置物作り講座(塊作りでお地蔵さんを作ろう)

 塊(かたまり)作りとは、その名のとおり粘土の塊をそのままの状態で、作品の中を空洞にしないで作方法です。ただし、大きさが3センチ以内で作らないとヒビが入ったり酷いときは破裂する危険性があります。したがって、小さい置物を作る際によく用いられる方法となります。ただし、塊作りでも最後に中をくり抜く場合や最初から空洞にして作る、または紙や糸等を芯にして作る場合もあります。こちらの方は3センチを気にせず作れるので大きいものを作る場合にはこちらの方法で作るといいでしょう。

Ⅰ 部品をくっつけて作る方法

   ここでは、塊作りでお地蔵さんを作る方法を書きます。ただし、作り方については様々な方法があります。ここでは私が作る方法について書きますが、それぞれ自分流の作り方の下地または目安くらいのつもりで見てください。作り方が違ってくると、それぞれの個性が出ると思います。

1.胴体を作ります。
 最初に胴体を作ります。小さいものだったら、塊のまま作っても良いのですが、ここでは、在る程度の大きさ(3センチ以上)になりますので、中を空洞にします。
 作り方は、手びねりでぐい飲み等を作るのとほとんど同じです。玉作りで厚めのぐい飲みを作り、ひっくり返して胴体とします。
 気をつける点は、ぐい飲みの口の部分、お地蔵さんの胴体でいえば底の部分を丸くするというところです。まあ、全体のバランスや好みの問題にもなりますが、胴体を丸く作ることによって、可愛らしさを強調する効果があります。可愛く作りたい場合にはお奨めです。

2.その他の部品を作ります。
 次にその他の大きい部分の各パーツを作ります。小さい部品も一緒に作れば良いのですが、小さい部品はすぐに乾燥してしまうために、割れたりヒビが入ったりして後で加工が出来なくなります。したがって、小さい部品はその都度作っていきます。
 ここで作った部品は、左上が胴体、右上が頭部、下二つが袖になります。パーツを先に作っておくのは、大きさをしっかりと把握するためです。
 特に頭と胴体のバランスは初心者には難しいですが、基本的には細かくリアルに作る場合は頭部は小さめに、大雑把に手作りの風合いを出したい場合には頭部を大きめに作ると良いでしょう。この場合は、手作り感を出すので、大雑把に頭部も大きめに作っています。

3.袖の袂を作ります。
 袖の部品に、手を出す部分を作ります。これは、ヘラ等で穴を開ければ良いだけですが、この穴に後で作る手のパーツを差し込んで作るので穴は深めに作っておきます。もちろん、穴を開けずに手をくっつけるだけにする方法もありますし、袖と手を一体で作る方法、または全体を一つの塊から作る方法等もありますので、必ずこのように作らなければいけないというものではありません。ただし、手を袖に通すことにより、自然の手の感じに仕上がることと、後で彫ったり削ったりする手間がない分簡単にでき、素朴な感じを出すことも出来ます。
 袖を作る際に気をつける点は、手が中に入っているということを意識して作るということです。したがって、袖の上の部分は手が中にあるので丸みのある、ある程度の厚みを持たせ、袖の下の部分は着物だけになるので薄く作るということが大切です。



4.手を作ります。
 次に手を作ります。手は大変に小さい部品ですので、素早く乾燥しないように作ることが大切になります。したがって、作るのも取付ける時に作るようにします。
 作り方は、紐作りで作ったものを切っても良いです。筒状のものを2個作り、手のひらの部分をつぶして平らにして、それらしく見せれば良いだけです。この時にナイフ等で親指の部分を作っておくと、手のひらのように見せることが出来ます。

5.手を袖に通します。
 4で作った手を3で作った袖の穴の中に入れて、手を形作ります。ここでは、拝むような手にするので、手のひらを捻って手の先を上を向かせています。どんなポーズにするかは、この時点で大体作っておきます。
 手が袖からどの程度出るかは、ポーズや完成後のイメージによって変わってきます。ここでは手を袖の中に入れているイメージで作っていますが、手を上げたりすると、袖から長く出るようになります。

