩が還元して鮮紅色を呈す。
また、現在一般に応用されている金属ラスターの調製については前記釉下顔料としての金属樹脂溶液に適量の樹脂酸蒼鉛を加えて調製するものであって、各金属により種々の色調を得られる。
金属「ラスター」の内において最も多く用いられるのは金の「ラスター」である。これは一般に水金と呼ばれるものである。
水金の製造法は初め「キューン」氏によりドイツ、マイセンにおいて、西暦1830年に発見され、以後幾多の研究が発表され、我が国でも第二次世界大戦に際して輸入途絶となったため、困惑しこの研究が各所で行われ、これに関する特許も多数に上っている。この調製の要点は黄金の化合物(塩化金、流化金)を揮発油、バルサム、硫黄バルサム、クロロフオルム等で熔かして調製するのであるが、この溶液は暗所においても収光線の作用により金属金の分離、分解を生じやすく、きわめて微量の金の含有量で十分な光沢を発する金液を作るのであるから、なかなか微妙な技術を要するのである。これを低火度の上絵付用に使用するには、熔剤として樹脂酸蒼鉛を加えて熔着させたものである。

