ナイフを作ろう
   一般的には、槍カンナ、剣先カンナまたはハバリと呼ばれるものです。ただし、用途によって、様々な材料や形がありますので、ここでは単にナイフとして紹介します。
 ナイフは、主に切ることを目的とします。その他、表面を滑らかに仕上げる、磨く、穴を開ける、削る等様々な利用方法があります。もちろん、オーソドックスな形のものを1本用意しても良いですし、用途に応じて素材や形を変えてもかまいません。専門的になるにしたがって、用途別に個別のものを作る傾向になります。

通常、槍カンナは金鋸の刃を利用するのが一般的です。その他、傘の骨、市販の帯板等も利用できます。傘の骨を利用したものは薄いので、柔らかい土を切るのに適しています。金鋸の刃は一般的です。市販の帯板は厚いので硬くなった土を切る時や石膏型を切る時には便利です。
材料は次のとおりです。

<材料>
1.金鋸の刃 (これは、使い古しでかまいません。二つに割った方が利用しやすいと思います。)

2.傘の骨 (これは、傘の骨を上手く金槌等で叩いて、広げて使います。柔らかいので、加工はしやすいと思います。)

3.市販の帯板 (これは、○○ハンズで買った綱鉄の帯板です。非常に硬いので、固くなった土等を切ったり削ったりする時に便利です。)
4.万力 (刃を叩いたり傘の骨を広げる時に使います。あれば便利ですが、無くても作れます。)
5.ヤスリ (金属用のヤスリです。金属以外は使えません。荒目、中目、細目とありますが、中目を買えば大抵のものに使えます。)

6.軸にする木 (傘の骨は、軸になる木に差し込んで使います。筆の軸や割り箸でも使えます。軸になれば、何でも可能です。)
7.金槌 (傘の骨のナイフを作る時に、骨を広げたり叩いたりするのに使います。)

8.その他 (エポキシ系接着剤や手が痛くならないように巻き付けるビニールテープがあれば便利です。テープは、少々高いですが自己融着テープが厚くて剥がれにくいので便利です。もちろんビニールテープでも可能です。)

<作り方>
1.金鋸ナイフの作り方。
 まず、金鋸の刃を金槌で半分に叩き折ります。もちろん、折らずにそのまま使っても良いのですが、あまり長いとかえって使いづらくなるので、半分に折るのが丁度良いと思います。半分にすると、1本の金鋸の刃で2枚出来ますのでお得でもあります。半分だと短すぎる場合は、適当な長さに折ってください。短い方は、また別の使い道があります。
 なお、金鋸の刃は鋼鉄ですので、半分にするにに切ると大変です。叩き折った方が簡単です。なお、万力ではさんでおいてから折ると簡単に折ることが出来ます。
 次に、折った金鋸刃をヤスリで削り、形を整えたり、刃を付けたりします。グラインダーがあれば作業は非常に楽になります。最近は安価なグラインダーも売っていますので、是非欲しい機械のひとつです。
 これでほぼ完成なのですが、鋸刃のナイフの使い道は穴を開けたり切り込みを入れたりが多くなるので、槍カンナのように中央から尖るのではなくて、片方は平らにした方が使い勝手はよくなります。すなわち、真っ直ぐの刃の方は直線を切るのに適していて、斜めの刃は曲線を切るのに適しています。ただし、これは好みの問題が多々ありますので、形は自分の好きなように整えてください。要は切る、削る、穴を開ける、磨く等の動作が自分のもっともやりやすい方法で出来れば良いのですから。

 写真のように、鋸刃のギザギザを利用したい場合には、刃の付いた方はそのまま残します。このギザギザは、模様を付けることも出来ますし、表面の凹凸を削り取って、滑らかな表面にする時に威力を発揮します。何度も筋を付けるように削っていくと、凹凸がなくなりますので、最後にナイフに仕上げた方で綺麗にならしていきます。あまりにも凹凸が大きい場合にはスレート用の鋸刃が便利です。この鋸刃は刃が大きいので、金鋸のように直ぐにチビたりすることはありません。

