掻きベラを作ろう
 

 掻きベラの作り方を紹介します。掻きベラは、作品の内側を削ったり、外側を削ったりするのに使用します。最近では高台を削り出すのにも利用されています。カンナで削るよりも簡単に早く削ることが出来るのが理由だとおもいます。市販品を見ても、かなりの種類が売られているようです。

Ⅰ ヘアピンを使った掻きベラ

 まず、ヘアピンを使った掻きベラを紹介します。ヘアピンを使った掻きベラは、高台削りや内側の削り、その他使用用途が広く使えます。また、後術する傘の骨を使った掻きベラに比べると肉厚が厚く、幅が狭いので、柔らかい粘土の削りに比較的適しています。

材料は次のとおりです。

<材料>
1.ヘアピン (これは、100円ショップで売っている一番安いものが良いです。高価なものはヘアピンが波になっていたり、余分なものが付属しているのであまり使わない方が良いと思います。ヘアピンの大きさに大小とあるので、両方買っておくと便利です。)

2.軸にする木 これは、お菓子の木箱の蓋を利用します。木であれば何でも良いですが、木箱の蓋が便利です。)

3.ラジオペンチ (ヘアピンを曲げたり、火であぶる時に使います。これがないと加工が出来ません。)
4.切り出し小刀 (最近では、カッター式の切り出しがあります。刃がダメになったら変えれば良いので面倒くさがりの私には便利です。特に竹を切るとすぐに切れなくなりますから。)
5.鋸 (これもカッター式のものがいいかげんな私には便利です。お菓子の箱を切るのに使います。)

6.ヤスリ (これは、ホームセンターで見つけた3本セットのヤスリです。これ1個で荒目から細目まで使えて便利です。特に細かな作業には重宝しています。ここでは、木箱を加工して軸にする時に表面を磨いて綺麗にする時に使用します。これは、ヘラやコテを研磨する時にもあると便利です。お薦めです。)

7.補修糸 (釣具屋で釣り竿補修用の糸を買います。太いものが良いようです。普通の糸では弱くて切れます。)

8.その他 (エポキシ系接着剤はヘアピンを木にくっつける時と補修糸の上から塗って強度を増す時に使います。補修糸の方は、釣具屋で補修糸と一緒に売っているカシュー漆を使ったら仕上がりが綺麗になります。)

<作り方>
1.ヘアピンを加工する。
まず、ヘアピンを焼き鈍します。ガスバーナー(台所のガスレンジ)であぶり、真っ赤になったらゆっくりと冷まします。そのままラジオペンチで持っていれば出来ます。曲げてみて曲がらなかったら、もう一度繰り返してあぶります。柔らかくなれば良いわけです。
 焼き鈍しが出来たら、とりあえず真っ直ぐに伸ばします。その後使いやすい形に加工します。形は自分で工夫してみてください。
 形が出来たら、焼き入れをしてもかまいませんが、粘土が柔らかい時は鈍した鉄の方が使いやすいので、無理に焼き入れの必要はありません。硬くなった粘土の場合は焼き入れしたものでなければ削れませんが、ヘアピンでは弱すぎて難しいです。

2.軸になる木を加工する。
難しいのは、木にヘアピンが通る溝を作る部分だけです。この溝があると粘土を削る時にヘアピンがしっかりと固定しているので非常に楽になります。ヘアピンの幅、長さで頑張って丁寧に作りましょう。

3.軸になる木の溝にヘアピンを取り付ける。
ぴったりと収まるようになればOKです。入らない時や隙間が開きすぎる時はもう一度軸溝の加工をし直します。理想的には、溝にヘアピンがぴったりと入って落ちないようになれば良いのですが、結構難しいので適当でいいです。



4.仕上げ
最後に補修糸を綺麗に巻き付けてその上から接着剤なりカシューなりを塗って乾燥させれば出来上がりです。この写真では、カシューの透明のものを塗って仕上げています。

5.いろいろな形の掻きベラ
いろいろと作ってみて、形状や大きさが自分にあっているものを見つけてください。用途とか場所によって使い分けるようになると思いますので、いくら有っても困りません。また、掻きベラは使っているとだんだんと削れてきて、最後には切れてしまうので、そうなったらまた作り直します。なお、焼き入れをすると長持ちしますが、その分柔らかな粘土には使いづらくなります。後は自分で作ってみて決めて下さい。



Ⅱ 傘の骨を使った掻きベラ

 次に、傘の骨を使った掻きベラを紹介します。傘の骨を使った掻きベラは、ヘアピンを使った掻きベラに比べると肉厚が薄く、幅が広いので、象嵌や掻き落し、比較的硬くなった土にも使えますが、逆に柔らかい土については不向きです。

<作り方>
1.傘の骨の中央部分を叩いて伸ばす。
 傘の骨を掻きベラになる部分と柄に取付ける部分に分けて、掻きベラになる部分だけを叩いて伸ばします。柄になる部分については、「U」の字のまま潰さないように残しておきます。ここを平らにしたり潰したりすると、後の作業が出来なくなりますので、注意してください。この部分については、後で軸の気に埋め込むようになります。


2.叩いて広げた傘の骨。
 傘の骨を叩いて伸ばしたら、このような状態に仕上がっています。中央部分は平らになっていますが、両端の柄に取付ける部分は「U」の字のままです。


3.傘の骨を丸く加工する。
 傘の骨の中央部分の平らな箇所をペンチ等で丸く加工します。傘の骨は薄いので、簡単に丸くすることが出来ます。
 ここで気を付けるのは、柄に取付ける部分の「U」の字を逆に曲げないことと、潰さないことです。写真のように曲げてください。


4.板にはさんで、万力で締めます。
 傘の骨の「U」の字の部分に木工用の瞬間接着剤を流し入れ、柄になる木にはさんで、万力で両側からはさんで締め上げます。すると、「U」の字の部分が木に食い込んで、しっかりと木に固定されます。
 このまま万力にはさんだままの状態で、木工用瞬間接着剤が固着するまで放置します。。
 柄に使用する木の板は、傘の骨よりも肉厚の木が必要になります。私はカマボコの板を使用していますが、幅的には割と適しています。


5.万力から外します。
 万力から外した状態です。実際には、これで完成しています。接着剤と「U」の字がしっかりと木に食い込んだ状態で固まっているので、掻きベラ自体もしっかりと固定されています。
 ただし、使っている間に接着剤等が剥がれる危険性もありますので、補修糸でしっかりと補修してやります。


6.補修糸で巻きます。
 補修糸で接合部分を巻いていきます。更に塗料やカシュー等を糸の上から塗って補強すれば、しっかりとした傘の骨の掻きベラの完成です。
 なお、傘の骨を叩いて伸ばした場合は幅が広すぎるという人はヤスリやグラインダー等で傘の骨の幅を薄くしてからお使い下さい。


7.完成写真