釉薬の分類
次に釉薬の本質につき概略的な説明をする事とする。
一般陶磁器に応用される釉薬は全て珪酸塩であって粘土質の素地の上に施され、熱のために熔融してガラス状になるものである。すなわち珪酸塩が熱のために熔融し、常温にて固定した一種の固融体であって、常温において固体となり、ガス体、液体などが浸透せず、また、水などに溶けない性状を具備したものである。
このように釉薬は熱により光沢、透亮、色合いなどを呈し種々の微妙な装飾的効果を挙げるため、昔から陶工が最も興味を持ち、その研究に腐心したものであるから、一般にその処法、焼成方法などは、皆秘伝にして陶工が各々「虎の巻」として一家相伝したものであるため、従来釉薬に関し本質を説いた文献は極めて少ない。
陶磁器釉薬を色々の方面から分類すると、
1.釉を調製する上からの分類
(イ)釉料を種々配合して調製されるもの。
(ロ)塩釉のように、窯の燃焼口に投入して、ガス体に変化させ、ガス体が素地に掛かって、釉を構成する。すなわち食塩釉法。
(ハ)計画的に釉を施すつもりがなく、偶然、窯内において燃料の灰などが、素地面に掛かり釉を構成する場合、南蛮手、伊賀手などに表われる釉調。
2.組成上からの分類
(イ)鉛釉(含鉛釉総称)
(ロ)無鉛釉(鉛塩を含まない釉)
普通2大別する事ができる。
1.長石質釉(磁器釉、炻器釉、衛生陶器釉)
2.フリット質釉(陶器釉、特殊軟質磁器釉)
低火度釉では鉛塩のみでなく、普通ソーダ、カリ、硼酸塩を用いられるが、これらは水に可溶性であるため、通常は珪酸塩と共に熔融して水に不溶性のガラスとし、(「フリット」と通称)これに別の水に不溶性の混合物を加えて釉を調製するものである。
3.釉料の性状による分析
(イ)「生合わせ釉」として、原料、薬品などをその都度配合して用いるもの。
(ロ)「白玉釉」一名「フリット釉」これは釉薬の内に可溶性のもの、または重量に非常に差があるものが用いられる際には、そのままでは均一な釉薬を得られないため、釉薬の一部または全部を熔融させてガラス状のものとし、これを砕いて釉薬として用いる。このガラスのことを「白玉」という。西洋では「フリット」というものである。陶器の釉薬はほとんどこの種のものである。
(ハ)「揮発性釉」とは、食塩釉のように窯内が高温の際に食塩を投入し、熱のためガス化され陶磁器の素地面にガスがかかり、素地との反応によりガラス化して釉を構成する。普通食塩、亜鉛塩などがこの目的に用いられている。
4.焼成火度の高低による分類
(イ)低火度釉または軟火度釉、弱火度釉。
摂氏1000℃以下の釉をいう。エジプト、西域にて用いられた珪酸ソーダ、あるいは「メソポタミア」にて創製され、近東、西域にて紀元前約1000年来応用され、また中国に伝わった、漢陶の釉薬、唐三彩瓷の釉薬、素三彩、五彩、粉彩釉、などこの種に属す。
(ロ)高火度釉、または強火度釉。
摂氏1200℃以上の温度にて熔ける釉を指し、灰釉の類、マグネシア釉、長石釉などこの種のものに属し、中国唐代の創製による灰釉を起源として発達したもの。
5.陶磁器製品の種類による分類。
(イ)陶器質に用いるものは陶器釉。磁器質に用いるものは、磁器釉。
(ロ)特殊陶磁器の名称からの分類。イタリアのマジョリカ陶器に用いるものはマジョリカ釉、テラコッタに用いるものはテラコッタ釉。
(ハ)品物の種類により分類。天目釉、青磁釉、辰砂釉、など。
6.外観から見た性状による分類。
(イ)透明性による分類。すなわち透明釉、不透明釉、半透明釉(または失透釉、半失透釉)
(ロ)光沢による分類。すなわち宝石光釉、光沢釉、艶消釉(マット釉)、半艶消釉(半マット釉)
(ハ)色による分類。白色釉と有色釉に大別し有色釉は種々、各色により名称を付けられる。
(ニ)結晶の表現如何により分類。結晶釉、砂金石釉、非結晶釉。
(ホ)下地釉の有無、及び下地釉の色によって分類。下地釉とは西洋にて「ステイン」と称するもの。
このように分けていけば、色々の方面から分類する事ができるので、陶器釉薬というものは多種多様の種類に及ぶのである。