 最後に、鋸刃の場合は鋸の刃が付いているため、直接手で持つと手を痛める危険性があります。そこで、ビニールテープや自己融着テープで手に持つ部分をしっかりと巻いておいた方がいいでしょう。ただし、鋸刃のギザギザを利用する場合は逆にテープが邪魔になりますので、巻かない方が良いでしょう。

 なお、槍カンナやナイフ類は、使えば使うほど刃先が研磨され滑らかになるので、使いやすくなります。これは、カンナの刃が常にざらついていないと切れ味が悪くなるのとは全く逆のことです。したがって、ナイフや槍カンナは出来るだけ同じものを使うようにしましょう。この、使い込んだ方が良くなるのは、傘の骨ナイフや帯板ナイフについても同じことです。左写真の下が使い込んだ金鋸ナイフ、上が新しい金鋸ナイフです。見た目は悪くなりますが、手触りが全く違ってきます。


2.傘の骨のナイフの作り方。
 傘の骨は、太い部分と細い部分とがありますので、どちらでも使い勝手の良い方を使います。もちろん、両方を使ってもかまいません。この場合は、大きさや硬さの違ったナイフが出来ます。
 傘の骨を適当な長さにニッパー、ペンチ等で切ります。これは簡単に切れますが、この時に骨をつぶさないように切ります。つぶれると、ナイフになりません。
 次に、U字型になった傘の骨を広げます。金床の上で金槌で叩いて広げると、割と簡単に広げることが出来ます。ただし、力任せに行うと折り曲げてしまったり、潰してしまったりするので、慎重に行ってください。

広げたら、更に金槌で出来るだけ平らになるように叩きます。こうすることによって、ナイフを硬くしたり薄くする効果もあります。左写真が叩いた後の傘の骨です。なるべく平らになるように仕上げます。凹凸があると、非常に使い勝手が悪くなりますので、時間をかけて丁寧に作ってください。

 次に、ニッパー、金切りハサミ等で形を作ります。傘の骨は柔らかいので簡単に切ることが出来ます。ヤスリ、グラインダー等で形を作ったり刃を付けます。傘の骨は、柔らかいので、硬い粘土を切るのには不向きです。したがって、使用用途も柔らかい粘土用に限定されますので、先をあまり尖らせる必要はありません。また、今までの私の経験からいえば、刃先は長めの方が使い安いようです。ただし、あまり長いと、逆に使い勝手が悪くなりますので、注意してください。これも自分の使いやすい形に作れば良いと思います。

 最後に、軸に差し込んで、エポキシ系の接着剤で強固に固定して完成です。軸は、竹や木、いらなくなった筆の軸、あるいは彫刻刀の軸等を加工して作れば良いと思います。一番簡単なのが筆の軸ですが、傘の骨が丁度入る太さの軸を探し出すのが多少面倒といえば面倒です。傘の骨の部分によって、柔らかいナイフと硬いナイフとが出来ます。使う目的が違ってきますので、2種類あれば便利です。左写真の左端が傘の骨の太い部分を使ったナイフで、その他は細い部分を使ったナイフです。用途に応じて、長さや形が微妙に違うのが分かると思います




3.市販の帯板等を使ったナイフの作り方。
 市販の帯板は、硬いので加工も大変になります。丁寧にヤスリまたはグラインダーで削って形を作る必要があります。まさに根気との勝負になります。しかし、その分作った後は丈夫で長持ちです。また、刃先がしっかりとしていること、厚みがあること等から、硬めの粘土等に対しても、割と楽に切ることが出来ます。
 このナイフも使い込むことによって表面が滑らかになって使い勝手がよくなります。左写真の、上が比較的新しいもの、下が使い込んだものです。ご覧のように、ヤスリの跡が綺麗になくなっているのが分かると思います。