6.胴体に取付けます。
 袖に手を取付けたら、これを胴体に取付けます。  ここで気をつける点は、手を袖からどの程度出すかによって、袖の取付け位置が側面になったり正面になったりする点です。手を長く出した場合は、袖を取付ける位置が胴体の側面になりますし、写真のように袖から直ぐに手首のような場合は、袖を取付ける位置は、胴体の正面に近くなります。
 手を胴体に取付けたら、手の位置や角度の最終調整を行います。ここでは、胸の位置で手を合わせたポーズになるように調整しています。また、手の位置が胴体にくっつくと必然的にひじを曲げたポーズになってしまうので、ここでは少し手を前に突き出した形にしています。

7.頭部を取付けます。
 次に、頭部を胴体に取付けます。気をつける点は、位置と角度だけです。完成後の目線の位置が何処になるかを考えて取付けます。通常は、斜め上から見るような目線になることが多いので、この場合は顔を少し上げて上を向いたポーズにした方が表情がよく見えます。そうなると、胴体に取付ける位置も若干背中よりになります。
 つまり、常に完成後をイメージして作っていくということが大切になります。どうしても、パーツを組み立てていく場合は、目の近くで同じ目線で取付けるので、完成したらイメージと違っているということになりかねません。

8.耳を取付けます。
 頭部が付いたら、今度は耳を取付けます。お地蔵酸の場合は耳を福耳にします。つまり、耳たぶを大きく作るということです。
 ここでもパーツは、その都度作ります。そら豆形の耳を2個作り、目の位置から横に移動した位置に耳を取付けます。もし、顔が上を向いたポーズになっているとすれば、目線も上を向いていますので、耳の位置は目から水平移動した地点よりも下の位置に取付ける必要があります。
 耳を取付けたら、耳の穴を作ります。これは人間の耳と同じような外形にすれば良いですが、この場合の形は全体のバランスを考えて単純化しています。

9.足を取付けます。
 次に足を作って取付けます。ここでも、やはり乾燥防止のためにその都度部品を作っています。
 足を作る際に気をつける点は、こういう小さい部品は折れたり欠けたりしやすいので、在る程度の厚みと大きさをもって作るということです。ここでは、足のウラの形を作って在る程度足先に厚みを持たせています。これを胴体の下にくっつけて、目で見えるのは足先だけのようにしています。しかし、実際には胴体の中に食い込んでいるわけです。

10.手や足の指を作ります。
 これで外観は全て出来上がりました。ここからは、細部の作業に入ります。
 まず、手や足の指を作っていきます。ここでは、手や足に線を彫って指のように見せています。手の場合は、親指は最初に作っていますので、手のひらの部分に線を3本入れて手のように見せます。足の場合は、親指を大きくし残り指は小さめにして4本の線を入れます。
 その他、着物のシワや襟等を書き込んでいきます。ここでは、手と足の間の線は細い線で描き、着物のシワは丸いヘラを使って太めに描いています。これは、シャープな線と柔らかい線の違いのためです。

11.顔の表情を作ります。
 いよいよ顔の表情を作っていきます。 ここからが一番の難関です。如何にやさしいお地蔵さまの表情を作るかということを意識して、完成時の目線の位置、バランス、その他色々なことを考えながら作りましょう。
 最初に鼻筋を作ります。ここでは、最初の玉を作る時点で在る程度の目の位置や鼻筋は指で凹ませて作っていますので、これを少し修正するだけにしています。ほんの少しだけ鼻を高くしただけで終わっています。
 注意点は、このように素朴な感じのお地蔵さまに仕上げる場合は、あまり手を加えすぎると、素朴さがだんだんとなくなってしまうことと、手を入れれば入れるほどリアルになってしまいます。出来れば一回で作れば良いのですが、最初は慣れないので、描いては消す作業になると思います。
 口は、ほとんど真っ直ぐに線を引いて作っていますが、口の端をほんの少し上に上げることと、口の中央の下の部分だけを少しだけ下に倒すことによって、かすかなほほえみに見えるように作っています。

12.最後に目を入れます。
 最後の仕上げに、目を入れれば完成です。目を入れることによって、お地蔵様が生き生きとして見えれば成功です。
 ここでも、気をつけなければいけないのは、目の位置と大きさ等のバランスです。位置は、ほんの少し違うだけでも表情が全く違って見えますので、細心の注意をはらって決めましょう。また、左右の目のバランスや大きさ、線を入れる角度も重要になってきます。
 ここでは、斜め上から見るということを意識して、線を入れるのも斜め上から入れています。また、目尻を少し切れ長にして、ほんの少しだけ上げることによって、目線が下を向いている感じを出しています。なお、完成写真を見れば分かりますが、正面から見た場合は、目はほとんど一直線になっています。
 仕上げに白毫(びゃくごう、額にあるぽっちり)を入れたら完成です。

