紐作りのコツ

注意事項
 ここに紹介する紐作りのコツは、あくまでも初心者が紐作りを行う際に失敗しないように作るコツです。したがって、こんなことまでする必要があるのかと思う人がいるかもしれません。必ずしもここに紹介する方法が絶対というものでもベストということでもありません。
 早い話が、慣れてくると紐を均一に作るコツも真っ直ぐに上げるコツも接着するコツも自然に会得するものですし、その方法は各自それぞれの作り方が出てきます。自分が一番作りやすい方法で、しかも失敗なく作れる方法がベストの方法なのです。100人いれば100とおりの作り方が存在するということです。

 なお、よく紐を付ける前に傷やドベを必ず付ける人がいます。教室でそうならったとか、本に書いてあったという理由なのですが、実際に作る際には、状況に応じて作るということが大切になります。場合によってはドベを付けるとダメな場合もあります。
 ここでは、なるべくそういったことを踏まえて理論的な解説を入れているつもりですが、必ずしも十分な結果にはなっていません。また、理論的に簡単に判断出来る状況というのは、逆に少ないと思います。したががって、場数を踏んで慣れるということがもっとも大切になります。そのつもりで、このページはご覧下さい。

紐作りのコツとは
 さて、紐作りのコツとは何かというと、紐を作る際に、素早く均一な太さで扁平にならずにしかも硬くならずに作るという点、接着面を確実につぶして確実に接着するということ、しかも均一な厚さに仕上げるという点が主に上げられます。

Ⅰ 紐を均一に伸ばすコツ

 初心者の場合は、どうしても紐が扁平になってしまったり、太さがバラバラになったり、紐が割れたり亀裂が入ったりすることがあります。これらを防ぐには、ちょっとしたコツさえ分かれば簡単に作ることが出来ます。以下に、そのコツを書いていきます。

1.紐は、板の上で転がして作る。
 紐を作る時は、両手でこすり合わせて紐を作らなくてはいけないとか書かれている本があります。しかし、初心者がいきなりこんなことをして、上手く出来る訳がありませんし、均一な厚さには絶対になりません。逆に初心者の場合は、板の上で転がして作ると均一な太さの紐が簡単に出来ます。したがって、紐を作る時は平らな木の板の上で転がしてるようにしましょう。
 一説には、手でひねり出さないと紐の中に空気が入るとか、板の上で転がすと乾燥して硬くなるとか、紐を作る速度が遅くなるとか言われます。これについては、後術することを守れば防ぐことが出来ます。
 ただし、輪積み式の場合のように太い紐を作る場合や後で板で叩いて作る唐津等のたたき技法等では、必ずしも転がして作る必要がありません。

2.少し柔らかめの粘土をつかう。
 土が硬いと、紐を作るのに余分な力を入れなくてはいけないので、紐が扁平になったり亀裂が入ったりします。なるべく柔らかめの土を使うようにしましょう。これだけでぐんと作りやすくなる筈です。ただし、極端に柔らかすぎるとシワがよったり、板にくっついたりしますのでほどほどの柔らかさということになります。紐を伸ばすことから言えば、硬い土よりははるかに柔らかい土の方が紐が作りやすいということが言えます。いろいろな硬さの土で紐を作ってみて、丁度良い硬さを肌で覚えるようにしましょう。

3.紐が乾かないように、板を湿らせながら作る。
 慣れると紐を短時間で作れるようになりますが、最初はどうしても力加減が分からないので、紐を作るのに時間がかかってしまいます。時間がかかると、どうしても手と板とに水分を吸い取られてしまいます。こういう場合は、板をスポンジ等で湿らせて、紐が乾燥するのを防ぎましょう。こうすると、比較的時間をかけても紐が硬くならずに作れますし、簡単に紐作りがマスター出来るようになります。
 ただし、湿らすのにも限度があって、濡らしすぎると今度は紐を転がした時に紐が板にくっついたりして作りづらくなります。あくまでも湿らす程度にしましょう。

4.紐は指先でのばしていく。
  これも慣れてくると、手のひらの何処を使って伸ばしても均一に伸ばすことが出来るようになりますが、初心者の場合はなるべく感覚が敏感で力が入りづらい指先を使う方が作りやすいでしょう。指先を使うということは、後で出てくる余分な力をかけないということにもつながります。
 ただし、指先だけで伸ばそうとするとどうしても紐の回転が少なくなりますので、指先の先から根本までを使って効率よく大きく動かすようにしましょう。