13.完成です。
 完成写真です。これが実際に飾る場合の目線の位置から見たものです。下の写真の真正面から見た位置の写真と横から見た位置の写真と見比べてみると、違いがよく分かると思います。真正面から見ると、顔の造形が上の方に片寄って作られているのが分かると思います。空を見上げている感じですね。これが、斜め上から見ると、正面を見ているように見える訳です。




Ⅱ 削りだしで作る方法

   部品をくっつけて作る方法は、細部まで細かく出来るし、融通がきくので、作りやすい方法でもあります。
 今度は、塊から削りだして作る方法を紹介します。これは、実際の石のお地蔵さんと同様の作り方になりますので、石地蔵のような雰囲気を出すことが出来ます。逆に、細部の細かい部分は難しくなります。もちろん、細部を作る道具を用いて削りだして作ると石の彫刻と同じように作ることも出来ますが、これではあまり意味がなくなります。あくまでも、ざっくりと削って仕上げた方が面白いものが出来ると思います。

1.塊を作ります。
 最初に塊を作ります。ここでは土の節約のために、大体の形に合わせてカタマリ作りで作っていますが、本来の石のようなカタマリから作ってもかまいません。ただし、削りにようする手間が半端ではなくなります。

2.削りだして完成です。
 後は、ひたすら削り出していきます。あまり柔らかいと削り跡が出ないので、多少硬くなったタイミングで削るようにします。一刀彫のように削るのが理想ですが、細部は、ナイフ等で仕上げた方が見栄えがよくなります。



Ⅲ タタラで作る方法

   それでは、一番簡単に作れる方法を紹介します。この方法は、お地蔵さまでも作れますが、陶人形にも応用がききますので、是非おためし下さい。

1.タタラ板を作って部品を切り取ります。
 少し厚めのタタラ板を作って、ここから部品を切り取ります。「A」が胴体と袖になる部分、「B」が胴体前になる部分、「C」は頭部です。これは大きさにもよりますが、小さい場合はカタマリでもかまいません。中に新聞紙等の芯を入れたら土と重量を少なくすることが出来ます。

2.胴体を丸めて、胴体前のパーツを裏側から貼り付けます。
  胴体になる部分を丸めて、胴体前になる部分を裏側から貼り付けます。すると、胴体の部分の切り口が袖になります。

3.手を作って、頭をくっつけます。
  袖の部分に丸みをつけて、袖になるように加工します。ここに手の穴を開けて、手をくっつけます。
 次に、胴体上部を丸く内側に曲げて、ここに頭部を接合します。

3.細かい部分を作って完成です。
  後は、ひたすらお地蔵さんに見えるように加工していけばいいだけです。この部分は、上に細かく書いていますので、そちらをご覧下さい。

Ⅳ その他の方法

 その他の作り方、及び上記に載っている方法を組み合わせて作った作り方です。

 細かい部分まで比較的作り込んでいった、上品な仕上がりの作品です。着物のシワやよだれ掛けは、削り込んで作っています。
 ここまで作り込むと、かなりの時間を要します。特に、顔の表情はかなり時間を要して作っています。

 カタマリに切れ目を入れて部品をくっつけた、大まかな作品です。笠をかぶせて、笠地蔵にしてみました。

 かなりデフォルメした作品です。作り方は、部品を作って組み合わせる方法ですが、本来のお地蔵さまの形を無視して、楽しい形に仕上げています。

 更にデフォルメした作品です。胴体よりも頭部の方が大きくなっていますので、バランスを考えて安定するように仕上げています。こういう作品は、表情や顔の向きが難しくなります。この作品では、斜め上を見上げたポーズにしてみました。

 座像です。座ったポーズは、立体的には難しいので、適当に誤魔化して座っているように見せています。この形や表情は、実際の石の羅漢さんをモデルにしています。ただし、羅漢さんの方は立体ではないので、立体的にしてみました。

 だんだんと複雑な形になってきたので、原点に戻ってシンプルな姿を作ってみました。シンプルなこけしのイメージです。作り方は、タタラ板で作る方法と全く同じです。