5.力を入れずにゆっくりと回転させる。
 初心者は、どうしても紐を細くしようとするあまり、無理に手に力を入れて紐を下に押しつけてしまったり、早く作ろうとして、手を小さくセカセカと動そうとします。すると紐がツブレて扁平になる訳です。しかも均一な太さになりません。落ち着いてゆっくりと手を動かし、軽く軽く、紐は転がる力で横に伸びていくために細くなるということを心がけて、決して押しつけないように心がけて作りましょう。特に、扁平になる最大の理由は、余分な力を入れて紐を押しつけることにあります。絶対に無駄な力をかけないことが紐を扁平にさせないもっとも重要な方法です。
 なお、手を動かす場合は最低紐を一回転するだけの長さを必要とします。これが小さいと一部分だけしか押さないために、つぶれてしまう訳です。

6.紐を回転させるということを心がける。
 紐を作る時には、ゆっくりと手を動かすことが重要です。これは、紐も手と同じように回転させるためです。手を素早く動かすと、手と紐の中心だけが回転して、紐の回転が手の回転スピードに追いつかなくなり、紐の端は回転していないということになります。このために、紐がねじれてしまい、このねじれが原因で紐が変形したり、扁平になったり、シワがよってりします。特に紐が長くなると、この傾向が多くなります。
 これは、手を小さく動かしても同じことがいえます。どうしても、初心者は紐を回転させるというよりも、手を動かすことにばかり気を取られがちですが、紐を作るということは、手を動かすのではなくて、紐の端から端までを同じように回転させるということを最重要と考えて手を動かしましょう。そうすると、けっして手を早動かせなくなりますし、小さくも動かせなくなります。


7.紐は中心から外に向かって伸ばす。
 均一な厚さにするには、均等に伸びる力加減が必要になります。そのためには、無理なく効率よく紐を伸ばす必要があります。そのためには、紐を伸ばす時は中心から外に向かって伸ばすようにします。
 紐の太い部分を細くするということは、細くした部分の土をとなりに移動しただけのことなのです。したがって、そのままにしておくと、となりの部分が太くなってしまいます。これを防ぐためには、このとなりの土を順送りに外に向かって押し出してやる必要がある訳です。この動作を行うことによって、土が細く、長く伸びていく訳です。同じ位置ばかりで土を転がすと、その部分だけが細くなるだけなのです。したがって、手の動きは、常に中心から外に向かって動きます。紐が均一な厚さに出来ない人は、この動きが出来ていないからなのです。
 伸ばす時に、紐の太さが違ってきたら、太い部分を中心に据えて、この位置から両方向に向かって伸ばすようにします。したがって、必ずしも紐の中心が伸ばす中心にはならないということです。

8.紐の端は、絶対に使わないこと。
 板の上で伸ばした場合には、紐の端は必ずといっていいほど、紐の中心がへこんでいます。これは、板の上で紐を伸ばしていくために、紐の表面だけが伸びて、中心は伸びづらいために起こる現象です。この端をうっかりとそのまま使うと、中に空気が入っているために、空気が入った作品になってしまします。そして、ブクや割れ、ヒビ等の原因になります。したがって、紐の先端は必ず切り取って使いましょう。
 ただし、手のひらでひねり出して作る方法の場合は、先端がへこむことはありませんので、そのまま使用することが出来ます。

9.紐の長さは作り方によって違ってくる。
 紐の長さは、作り方によって違ってきます。輪積み式の場合は1回転するだけの長さがあれば良いですし、ねじ上げ式の場合はある程度長い方がつなぎ目を少なくすることができます。
 ただし、ねじ上げ式の場合でも、片手で持って片手で紐をつぶしていくという工程があるために、あまり長すぎると作りづらくなります。また、紐を長くすると紐が均一に作りにくくなってきます。したがって、長くても40~50センチくらいにしておきましょう。作っていて、紐が長くなった場合は、2つに切って使えば良いでしょう。
 なお、伸ばす時の紐の形は、両手ですりあわせて太い紐の形にしておけば、後で紐を 伸ばす作業が楽になります。ただし、それほどこだわらなくても良いと思います。

Ⅱ 紐を積み上げる時のコツ

 次に、紐の積み上げについてですが、これはねじ上げ方式と輪積み方式とでは、若干やり方が違ってきます。それぞれについてのコツを書いておきます。

a.ねじ上げ式のコツ

1.ロクロの向こう側で紐を接着するようにする。

 ねじ上げ式の紐作りは、基本的に親指とその他の指で紐をはさんで、親指で紐を潰しながら巻いていくという作業になります。この場合、紐を右手で持ったときは左手で紐をつぶすようになりますが、この時の左手の位置は、ロクロの向こう側を使わないと上手く出来ません。  ただし、細い部分を作る時や口を閉じていく場合には、紐を手前に置いていくと良いので、この場合は親指が手前になる場合もあります。
 基本的には、右利きの人は右手で紐を持ち、左手で紐をつぶすのが通常です。なお、紐を持つ手は、出来るだけ高く持ち上げておきます。これは、紐がロクロに着くと、紐の回転がうまく出来なくなるからです。

2.親指で紐を押しつぶしながら取り付けていく。
 これは、ねじ上げ式の基本動作です。紐の上から下に親指で土をつぶして、下の紐とくっつけます。そうすると、紐が手前に少し回転します。この動作がねじ上げという言葉の意味になっている訳です。この時に、紐を持った手は、紐が回転する分紐を回す必要があります。そのまま持っていると、接着していない紐がねじれていきます。
 外側の手は、陶芸書などでは上につぶす等を書いている本もありますが、このような動作は実際には出来ません。外側の手は、粘土が外に広がらないように、しっかりと壁を作ることが主目的になります。したがって、手は伸ばした方が綺麗に仕上がります。
 この場合、壁を作る指は、4本でも人差し指を除いた3本でもかまいません。人によっては、人差し指がない方がやりやすい人もいますし、人差し指がないとうまく出来ない人もいますので、自分のやりやすい方法で行ってください。

3.紐は必ずねじれていく。
 親指で押しつぶしながら紐を取り付けていくと、写真のように紐は親指の幅で少しずつねじれた状態でくっついていきます。一見すると、ヒダが出来たような状態に見えます。土同士をつぶすと、必然的にこのねじれが出来てしまいます。もしも出来ていない場合は、紐同士が接着されていないということになります。ねじ上げ式の名前の由来は、このように、作品の内側がねじれて作られていくためにこの名称があるわけです。
 この時に、紐はねじれて、つぶれて丸い形にはなりません。丸い状態で残っているのは、紐がつぶれていないためです。

4.原則としてドベは付けない。傷も付けない。
 ねじ上げ式の基本は、紐をねじてつぶすことにより、紐を接着していくことにあります。ドベを付けるとその部分が水分を含んでしまうために、逆に弱くなってしまいます。また、水分が加わることにより、均一な硬さに出来なくなる可能性がでてきます。
 したがって、ねじ上げ式の場合はドベは付けないでください。ただし、表面があまりにも乾燥した場合は、状況がちがってきます。
 同じ理屈で、傷を付ける必要もありません。

5.内側から見ると、このように見える場合は、接着されていない。
 3の写真と見比べてもらうとわかりますが、こちらの紐は、真っ直ぐに綺麗に置いていっているということが分かります。一見綺麗なのですが、これでは全く紐作りの要素をなしていません。ここが、ねじ上げ式の一番重要な点なのです。
 このようになっている場合は、きちんとねじれて接着していないということです。このような場合には、いくら表面を綺麗にならしても、次の項目にあるように、紐の端を持ち上げると紐が確実に外れてしまいます。紐を引っ張らなくても、胴を膨らましたりすると、つなぎ目が簡単に外れてしまいます。こういう紐の接着になった場合には、乾燥したり本焼したら、ヒビが入ります。

6.引っ張ると外れるのではダメ。
 ねじ上げ式の特徴は、紐を取付けながらなおかつ接着も同時に行うという方法です。したがって、紐を取り付けた後で紐の端を持って引っ張り上げると、簡単に紐が外れて持ち上がるようでは、全然接着されていないということになります。こうなった場合はやり直してください。やり直す以外に方法はありません。一見くっついているように見えますが、実際には紐の上に乗っかっているだけの状態ですので、水分が蒸発すると外れてしまいます。
 取付けた後で表面をならしただけでは、内部まで接着することは出来ませんので、ヒビや割れの原因になります。この場合も、紐の端を持ち上げると簡単に外れてしまいます。きちんと接着されていれば、持ち上げた時に紐の端だけがちぎれてしまいます。

7.紐は、真上より少し内側に取り付ける。
 紐を積み上げる基本は、真上の紐の中心よりも少し内側に取付けることです。今まで積み上げた紐の真上に新しい紐を置いていくと、紐の内側をつぶしていくという作成手順のためににどうしても外に外にと広がってしまいます。そこで、中心よりも少しだけ内側に紐を取付けていくことにより、この広がりを防止しながら作ることが出来る訳です。ただし、極端に内側にする必要はありません。
 これには、外側に開いてしまった作品の修正は難しいけれど、すぼんだ作品の修正は簡単に行えるということもあります。

8.紐の内側は横にならす。
 紐を積み上げたら、見栄えを良くするためと、より強固に取り付けるために、表面をならします。この場合、内側は横にならします。内側はねじれが起きていますので、上下方向にならすのは凹凸が邪魔をして困難です。したがって、横方向にならし他方が簡単に綺麗にすることが出来ます。このときに、外に広がらないように、外側は片方の手で押さえておくと真っ直ぐにならすことができます。
 ただし、袋状になった置物とかのように仕上がりで内側が絶対に見えない場合には、ならす必要はありません。内側は、親指でつぶした時点で強固に接着されているからです。あくまでも外見上のためにならす訳です。

9.紐の外側は上方向にならす。
 外側は下から上に向かって指でならします。これは、上から下にならすと、その分粘土がへたってしまい、せっかく積み上げたのに背が低くなってしまうからです。低くなるとその分下の厚みが増します。下手をすると、下の部分が変形するか歪む可能性もあります。
 それでも良いというのであれば、上から下にならしてもかまいません。絶対に下から上に行わなければいけないという重要な問題ということではありませんから。
 なお、外側は紐がねじれていないので、横にならすことは出来ません。横方向に紐が並んでいるので、どうしても縦方向にならす以外にはならせません。

b.輪積み方式のコツ

1.紐の太さを細くしすぎないこと。
 輪積み方式は手びねりの延長だと考えてください。太い紐を一回りだけ巻き付けて、指で伸ばしていきます。したがって細い紐を何段も巻いていくということは原則として行いません。その分紐の太さを太くすることが出来ます。指でつまむことが出来る太さであればどんなに太くても作れるということです。ただし、あまり紐が太くなると重みでへたることがありますので、へたらない程度の太さということになります。

2.紐はねじらないで一段づつ置いていく。
 輪積み式の場合は、紐を一段づつ巻いて作ります。このときに、ねじ上げ式のように紐を捻りながらつぶすということは行なわなくてもかまいません。そのまま下の土台に置くだけかまたは紐の下の部分だけをつぶしながら巻いてきます。
 紐の太さは、この写真のように太く作っておいて、手びねりの要領で薄く伸ばして作る方法と、少し細い紐を置いて、接着面を均等にするだけで積み上げていく方法があります。細い紐を巻いていく方法は手間も時間もかかるので、あまりお奨めは出来ません。この方法で作るのであれば、ねじ上げ式で作れば良いわけです。ただし、細い紐を巻いていくと、厚さを均等に作る事が出来るので、綺麗に仕上げるとか確実に仕上げようとする場合はこちらの方法が確実です。
 紐を置く時は、必ず一段づつ置くようにしてください。これは、輪積み式の基本中の基本です。

3.数段づつ置くのは間違い。
 よく、ねじ上げ式と輪積み式を混同して、このように輪積み式でも一度に何段も置いていく人がいます。この方法でも丁寧に紐をつぶしながら接着していけば作れないことはありません。ただし、ねじ上げ式と違って、後から紐をつぶしていく輪積み式の場合は全ての箇所で紐をつぶしていかなくてはいけないために、初心者が行うと紐をうまくつぶせなかったりつぶし忘れが出てくるために、接着がおろそかな部分が出来てしまい、ここから割れたりヒビが入ったりします。したがって、輪積み式で作る場合はかならず一段づつ紐を置いて確実につぶしてから次の段を作るようにしましょう。
 くれぐれも、ねじ上げ式と輪積み式の違いを混同しないように気を付けましょう。紐を何段も巻いていくのであれば、ねじ上げ式で行うものです。

4.接着はしっかりとする。
 ねじ上げ式と違い、輪積み式の欠点はつぶしながら紐を置いていないために、紐のつなぎ目がどうしても弱くなるということです。したがって、紐と紐とをつぶしながら接着するという作業が非常に重要なポイントとなります。
 紐と紐との接着は、紐作りの基本中の基本ですが、紐をつぶしながら接着するということ重要です。いくら表面だけを綺麗にならしても、紐をつぶしていなかったら、乾燥時点でヒビが入ってしまいます。したがって、慣れない内はねじ上げ式と同様に紐をならした時点で引っ張り上げてみて、くっついていることを確認しながら行うと確実に作ることが出来ます。慣れてくればつぶし方も分かってくるので、いちいち引っ張り上げる必要もなくなりますけど・・・。

5.内側は下につぶしていく。
 ねじ上げ式の場合は、紐の内側は横にならしていきましたが、輪積み式の場合は、紐を下方向につぶすようにならしていきます。これは、ねじ上げ式が内側をならす段階では、紐がつぶれているのに対し、輪積み式の場合は内側の紐をつぶすことから始めなければいけないためです。
 この時に、ねじ上げ式のように紐をつぶしながら積んだ場合は、内側の紐をつぶすのは見栄え上だけの問題ですが、輪積み式のように紐をそのまま置いた場合は、ここで必ず紐をつぶしていかなければいけません。
 もちろん、上方向につぶしていってもかまいませんが、置いた紐が太い場合は、紐の境目に段差が付いてしまいます。下方向につぶすと、この段差を少なくすることが同時に行えます。

6.外側は上にならしていく。
 外側はねじ上げ式と同じように下から上にならします。このように、紐の両側でならす方向を違えた方がより強固に接着されます。
 ただし、紐の方が作品の断面より太い場合には、両側とも紐の方をつぶしながら上から下にならしていった方が簡単に行えます。特に、作っている作品の断面が薄い場合は、どうしても接着面が更に薄くなってしまいますので、内側も外側も紐の土を断面に足すような感じで上から下にならすようになります。
 とにかく、紐作りの接着方法の原則は、紐同士をつぶしてくっつけるということです。これが出来れば、絶対に割れやヒビは発生しなくなります。

7.ドベ、傷について。
 輪積み式の場合は、時と場合によっては傷やドベを付ける場合が出てきます。ただし、粘土が柔らかい場合には不要です。ドベや傷は、粘土を柔らかくするためで、決して接着剤ではありません。したがって、柔らかい粘土にドベや傷を付けても意味がありません。
 ただし、大物を作る場合や複雑な形のものを作る場合等で、作りかけのものがある程度時間をおいて、硬くなってきた粘土に対しては、ドベや傷を付けるということが必要にあんる場合もあります。この場合は傷を付けないと、紐同士の接着が悪くなって、亀裂が入る原因になります。ここで傷を付けるというのは、柔らかい粘土同士をくっつける時とは意味合いが違ってきます。硬い粘土と柔らかい粘土の中間層として傷を付けた部分を作る訳です。したがって、硬い粘土と柔らかい粘土をよくなじませる効果を与えるということです。
 片方が柔らかい紐を取り付ける場合は、傷を付けた上に水を付け、表面を柔らかくすれば更に効果的です。ただし、ドベを付ける必要はありません。ドベを付けるのは、両方がある程度硬くなった場合だと考えてください。

8.均一な厚さに伸ばす。
 これは、手びねりと全く同じ方法です。下の部分から指先の感覚だけで同じ厚さにしていきます。ただし、紐の太さが太くない場合には必要ない場合もあります。
 この紐を上に伸ばす作業はかなり慣れを要しますが、慣れると案外簡単に作っていくことが出来るようになります。ねじ上げ式が出来ない人も、手びねりに慣れていると上手く出来るかもしれません。
 輪積み式の場合の特徴は、紐の接着面が少なくなるという点です。同じ高さに積み上げた場合、ねじ上げ式の3/1から5/1程度しか必要としません。これは、太い紐を手で細くしていくためです。

9.紐の上の部分を薄くしないこと。
 紐の一番上の部分は、次の紐を接着する部分になります。したがって、薄くしてしまうと紐を載せた時にへたりの原因になる他、結合力が弱くなります。しかも、乾燥が早くなります。したがって、この部分は、紐を結合してから細くするようにしましょう。時間をかけて作る場合は、乾燥防止のためにラップや塗れた紙等を口の部分に巻いて乾燥防止を行います。


Ⅲ.その他のコツ

 紐作りで作る場合、ねじ上げ式と輪積み式の区別、及び作り方のコツは、大体分かったと思います。
 次に、その他のコツということで、紐作りで大物を作る際の一般的なコツを書きたいと思います。

1.複雑な形のものを作る場合。
 紐作りが本領を発揮するのは、ロクロ作りやタタラ作りでは出来ない、複雑な立体的な形を作る場合です。
 複雑な形のものを作る場合は、ねじ上げ式と輪積み式のどちらが適しているかという問題が出てきます。積み重ねていくだけの場合は、ねじ上げ式だけで作れると思います。後でロクロ仕上げをする場合は輪積み式の方がねじれが発生しないので有利です。
 しかし、両方を併用して作らないと作れないような場合も出てきます。下の方は輪積み式で厚く作り、上の方はねじ上げ式で薄く作るという場合もあります。逆にどちらで作っても問題なく作れる場合もあります。したがって、これらを臨機応変に対応して作る必要が出てきます。このためには、何度も作り込むということ、一つの方法に固執しないこと、自由な発想を持つこと等が必要となります。
 どちらにしても、上の紐の重力で下の形が変形しないように、乾燥させながら作るということになります。場合によっては何日間もの作業になりますので、紐の接着面の乾燥防止に努めるようにしましょう。
 また、形によっては下が丸くなったものや凹凸になったものもあります。こういうものは、専用の型を作るのが簡単です。手っ取り早いのは発泡スチロールを加工して作る方法ですが、小さい場合には粘土を使ったり石膏で作ったりも出来ます。

2.大物を作る場合。
 よく、大物を作る際には下の紐は太く、上の紐は薄くすればへたらずに作れると紹介されています。たしかに、壺やオブジェのように置くだけの場合は、この方法も有効です。しかし、食器の場合は使うことが目的ですので、この作り方では使い物になりません。腰の部分が重たいと、見た目以上に重たく感じるために、使い物にならなくなるからです。したがって、作る前に、作る作品がどのような目的で使用されるのかをよく考えてから作る必要があります。
 食器などの大物を作る場合には、下の部分が乾燥した時点で上の部分を作っていけば、いくら大きくても薄く作ることが出来ます。問題は、作るのに時間がかかってしまうということです。この場合は、作る時間をとるか、使い勝手をとるかということになります。もし時間がない場合はドライヤーを利用して乾燥させながら作るという方法もあります。ただし、乾燥しすぎることがありますので、何度も作ってみる必要があります。

3.大物で複雑な形の場合。
 大ものでしかも複雑な形を作る場合には、作り始める時から最終の形になるように作り上げていく必要があります。そのためには頭の中に最終形のイメージが出来ている必要があります。イメージが出来ない場合には、習作を何度も作ったり、ミニチュアを作って、それと寸法を照らし合わしながら作る必要があります。ただし、小さいものの場合には可能であっても、大きくなって重量がかさむとへたったり歪んだりして出来ない場合も多々ありますので、その都度修正が必要になります。この辺になると、何度も失敗して経験を積む以外に方法はありません。

4.大物で口の広がった形状のものを作る場合。
 形状上、口の広がったものや胴の丸いもので、最初から広げて作っていく場合には、下の方の部分がある程度乾燥して簡単に変形できないようになってから上を積んでいかなければいけません。この場合、下の部分だけを乾燥させるように上の部分には濡れた紙を貼ったりラップを貼って乾燥させない工夫が必要です。濡れタオルみたいに重量のあるものを置くと、水が染み込んだ部分が重みで剥がれ落ちる場合があるので、なるべく軽いものを使うのがコツです。
 てっとり早く乾燥させるには、ドライヤーを使うと便利です。逆に、ゆっくりと数日ないし、数ヶ月かけて作る場合には、最上部を作る時には、逆に下部が乾燥しすぎる場合があるので、今度は下部が乾燥しないようにラップを巻いたりする必要が出てきます。
 その他の方法として、口の広がったものを作る場合は、ひっくり返して口の部分からとじながら作っていくと、へたらずに作ることが出来ます。これは、外に開いているものはへたるけど、内側にとじる形のものはへたらないということから出来る技です。この作り方の利点は、口から作り始めるので、口縁が水平出来るということ、口が薄くならずに作れるということ、短期間で作れるという点が上げられます。ただし、カメ板を使うにしても、それほど大きい経のものが作れない、底部をきちんと作らないとヒビが入ったり安定が悪くなったりするという欠点があります。

5.壺などを作る場合。
 紐作りで壺を作る場合には、二とおりの作り方があります。一つは、最終形である形のとおりに作っていく方法です。この場合は、下の部分を乾燥させながら作っていかないと、確実にへたってしまいます。広がっている部分は先に作って乾燥させて形が変形しないようになったら、上の部分を作っていきます。
 もう一つの作り方は、真っ直ぐに作っておいてから胴の部分を膨らませていく方法です。ロクロ作りの場合がこの方法で作られます。この方法だと、へたりを少なくすることが出来ます。ただし、胴体の部分の紐作りをきちんとやっておかないと、紐の接合部分から割れてくる恐れがあります。